クリーンアーキテクチャとは?初心者でも理解できる実務活用ガイド

はじめに

皆さんはソフトウェアの設計を考えるとき、コードの見通しを良くしたいと感じることはないでしょうか。 クリーンアーキテクチャは、そうした悩みに対応できるソフトウェア設計手法のひとつです。 分かりやすく整理されたコードベースは、変更や機能追加の際にも混乱を減らしてくれます。 この記事では、クリーンアーキテクチャがどのようなものかを初心者向けに整理し、どんなシーンで役立つのかを解説していきます。 一歩ずつ理解を深めながら、実務とのつながりを意識した内容にしていきます。

この記事を読むとわかること

  • クリーンアーキテクチャの基本的な考え方
  • 各レイヤーの役割と具体的な実務シーン
  • Node.jsを用いたサンプルコードのイメージ
  • 設計上のメリットと注意点

クリーンアーキテクチャの概要

クリーンアーキテクチャは、依存関係を内向きに制御することで、ソフトウェアの柔軟性を保とうとする設計思想です。 実装の詳細に左右されず、ビジネスロジックを中心に配置するのが特徴といえるでしょう。 これによって、ビジネス要件に集中しつつ、外部のフレームワークやライブラリの変更にも柔軟に対応できる構造を目指します。

ソフトウェアは変更がつきものです。 しかし、その都度大掛かりな改修を繰り返すのは避けたいですよね。 クリーンアーキテクチャでは、業務で求められるユースケースやルールを中心に置き、外部と接する部分を明確に切り分けます。 この切り分けによって、不要な変更の連鎖を極力抑えられるようにするのです。

なぜソフトウェア開発で大切なのか

クリーンアーキテクチャが注目される理由として、保守性の高さが挙げられます。 複数の開発者が同じシステムに関わるとき、コード構造が煩雑だと誰もが手を入れやすい形にはなりにくいでしょう。 一方、アーキテクチャが整理されていると、機能追加やリファクタリングが楽になります。

また、外部サービスの切り替えや、ユーザーインターフェースの刷新といった変化に対しても、影響を限定的に抑えることが狙いです。 プロジェクトが大きくなればなるほど、こうした設計思想が生きてきます。

クリーンアーキテクチャを構成する要素

クリーンアーキテクチャには、中心から外側に向かって複数のレイヤーが存在します。 ここでは、代表的なレイヤー構成としてエンティティ層・ユースケース層・インターフェース層を簡単に紹介します。

エンティティ層

エンティティ層は、ビジネス上で登場するデータ構造や、そのデータにまつわる振る舞いを定義する部分です。 たとえば、ユーザーや商品など、業務における概念をクラスやオブジェクトで表現します。 もしも機能追加が必要になっても、エンティティ自体は外部システムに依存しないように作ることで、汎用性が高くなります。

ユースケース層

ユースケース層では、具体的なビジネスロジックやシステムの振る舞いをまとめます。 データを更新したり、複雑なドメインルールを適用したりするメソッドを中心に持つレイヤーです。 エンティティ層よりも一段上で、ユーザーがソフトウェアに求める操作やルールを扱うことが多いでしょう。

インターフェース層

インターフェース層は、外部システムやプレゼンテーション層とのつなぎ役になります。 APIコントローラーやリポジトリが典型的な例で、フレームワークに依存するコードもここに含まれます。 たとえば、HTTPリクエストの受付や、データベースとのやり取りといった処理が該当します。

レイヤー役割
エンティティ層ビジネス上の概念、データ構造と振る舞い
ユースケース層具体的なビジネスロジックやドメインルール
インターフェース層フレームワークや外部サービスとの連携、コントローラー等

実務での活用シーン

クリーンアーキテクチャは、実務のさまざまな場面で活躍します。 特に、システムが長期間運用される大規模な現場では、開発メンバーが変わってもコードの意図を理解しやすいメリットがあります。

Webアプリケーションでの活用

Webアプリケーションの場合、ユーザーからのリクエストを受け取る部分をインターフェース層に配置します。 その後、ユースケース層でビジネスロジックを処理し、エンティティ層でデータ構造を扱う形が一般的です。 こうすることで、フレームワークが変わってもビジネスロジックを再利用しやすくなります。

大規模開発でのメリット

機能が膨らむほど、コードの依存関係はややこしくなりがちです。 しかし、クリーンアーキテクチャで各レイヤーをきちんと分割しておけば、新しいメンバーが参加しても把握しやすくなるでしょう。 機能単位で担当を割り振る際にも、どのレイヤーに関わる変更かを明確に把握しやすくなります。

クリーンアーキテクチャを導入したからといって、すぐに開発が圧倒的に楽になるわけではありません。 しかし、適切にレイヤーを設計し、少しずつ慣れていくことで保守がしやすいコードを目指せます。

