Spring Boot バージョンの最新動向と選択ガイド
はじめに
Spring Bootは、Javaでの開発を簡単にするためのフレームワークです。 最小限の設定でアプリケーションを起動できるため、初心者が最初に触れるフレームワークとしてもよく選ばれます。 そして、アプリケーションが複雑になっても設定や依存関係の管理を効率化できるところが魅力です。 ただ、バージョンが複数存在すると、どれを使うべきか迷う方もいるのではないでしょうか。 そこで、ここでは最新のSpring Boot バージョンを中心に、その特徴や実務での活用について解説します。
Spring Boot 3.x とは
Spring Bootの3.x系は、Java 17以降の環境を前提に開発されています。 これは、最新のJavaの言語機能とパフォーマンスを最大限に活かすための決定といえるでしょう。 たとえば、レコードやパターンマッチといった機能にも対応しやすくなり、モダンなスタイルでコードを書きやすくなっています。
また、Spring Boot 3.xはSpring Framework 6.xと組み合わせて使われることが多いです。 この組み合わせにより、Jakarta EEへの移行が進んだ新しいAPI群を自然に扱えます。 以前のjavaxパッケージではなく、jakartaパッケージを扱う点が大きな特徴です。
ネイティブイメージ(GraalVMなど)を利用しやすいのも3.x系のポイントです。 ネイティブコンパイルにより、コンテナ環境やクラウド環境での起動がさらに高速化されることが期待できます。 実際に、実行ファイルのサイズが小さくなり、リソースが限られた環境でも動かしやすいというメリットがあります。
主な特徴
Spring Boot 3.xには、アプリケーション開発を便利にするさまざまな機能があります。 ここでは代表的な特徴をいくつか挙げて、初心者にもわかりやすく説明します。
ネイティブイメージへの対応
ネイティブイメージを生成できるのが大きな特徴です。 GraalVMなどを活用すると、Javaバイトコードをあらかじめネイティブコードに変換しておけます。 そのため、コンテナ環境での立ち上がりが速くなり、メモリ使用量も軽減される可能性があります。
ただし、ネイティブイメージの生成にはやや高度な設定が必要になることもあります。 依存ライブラリがネイティブ化に対応しているかどうか、あらかじめ確認するのがおすすめです。
Observability(可観測性)の充実
運用段階での可観測性を向上させるために、Micrometerなどと統合が進んでいます。 監視ツールへのメトリクス送信や、アプリケーションの状態を可視化しやすくなる仕組みが充実しています。
たとえば、アプリケーションのCPUやメモリの利用率、エンドポイントの呼び出し回数などを簡単に取得できます。 これによって、障害解析やパフォーマンスチューニングをしやすくなるわけですね。
Jakarta EE の採用
最新のJakarta EE 10に対応し、これまでのjavax系ではなくjakarta系のAPIを利用します。 具体的には、ServletやJPAなどのパッケージ名が変更されています。 コードを書き換える必要はありますが、今後主流となるAPIへスムーズに移行できるメリットがあります。
バージョン選択の考え方
初心者の皆さんは、最新バージョンを使うべきかどうか悩むかもしれませんね。 実務で安定性を重視する場合は、長期サポート(LTS)とされているバージョンを選ぶ方法があります。 Spring Bootの3.x系では、3.0や3.1、3.2などが順次リリースされており、パッチリリースも活発です。
まずは3.x系のうち、最も更新が行われているバージョンを選ぶと安心です。 メンテナンスリリースが頻繁に公開され、セキュリティパッチも適用されるため、リスクを下げられます。 あとは、自身のJavaバージョンが17以降であることを確認してください。
Java 17より前のバージョンしか使えない環境だと、Spring Boot 3.x系は動かしづらくなります。 チームやプロジェクトでJavaのアップデートが可能かどうかを、事前にチェックしておくと安心です。
Spring Boot 3.x の実務での活用例
それでは、実務でどのようにSpring Boot 3.xが活用されるかを見ていきましょう。 初心者が取り組みやすい場面と、もう少し大きめのプロジェクトの例を挙げます。
小規模プロジェクトへの導入
小規模なWebアプリケーションやAPIサーバーであれば、Spring Bootが持つ自動設定機能が大いに役立ちます。 設定ファイルやXMLの記述量が少なく、まずは動くものをサクッと作りたいというときに便利です。 3.x系であればJakarta EEに対応しているため、将来的にコードを拡張しやすい環境を最初から整えられます。
REST API 開発での活用
エンドポイントを簡単に作成できるため、REST APIを構築するうえでも利用しやすいです。 Spring Data JPAと組み合わせれば、データベースアクセスのコードを短くまとめることができます。 また、Observability関連の機能を使えば、APIのパフォーマンス測定やアクセス監視も手軽に行えるでしょう。
大規模マイクロサービスへの展開
マイクロサービスを複数立ち上げて動かす環境でも、Spring Bootが活躍します。 3.x系のネイティブイメージ機能を活かせば、起動時間の短縮やメモリ削減が期待できます。 クラウド上でのスケーリングがしやすくなり、アクセス集中時のリソース確保やリリースがスムーズになるのもメリットです。
アップグレードや移行のポイント
次に、既存のプロジェクトをSpring Boot 3.xへ移行するときのポイントを挙げます。 すでに何らかのアプリケーションを運用している場合、どうやって最新バージョンに追随するかを考えるのは大切ですよね。
まずは依存しているライブラリが、Java 17以降に対応しているかどうかを調べましょう。 それらが対応していないと、アップグレードした途端にビルドエラーが出る可能性があるからです。
あとはJakartaパッケージへの切り替えです。
たとえば、import javax.persistence.Entity;
