DDD(ドメイン駆動設計)をわかりやすく解説

はじめに

ソフトウェアの機能が複雑になるほど、コード全体の構造や保守の手間が気になってくるのではないでしょうか。 その中で、 DDD (ドメイン駆動設計) という手法が注目を集めています。 初心者の皆さんでも扱いやすいように、DDDの基本的な考え方とメリットをシンプルに整理してみました。 実務の場でどのように活用するかも含めて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

DDD(ドメイン駆動設計)とは何か

DDDは、ソフトウェアの設計をビジネスロジック(ドメイン)から考える手法です。 開発する対象が何を解決したいのか、どのような業務要件があるのかを深く理解し、コードの構成に反映させます。 単なる機能追加ではなく、ビジネス上の課題やルールを中心に据えるイメージですね。

重要な考え方

DDDでは、専門用語をチーム全体で統一する ユビキタス言語 や、業務の塊ごとに境界を引く バウンデッドコンテキスト がキーポイントになります。 実際にアプリケーションを作るときは、エンティティやリポジトリなどの概念も組み合わせて、分かりやすいコード構造に導きます。

DDDが求められる理由

ソフトウェア開発では要件の変更や機能追加が頻繁に発生します。 そのときに、コードが複雑でビジネスロジックと結びついていないと、修正に時間がかかったり不具合が入り込みやすくなります。 一方で、DDDを導入すると、ドメインに合わせて整理されたコードができあがりやすいです。 結果として、ビジネスの変化へ柔軟に対応できることが期待できます。

実務での活用シーン

たとえば、ECサイトや在庫管理システムなど、業務ロジックが重要となる領域で効果を発揮することが多いです。 商品の管理や注文処理など、それぞれの機能が明確に分割されていると、保守・拡張がしやすくなりますね。

バウンデッドコンテキストの理解

ドメインを複数のまとまりに分けて考えるのが、バウンデッドコンテキストです。 ECサイトの例で言うと、ユーザー管理と在庫管理を完全に切り離して設計するといったイメージを持ってみてください。 それぞれ独立した責任を持ち、相互に影響を最小化することが狙いです。

わかりやすい例

  • ユーザー管理
  • 在庫管理
  • 決済処理

これらは、相互に関連しながらもビジネス的には別の関心事を扱います。 DDDでは、それぞれのコンテキストをはっきり区切って設計することで、全体構造を見通しやすくします。

ユビキタス言語でチーム間の認識を合わせる

プロジェクトに携わる人が皆同じ言葉を使うようにするのが、ユビキタス言語の目的です。 たとえば、「ユーザー」という言葉を使うときに、顧客や社員、管理者などが混在しないように定義をはっきりさせます。 専門用語をオープンに共有することが、開発効率や品質向上につながります。

チームコミュニケーションとコード

ユビキタス言語はドキュメントだけでなく、クラス名やメソッド名にも反映されます。 こうすることで、コードを読んだときにもビジネスロジックが直感的に理解しやすくなりますね。

エンティティと値オブジェクトの違い

エンティティ は識別子を持ち、ライフサイクルを通じて変化が追跡されるオブジェクトです。 一方、値オブジェクト は属性の集合であり、識別子を持ちません。 お金や日付などの概念を、値オブジェクトとして扱うと分かりやすいでしょう。

分類識別子を持つか
エンティティユーザー、注文持つ
値オブジェクトお金、住所持たない

このように区別しておくと、クラス設計やデータベース構造が整理しやすくなります。

リポジトリとドメインサービス

DDDでは、エンティティを永続化する仕組みとして リポジトリ が登場します。 データベースとやり取りをする処理をリポジトリに集約して、ドメインロジックをスマートに保つ狙いがあります。

ドメインサービスの役割

複数のエンティティや値オブジェクトにまたがるビジネスロジックは、ドメインサービス にまとめます。 これにより、エンティティの責務が不必要に肥大化することを防ぎます。

サンプルコード(TypeScript)

DDDを使ったシンプルなユーザー管理のイメージとして、以下のようなコード例を考えてみてください。

// ユーザーエンティティ
class User {
  private id: string;
  private name: string;
  private email: string;

  constructor(id: string, name: string, email: string) {
    this.id = id;
    this.name = name;
    this.email = email;
  }

  changeEmail(newEmail: string) {
    this.email = newEmail;
  }

  getId(): string {
    return this.id;
  }

  getName(): string {
    return this.name;
  }

  getEmail(): string {
    return this.email;
  }
}

// リポジトリ(ユーザーの保存・取得を担当)
interface UserRepository {
  save(user: User): Promise<void>;
  findById(id: string): Promise<User | null>;
}

// ドメインサービス(複数エンティティを扱う複雑なロジックをここに書く例)
class UserDomainService {
  constructor(private userRepository: UserRepository) {}

  async changeUserEmail(userId: string, newEmail: string) {
    const user = await this.userRepository.findById(userId);
    if (!user) {
      throw new Error("ユーザーが見つかりません");
    }
    user.changeEmail(newEmail);
    await this.userRepository.save(user);
  }
}

ユーザー情報を変更するときは UserDomainService を通して、業務ロジックをまとめるのがポイントです。

実装するときのポイント

DDDを実装するときには、以下のポイントを意識すると設計がスムーズになります。

  • エンティティと値オブジェクトの切り分けを明確にする
  • ビジネスルールはドメイン層に集約する
  • リポジトリはデータ取得・保存のみに責務を限定する

こうすることで、ドメイン本来の複雑さをコードで表現しやすくなります。

初期段階であまり細かい部分まで取り決めすぎると、開発中に柔軟に変えられなくなるかもしれません。 必要に応じて、設計をリファクタリングする前提で取り組む姿勢が大切です。

運用時の工夫

DDDを導入しても、運用や拡張の段階で別の問題が発生することがあります。 たとえば、機能追加によりドメインサービスが肥大化してしまうケースなどが考えられますね。 その場合は、新たなバウンデッドコンテキストを見直したり、既存のモデルを再検討したりすることが必要です。

継続的なリファクタリング

運用を続けながら、ビジネス要件の変化に合わせてモデルを更新する作業が欠かせません。 これはDDDの考え方を持続的に活かすうえでも重要となります。

まとめ

DDD (ドメイン駆動設計) は、ビジネスロジックをコードの中心に据える設計手法です。 エンティティやバウンデッドコンテキストなどの概念をしっかり把握しておくと、複雑な要件にも対応しやすくなります。 初心者の皆さんも、まずは小さなプロジェクトでエンティティやリポジトリを設計する体験をしてみると、考え方が整理できるかもしれません。 今後の開発で、DDDならではのメリットをぜひ味わってみてください。

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