実装例:Node.jsによるサンプル

ここでは、Node.jsを例にした簡単なディレクトリ構成とサンプルコードを見てみましょう。 実装言語は何でも対応できますが、JavaScriptやTypeScriptは学習者が多いのでイメージしやすいかもしれません。

ディレクトリ構成例

以下は、クリーンアーキテクチャを意識した最低限の構成イメージです。 実務ではプロジェクト規模や要件に合わせて、さらに細分化することも多いでしょう。

my-app
├── src
│   ├── entities
│   │   └── User.js
│   ├── usecases
│   │   └── CreateUser.js
│   ├── interfaces
│   │   ├── controllers
│   │   │   └── UserController.js
│   │   └── repositories
│   │       └── UserRepository.js
│   └── index.js
└── package.json
  • entities ディレクトリ:ビジネス上の基本的な概念(ユーザーなど)を定義
  • usecases ディレクトリ:ビジネスロジックを具体的に実行する処理をまとめる
  • interfaces ディレクトリ:外部とのやり取り(コントローラーやデータベース接続など)を配置
  • index.js:アプリケーションのエントリーポイント

サンプルコード

たとえば、ユーザーを新規作成する処理の一部を以下のように書くことができます。

// src/entities/User.js
class User {
  constructor({ id, name, email }) {
    this.id = id;
    this.name = name;
    this.email = email;
  }
}

module.exports = User;
// src/usecases/CreateUser.js
module.exports = class CreateUser {
  constructor(userRepository) {
    this.userRepository = userRepository;
  }

  async execute({ name, email }) {
    // シンプルな例としてIDをランダム生成
    const id = Math.floor(Math.random() * 1000000).toString();
    const newUser = await this.userRepository.create({ id, name, email });
    return newUser;
  }
};
// src/interfaces/repositories/UserRepository.js
const User = require("../../entities/User");

module.exports = class UserRepository {
  constructor() {
    // デモ用にメモリ上でデータを管理
    this.users = [];
  }

  async create({ id, name, email }) {
    const user = new User({ id, name, email });
    this.users.push(user);
    return user;
  }

  async findById(id) {
    return this.users.find(u => u.id === id) || null;
  }
};
// src/interfaces/controllers/UserController.js
module.exports = class UserController {
  constructor(createUserUseCase) {
    this.createUserUseCase = createUserUseCase;
  }

  async createUser(req, res) {
    const { name, email } = req.body;
    const user = await this.createUserUseCase.execute({ name, email });
    res.json(user);
  }
};
// src/index.js
const express = require("express");
const bodyParser = require("body-parser");
const UserRepository = require("./interfaces/repositories/UserRepository");
const CreateUser = require("./usecases/CreateUser");
const UserController = require("./interfaces/controllers/UserController");

const app = express();
app.use(bodyParser.json());

// Repository と UseCase を生成し、Controller に渡す
const userRepository = new UserRepository();
const createUserUseCase = new CreateUser(userRepository);
const userController = new UserController(createUserUseCase);

// エンドポイント設定
app.post("/users", (req, res) => userController.createUser(req, res));

app.listen(3000, () => {
  console.log("Server is running on port 3000");
});

このように、エンティティ・ユースケース・インターフェースが明確に分かれていると、機能追加や外部ライブラリの差し替えが行いやすくなります。

クリーンアーキテクチャのメリットと注意点

クリーンアーキテクチャには、いくつかのメリットと注意すべき点があります。

メリット

コードの見通しが良くなる

レイヤーごとに責務が分割されるため、どこを修正すれば良いか判断しやすくなります。

大規模開発でも混乱しにくい

新規メンバーが参加しても、コードベースの構造を理解しやすいでしょう。

テストが行いやすい

依存関係が整理されているため、個別のレイヤーをテストしやすくなります。

注意点

学習コストがかかる場合がある

レイヤーの分割や依存関係の制御に慣れるまでに、少し時間を要するかもしれません。

小規模プロジェクトでの過度な分割

規模によっては必要以上にファイルが増えてしまい、逆に管理が大変になることがあります。

必要に応じてレイヤーの深さを調整するのもひとつの方法です。 最初は最小限の構成から始めて、プロジェクトの拡大とともにレイヤーを整えていくと無理なく運用できます。

まとめ

クリーンアーキテクチャは、ソフトウェアを長く運用するための設計手法といえるでしょう。 ビジネスロジックと外部依存を切り分けることで、コードの保守性や拡張性を高めることができます。

初心者の方でも、まずはレイヤーを意識したディレクトリ構成や依存関係の整理から始めてみると、構造化のメリットを感じやすいかもしれません。 規模やチーム構成に応じて調整しながら、クリーンアーキテクチャの考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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