の部分をimport jakarta.persistence.Entity;
に変更する必要があります。
コード修正がどの程度必要になるか、事前にテスト環境で確認してみてください。
移行作業では、一気にすべてを変更するのではなく、段階的に検証していくのがおすすめです。 CI/CDパイプラインを活用しながら小刻みにテストを実施し、エラー発生箇所を早期発見する方法が効率的です。
簡単なサンプルコード
ここでは、Spring Boot 3.xを利用した最小限のWebアプリケーションの例を見てみましょう。 メインクラスと、RESTエンドポイントを1つ用意して動かすコードを記載します。
// ファイル名: src/main/java/com/example/demo/DemoApplication.java package com.example.demo; import org.springframework.boot.SpringApplication; import org.springframework.boot.autoconfigure.SpringBootApplication; import org.springframework.web.bind.annotation.GetMapping; import org.springframework.web.bind.annotation.RestController; @SpringBootApplication public class DemoApplication { public static void main(String[] args) { SpringApplication.run(DemoApplication.class, args); } } @RestController class HelloController { @GetMapping("/hello") public String hello() { return "Hello from Spring Boot 3.x!"; } }
このコードでは、@SpringBootApplication
が付与されたクラスをエントリポイントにして、アプリケーションを起動しています。
@RestController
を使えば、シンプルにWeb APIエンドポイントを定義可能です。
ブラウザで「/hello」にアクセスすると、「Hello from Spring Boot 3.x!」という文字列が表示されます。
もしビルドツールとしてGradleを使う場合は、build.gradle
の中にSpring Boot 3.xの依存関係を記載します。
その際、プラグインバージョンを確認し、最新の3.x系を指定すればOKです。
plugins { id 'java' id 'org.springframework.boot' version '3.2.0' } java { sourceCompatibility = JavaVersion.VERSION_17 targetCompatibility = JavaVersion.VERSION_17 } repositories { mavenCentral() } dependencies { implementation 'org.springframework.boot:spring-boot-starter-web' testImplementation 'org.springframework.boot:spring-boot-starter-test' }
上記の設定例では、Java 17を前提としてコンパイルし、spring-boot-starter-web
を利用しています。
実行方法の基本
ローカル環境でSpring Boot 3.xを動かすには、以下の流れで進めることが多いです。 みなさんが初めてプロジェクトを作成するときの参考にしてみてください。
- GradleまたはMavenなどのビルドツールのセットアップを行う
- Spring Bootの依存関係を設定する
main
メソッドがあるクラスを用意し、SpringApplication.run()
で起動する- WebブラウザやAPIクライアントで、特定のエンドポイントにアクセスして動作確認する
コードのビルドやテストの実行は、Gradleであれば ./gradlew build
や ./gradlew test
を使います。
Mavenの場合は mvn clean install
などを実行します。
この流れさえ押さえておけば、初心者でもローカルで開発を進めやすいはずです。
クラウド環境へのデプロイ
ローカルで開発した後は、クラウド環境にデプロイして動かすことも多いでしょう。 Spring Boot 3.xを使う場合、コンテナイメージを作成してDockerなどで運用するパターンが増えています。 コンテナ起動時に、Java 17ランタイムと合わせてアプリケーションを軽量に実行しやすいのが利点です。
ネイティブイメージを使う場合は、DockerfileにGraalVMベースのイメージを指定したり、追加のコンパイルステップを挟む必要があります。 ただし、ネイティブイメージをビルドするときは、ビルド時間が長くなるケースもあるので注意してください。 それでも起動速度の速さや、メモリ負荷の低減が期待できるため、本番運用でメリットが大きいと言われています。
まとめ
Spring Boot 3.xは、Jakarta EEへの完全移行やJava 17以降への対応など、新しい要素を積極的に取り入れたバージョンです。 これからJavaでアプリケーションを作る初心者にとっても、スタート時点からモダンな環境を整えられるメリットがあります。 ネイティブイメージへの対応やObservability機能の強化など、実務にも役立つポイントがいくつも揃っています。
初心者の方は、まずは小さなアプリケーションからSpring Boot 3.xを試してみて、雰囲気をつかんでみるのが良いかもしれません。 そのうえで、クラウド環境へのデプロイやマイクロサービス構成など、少しずつ段階を踏んで機能を拡張していくと無理なく学べるはずです。 ぜひ最新バージョンを活用して、Javaでの開発をシンプルに進めてみてください。