AZ-104 (Microsoft Azure Administrator)とは?試験内容、学習ポイント、実務活用まで徹底解説
はじめに
クラウドコンピューティングの普及によって、企業が利用するITインフラの多くが仮想化され、オンデマンドで使える時代になっています。
特に、Microsoft Azure は企業ユーザーの信頼を集め、さまざまな業界で導入が加速しています。
そんな中、 AZ-104 (Microsoft Azure Administrator) は、Azure環境を構築・運用・管理するために必要な知識を体系的に学べる試験として注目を集めています。
本記事では、Azureを触ったことがない初心者の皆さんでも理解できるように、試験内容や実務での具体的な活用シーンをできるだけわかりやすく解説します。
この記事を読むとわかること
- AZ-104 (Microsoft Azure Administrator) の概要
- Azure管理者の実務で取り組む分野とスキル
- 試験範囲と出題傾向
- 実務でのAzure導入パターンと注意点
- 試験対策や学習を進める上でのポイント
- 合格後のキャリアパスとチーム内での役割
これらを踏まえて、自分が Azure Administrator としてどんな業務に携わるのか、そしてどのような学びを重ねれば実務に生かせるのかをイメージできるようになるでしょう。
AZ-104 (Microsoft Azure Administrator)とは?
AZ-104 は、Microsoft が提供する Azure Administrator 向けの資格試験です。
仮想マシンの構築、ストレージの運用、ネットワークの設定、セキュリティ管理など、Azureを扱う上で押さえておきたい実務レベルの知識が出題されます。
AZ-104 を取得する人には「これから本格的に Azure を使ったインフラ管理を行いたい」「企業のサーバーやネットワークを Azure に移行する際の担当を任されそう」といったケースが多くみられます。
クラウド技術はこれからのIT業界でさらに広がる可能性が高いため、Azureを扱える管理者が求められる場面は増えていくと考えられます。
役割と試験の位置づけ
Microsoft 公式の試験体系には複数の資格がありますが、AZ-104 は基礎試験というよりも、実務への導入ステップ として位置づけられています。
単に用語を理解するだけでなく、Azure ポータルや Azure CLI を利用したリソース作成、監視設定、セキュリティ対策など、業務に直結しやすいタスクが試験範囲に含まれているのが特徴です。
企業ではオンプレミス環境からクラウドに移行する際に、リソースを円滑に運用できる人材が必須です。
したがって、AZ-104 の試験範囲を学ぶことは、実際の運用に関するリアルな課題解決につながりやすいのが魅力です。
クラウド導入のメリット
オンプレミスサーバーでは、ハードウェアの準備や障害対応などに膨大なコストがかかっていました。
クラウド、特に Azure へ移行することで、サーバー構築やネットワーク構成の工数を大幅に削減できるメリットがあります。
さらに、必要なときに必要なだけスケールアップやスケールダウンが可能 な点も重要です。
システムの利用者が急増した場合でも、クラウドリソースを追加で割り当てるだけで対応できるため、ユーザーに快適な環境を提供しやすくなります。
AZ-104 で学ぶ内容は、こうした柔軟なクラウド運用を実現するための基盤知識ともいえます。
Microsoft Azure Administratorで取り組む業務範囲
Azure Administrator は、クラウド上のインフラを適切に運用するための多岐にわたる業務を担います。
ここでは、Azure Administrator が実際にどのようなタスクを行うのか、その例をいくつか紹介します。
Azureリソース管理
Azure 環境では、仮想マシンやデータベース、ストレージアカウントなどを**「リソース」** と呼びます。
リソースをまとめて管理するのが、リソースグループ と呼ばれる単位です。
たとえば、開発チームA用の環境と開発チームB用の環境を分けて管理するには、リソースグループをチームごとに作成するといった運用が考えられます。
