FTPとは?初心者でもわかるファイル転送の基本や使い方を徹底解説
こんにちは。 皆さんは FTP (File Transfer Protocol)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
サーバーからファイルを取得したり、サーバーにファイルをアップロードしたりする方法はいろいろあります。 その中で古くから利用されてきたのがFTPです。
FTPを使うときに専用のクライアントソフトを導入することがあります。 あるいはコマンドを使ってやりとりをすることもあります。
ただ、初めて聞いた方にとっては仕組みがわからないかもしれませんね。 そこでこの記事では、FTPの基本から応用的な活用方法までを初心者でもわかりやすく説明していきます。
実際にプログラミングを始めると、ファイル転送の場面に出くわすことはよくあります。 ホームページを公開する際にHTMLや画像をサーバーにアップロードしたい場合などに使われることが多いです。
そのため、FTPがどういったものか把握しておくと、これからIT業界に飛び込む方や学習中の方にとっても役に立つはずです。
では、FTPの世界を覗いていきましょう。
FTPとは何か
FTP (File Transfer Protocol)とは、ネットワーク上でファイルをやり取りするための通信プロトコルです。 プロトコルという言葉は少し難しそうに聞こえますが、「コンピューター同士がやり取りするためのルール」と捉えるとイメージしやすいのではないでしょうか。
インターネット上のサーバーと自分のパソコンの間など、離れた場所にある機器同士でファイルを送受信するときに役立ちます。 Web制作の現場では昔から広く利用されており、HTMLファイルや画像、プログラムなどをサーバーにアップロードするときによく使われてきました。
ただ、近年はFTPよりも安全性を高めたSFTPやFTPSといった手段を利用する現場が増えています。 とはいえ、FTP自体も基本的な概念を理解するにはちょうど良いトピックです。
また、プログラミングを始めたばかりの方でも、ファイル転送に関する知識を身につけることで、サーバーに対してデータを取り扱う感覚を掴みやすくなります。 一度FTPの仕組みを理解しておくと、ほかのプロトコルを学ぶ際にも役立ちます。
FTPの仕組み
FTPは大きく分けてクライアントとサーバーの2つの役割に分かれます。 クライアント側では「ファイルをサーバーに送信したい」「サーバー上のファイルを取得したい」といった要求を出します。 サーバー側ではクライアントの要求に応じてファイルを送受信します。
FTPでは専用のポート番号を使って通信を行います。 標準的にはTCPのポート番号21が使われることが多いです。
FTPセッションでは、コントロール用とデータ用の2つの経路を用意するという特徴があります。 コントロール用の経路では「ログイン」「ディレクトリの移動」「ファイル転送指示」などの命令がやり取りされます。 データ用の経路では実際にファイルの中身が流れます。
ただ、この仕組みの都合上、FTPは設定次第でファイアウォールの影響を受けたり、IPアドレスのやり取りで混乱が生じたりすることがあります。 インターネットが普及してセキュリティ意識が高まると、より安全な手法が求められるようになりました。
一方で、FTP自体は歴史が長いため、多くのソフトウェアが用意されているという利点があります。 そのため、FTPクライアントを導入してすぐに使えるという場面も少なくありません。
また、FTPを利用してファイル転送を行う際は、接続に関する設定(ホスト名やパスワード)を間違えないように注意が必要です。 誤った接続先にファイルをアップロードしてしまうと、意図しないサイトを上書きしたり、機密情報が漏れたりするリスクがあります。
では、もう少し具体的な利用シーンを見てみましょう。
実務での活用シーン
FTPが使われる典型的なシーンとして、Webサイトやアプリのリソースをアップロードする場面が挙げられます。 たとえば、次のようなケースでFTPが役立ちます。
- ホームページを制作して、HTMLやCSS、画像をサーバーに上げる必要があるとき
- ログファイルや設定ファイルをサーバーから取得したいとき
- サーバー内のファイルをバックアップとして手元にダウンロードしたいとき
- テスト用のファイルをサーバーにアップロードして動作を確かめたいとき
これらはごく身近な例かもしれません。 Webサイト運営の現場では、CMS(コンテンツ管理システム)を使うことも多いですが、テーマやプラグインのファイルを手作業で調整するときにはFTPが役に立ちます。
また、企業のシステムでも、データのやり取りをする際に一部でFTPを使っているところがあります。 一度導入された仕組みをすぐに置き換えられない場合、慣れた手段としてFTPが長く使われ続けていることもあるのです。
ただ、セキュリティの観点からは、現在はFTPよりもSFTPやFTPSが選ばれることが多いです。 この違いについても少し触れておきます。
SFTPやFTPSとの違い
FTPはユーザー名やパスワードを含む通信内容が暗号化されないという特徴があります。 つまり、悪意のある第三者が通信内容を盗聴すると、パスワードややり取りするファイルの内容をそのまま読める可能性があるのです。
一方で、 SFTP (SSH File Transfer Protocol)はSSHという仕組みを使って通信を暗号化します。 コマンドやファイルの中身が暗号化されるため、セキュリティが大きく向上します。
また、 FTPS (FTP over SSL/TLS)はFTPの通信にSSL/TLSを組み合わせた方法です。 SSL/TLSと聞くと、HTTPSをイメージする方もいるかもしれません。 FTPでも同じように安全性を高めることができるわけですね。
どちらもFTPで指摘されてきたセキュリティの問題を解決する手段として使われています。 実際の現場では、FTPサーバーを新しく構築する場合、SFTPやFTPSを導入することが少なくありません。