Azure Administrator は、どのようにグループ化すれば運用効率が高まるのかを検討しながら、アクセス権限の設定や費用管理も合わせて行います。
ストレージと仮想マシン
Azure では、仮想マシンを簡単に作成できるサービスが用意されています。
OSイメージの選択から、CPUやメモリのサイズ設定、ディスクの割り当てなどを数クリック(またはAzure CLI)で実行可能です。
ストレージサービス と仮想マシンは密接に関連します。
たとえば、OSディスクの保存場所、バックアップ先のストレージアカウントなど、適切に設定することでコストやパフォーマンスの最適化が期待できます。
AZ-104 で学ぶ分野には、こうしたストレージと仮想マシンを安全かつ効率的に運用する知識が含まれています。
ネットワーク関連
Azure 上でアプリケーションを運用する際には、仮想ネットワーク (VNet) の構築やサブネットの分割、パブリックIPアドレスの割り当てなどが必要になります。
ネットワーク設定はセキュリティにも直結する部分なので、十分に理解することが大切です。
さらに、VNet ピアリングと呼ばれる機能を使えば、複数の仮想ネットワーク間を安全につなぐことができます。
冗長化や負荷分散を考慮する場合は、ロードバランサーやアプリケーションゲートウェイなどのサービスも登場するため、幅広い知識が試されるでしょう。
セキュリティ管理
Azure では、アクセス制御の仕組みとして Azure Active Directory (Azure AD) が中心的な役割を担います。
ユーザーやグループの管理だけでなく、外部サービスとの連携や多要素認証など、高度なセキュリティ設定も視野に入ってきます。
特に企業でAzureを利用するときは、誰がどのリソースにアクセスできるかをきちんと制限しつつ、管理者が必要な操作をスムーズに行える仕組みづくりが求められます。
AZ-104 では、このようなセキュリティや認証に関する知識も重要なトピックとして扱われます。
運用・監視
クラウド環境だからといって、一度構築すれば終わりというわけではありません。
Azure Administrator は、アプリケーションやリソースが正常に動作しているかを定期的に確認 し、問題が発生した場合には迅速に対処する役割を担います。
具体的には、Azure Monitor を使ったメトリクス監視やアラート設定、Azure Backup や Azure Site Recovery を活用したバックアップ・災害復旧プランの策定などがあります。
障害が起きたときにデータを復旧できなければ大きな損害につながるため、日頃から運用設計とテストを意識することが大切です。
実務で気をつけたいポイント
運用管理業務では、サブスクリプションの料金管理 や ログの集計 など、地味だけれど重要なタスクも数多く発生します。
こうした作業を少しずつ自動化するスクリプトを作るなど、運用コストを下げる工夫をすることがAzure Administratorとしての腕の見せ所です。
また、チーム内で複数の管理者がいる場合は、誰がどの操作をできるかを明確にしないと事故が起きやすくなります。
ガバナンスの観点から、ロールとアクセスレベルを適切に設定し、変更履歴を追えるようにするのも大切な仕事です。
試験範囲の概要
AZ-104 の試験範囲は、Azureの基本概念を一通り学習した後に実務で直面するであろう場面に近いトピックが網羅されています。
主なセクションをざっくり見てみましょう。
Azure Identityとガバナンス
- Azure AD を使ったユーザーやグループ管理
- ロールベースのアクセス制御 (RBAC)
- Azure Policy を使ったリソース管理ポリシーの設定
セキュリティとガバナンスに関する基礎知識だけでなく、運用上よく遭遇する管理ポリシーのカスタマイズなども押さえる必要があります。
Azureストレージの実践
- Blob ストレージ
- ファイル共有 (Azure Files)
- ディスク管理
データの保存、共有、バックアップ、リストアといったストレージ操作に関する内容が中心です。
アクセス制限や冗長化の構成なども理解しておくと、実務でトラブルを減らしやすくなります。
仮想マシンとコンテナ
- Azure Virtual Machines の作成や拡張設定
- コンテナ関連サービス (Azure Container Instances, Azure Kubernetes Service など) の概要
メインは仮想マシンですが、最近ではコンテナを使ったアプリケーション運用も増えているため、コンテナ技術も試験範囲に含まれます。
仮想ネットワークとロードバランサー
- VNet の作り方やサブネットの設計
- ロードバランサーやアプリケーションゲートウェイの構成
- VNet ピアリングや VPN ゲートウェイ
ネットワークの仕組みをしっかり把握しておかないと、アプリがうまく通信できないなどの問題が発生します。
クラウドでもネットワーク設計は重要な技術要素です。
リソース監視とバックアップ
- Azure Monitor でのメトリクス・ログ監視
- アラート設定
- バックアップとディザスタリカバリ (災害復旧)
実際の業務では、監視をきちんとしておかないと障害に気づけなかったり、バックアップを疎かにしてデータを失ったりといったリスクがあります。
試験を通じて対策の基本を身につけましょう。
実務でのAzure活用シーン
ここからは、AZ-104 で学ぶ知識が具体的にどう生かされるのか、少しイメージを広げてみたいと思います。
中小企業での導入パターン
少人数の IT チームしかない中小企業では、クラウド導入によってサーバー保守の負担を減らす ことが大きなメリットです。
オンプレミスでサーバーを運用していた頃と比べると、障害対応やハードウェア管理の手間が大幅に減り、業務効率を高めやすくなります。
また、リソース管理を一元的に行える Azure ポータルは、操作が直感的でわかりやすいので、初心者でも扱いやすいと感じる場合が多いです。
AZ-104 で学ぶ基本操作やネットワーク設定は、このような環境でもすぐに応用できます。
大規模システムでの活用
一方、大規模なシステムを運用する企業では、仮想ネットワークのセグメント分けやロードバランサーの設定、数多くの仮想マシン管理など、複雑な構成 を扱うケースが一般的です。
特に、世界中に拠点を持つ企業では、各リージョンに分散してリソースを配置し、冗長化を図ることが当たり前になります。
こうした大規模運用の中で、Azure の強みは 拡張性 と きめ細やかな管理機能 にあります。
AZ-104 の学習を通じて、スケールアップやスケールアウトのタイミング、ネットワーク帯域の最適化などを理解しておくと、運用効率を高めるための設計が行いやすくなるでしょう。
セキュリティ強化のポイント
どんなにスケールを考慮したシステムを構築できても、セキュリティが弱ければ本番運用は危険です。
アクセス制御や認証の仕組み を適切に設定することで、従業員やシステム管理者、外部パートナーなどの利用範囲を明確に区切ることができます。
たとえば、多要素認証や特権アクセスの制御は、セキュリティを高める上で重要な要素です。
AZ-104 の試験でも、Azure AD のロールやポリシー設定に関する出題があり、実務ではまさにこうした知識が必要となります。
試験突破のためのコツ
AZ-104 の出題範囲は広いですが、基礎をしっかり固めれば学んだ内容がそのまま実務に生きるのが特徴です。
試験突破のためには、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。
出題形式と時間配分
AZ-104 では、ケーススタディ形式の問題や選択式の問題など、複数の形式 で出題されます。
限られた時間の中で回答しなければならないので、設問文を正確に読む力と、それぞれのサービスがどう連携するかをイメージできる知識が求められます。
試験では、「Azureの管理ツールを使ってリソースをどのように構築・設定するのが正しいか」 といったシナリオがよく登場します。
たとえば、あるサービスを作るときの手順を列挙され、「最も適切な手順はどれか」を問われることがあるので、公式ドキュメントの手順や Azure ポータルの操作画面を理解しておくとスムーズです。
スキル不足に気づいたらどうする?
初心者の場合、学習中に「自分はどこがわかっていないのかすらわからない」という壁にぶつかりやすいかもしれません。
そのときは、一度自分が触ったことのあるサービスや操作だけでも整理してみると良いでしょう。
「VMは作ったことがあるけど、ネットワークセキュリティグループ (NSG) はよく分かっていない」と気づいたならば、まずは NSG を簡単に設定してみるところから始めると理解しやすくなります。
AZ-104 は実務に直結する内容が多いだけに、実際のAzureポータルやAzure CLIを操作しながら 試験範囲を確認すると、頭にも入りやすいです。
Azureには無料で使える利用枠が用意される場合があるため、最小限の費用で検証環境を用意できるかもしれません。実機で触る機会を作ることで、ネットワークやセキュリティ周りへの理解も深まります。
実際の操作例
ここでは、Azure CLI でリソースを作成する簡単な例を紹介します。
クラウドシェルやローカル環境に Azure CLI をインストールして実行すると、Azure ポータルと同じようにリソースが準備できます。
Azure CLIでリソースグループを作成する
az group create --name MyResourceGroup --location eastus
上記のコマンドで「MyResourceGroup」というリソースグループが eastus リージョンに作成されます。
リソースグループを分けておくと、関連する仮想マシンやストレージアカウントをまとめて管理できます。
VMのデプロイ例
az vm create \ --resource-group MyResourceGroup \ --name MyVM \ --image UbuntuLTS
この例では、UbuntuLTS イメージを使って MyVM
という名前の仮想マシンをデプロイしています。
数分後には、MyVM が起動しており、SSH などで接続してアプリのデプロイを試すことができるでしょう。
合格後のキャリア展望
AZ-104 に合格すると、Azure Administrator としての基礎知識が身についたことを証明できます。
しかし、資格取得はゴールではなく、あくまで入り口です。
Azure には多数のサービスがあるので、さらにスキルを伸ばしていけばクラウドアーキテクト や DevOps エンジニア など多彩なキャリアパスが開ける可能性があります。
Azure Administratorの次のステップ
企業によっては、Azure を使った機械学習やビッグデータの処理などに興味を持つケースも多いです。
Azureの中でも Azure Machine Learning や Azure Synapse Analytics などにチャレンジし始めると、より高度なアーキテクチャを構築できるようになります。
また、Azure DevOps を活用して継続的インテグレーションやデリバリーの仕組みを整えることも、チーム全体の生産性向上に寄与する分野です。
インフラとアプリ開発をまたぐような人材が求められることが多いので、興味がある場合はステップアップとして検討してみると良いでしょう。
エンジニアチームでの連携
クラウドの運用は、サーバーやネットワークだけにとどまりません。
セキュリティチームやアプリ開発チームと連携しながら進めることがほとんどです。
Azure Administrator がリソース管理の知識を持っていると、アプリ開発者と連携して効率的に新機能をリリースする仕組みを作れます。
また、セキュリティ担当者と一緒に設計を行うことで、運用しやすく安全性の高い環境を構築できるでしょう。
仮想マシンやストレージが問題なく稼働していても、ネットワークセキュリティグループやアクセス制御の設定を誤っていると大きなリスクに繋がります。チーム全体でレビューする習慣を持つと安心感が増すでしょう。
まとめ
AZ-104 (Microsoft Azure Administrator) は、企業で Azure を活用する上で必要となる運用管理スキルを幅広く確認できる試験です。
オンプレミスからクラウドへの移行や、マルチクラウド戦略を採る企業が増える今、Azureの知識をしっかりと押さえておくことは確実に役立つはずです。
特に初心者の皆さんがクラウドの概念に触れる最初の一歩としては、Azure ポータルや Azure CLI を使ったリソース構築に慣れるのがおすすめです。
本記事で触れたような基礎的な操作に加えて、ネットワークやセキュリティ、バックアップなどを学んでいくと、実務にすぐ生かせる形 で成長していけるでしょう。
資格取得を目指す過程で身についた運用ノウハウや自動化のスキルは、クラウド時代において大いに評価されるポイントとなります。
AZ-104 の合格を一つのステップとして、Azure Administrator としてのキャリアを楽しみながら切り拓いてみてはいかがでしょうか。