しかし、学習の段階で最初に触れるのはFTPという人が多いでしょう。 なぜなら、FTPクライアントの基本的な画面操作やコマンドの使い方を習得しておくと、SFTPなどの応用的な操作もわかりやすくなるからです。
FTPのメリット・デメリット
FTPを学ぶ上で、メリットとデメリットを把握すると全体像が見えてきます。
メリット
- 歴史が長く、対応するソフトウェアやサーバーが多い
- 導入が比較的簡単で、設定がシンプルなことがある
- 専用ソフトやコマンドなど、情報が多く手に入りやすい
デメリット
- 通信が暗号化されないためセキュリティリスクがある
- ファイアウォールなどのネットワーク設定が複雑になる場合がある
- 大量ファイルの転送時には速度や安定性に課題があることもある
ここで気づくかもしれませんが、セキュリティの問題が一番大きいと考えられています。 もし個人情報や企業秘密が含まれるデータを扱うなら、SFTPやFTPSといった暗号化された手段を優先した方がいいでしょう。
それでもFTPを利用する場合は、VPNなど別の仕組みでセキュリティを確保するケースもあります。 ただ、初心者のうちは「なぜFTPが避けられる傾向にあるのか」を理解する程度で十分です。
FTPを利用するときの流れ
それでは、FTPでサーバーにファイルをアップロードする一般的な流れを簡単に見てみましょう。
- まず、FTPサーバーのアドレス、ユーザー名、パスワードを用意する
- FTPクライアントソフトを起動し、サーバーの情報を入力する
- 接続が成功すると、サーバー側のディレクトリ一覧が見える
- ローカル側のファイルをサーバー側へドラッグ&ドロップするなどしてアップロードする
- アップロードが完了すると、サーバー上にファイルが設置されている
基本的にはこのような手順です。 プログラミングスクールや独学でWebサイトを公開するときにも、こうした流れでファイルをサーバーに上げることがあります。
コマンドラインで操作したい場合は、ターミナルやコマンドプロンプトでftp
コマンドを使ってログインします。
ログイン後はls
やcd
、put
などのコマンドを使ってサーバー上の操作を進めます。
しかし、パスワードが平文で送信される点には注意が必要です。 気軽にパスワードを入力できる環境かどうか、セキュリティの観点でよく確認しましょう。
FTPサーバーの実務での役割
企業や開発現場では、FTPサーバーを立ててファイルの受け渡し窓口として使うことがあります。 たとえば以下のようなケースが考えられます。
- システム開発会社が顧客に納品ファイルを受け取ってもらうために、専用のFTPサーバーを運用する
- 社内限定で共有したいファイルがあるとき、簡易的な手段としてFTPサーバーを設置する
- システムが古く、既存のバッチ処理や連携機能がFTP経由で動いている
長年運用されてきた仕組みをすぐに変更するのは難しいため、FTPが残っている現場も少なくありません。 その一方で、セキュリティ対策は厳しくなっているので、外部とのやり取りではSFTPを推奨する場合が増えています。
いずれにしても、FTPの基本的な動きを知っておくと「なぜSFTPを使うのか」「どうしてFTPSにするのか」といった議論が理解しやすくなります。
PythonでFTPを扱うサンプルコード
ここでは、Pythonのftplibを使った簡単なファイル取得の例を紹介します。 プログラミング初心者の皆さんにも、どのようにプログラムからFTPに接続するかの雰囲気をつかんでもらえればうれしいです。
import ftplib # FTPサーバーの情報を設定します ftp_host = "ftp.example.com" ftp_user = "username" ftp_pass = "password" # 接続とログインを行います ftp = ftplib.FTP(ftp_host) ftp.login(user=ftp_user, passwd=ftp_pass) # カレントディレクトリを確認します print("Current Directory:", ftp.pwd()) # リモートにあるファイルのリストを確認します files = ftp.nlst() print("File list on server:", files) # サーバー上のファイルをダウンロードします filename = "test.txt" # ダウンロードしたいファイル名 local_filename = "downloaded_test.txt" with open(local_filename, "wb") as f: ftp.retrbinary(f"RETR {filename}", f.write) print(f"{filename} を {local_filename} という名前でダウンロードしました") # FTP接続を終了します ftp.quit()
最初にftplib.FTP
を使ってサーバーに接続し、login()
で認証を行います。
その後、nlst()
というメソッドでファイル一覧を取得し、目的のファイルをretrbinary()
でダウンロードしています。
今回のサンプルはあくまで雰囲気だけをつかむものです。 実務で使う際には例外処理を入れたり、エラーチェックをしたり、パスワードの扱い方を十分注意したりする必要があります。
FTPサーバーへのアップロードも同様で、storbinary()
というメソッドを使います。
ファイルをアップロードする場合は、引数をSTOR
にして実装することになります。
プログラム上でファイルのやり取りを自動化したい場面では、こうした方法がよく使われます。 ただし、パスワードやデータが暗号化されない点には十分気を配りましょう。
FTPを使うときのセキュリティ対策
FTPは通信が暗号化されないという特性があるため、セキュリティが気になるかもしれません。
FTPをインターネット上で使う場合は、データを盗み見られる可能性があることに気を配りましょう。 パスワードを抜き取られるリスクがあるため、十分に対策をとる必要があります。
どうしてもFTPを使わなければいけない状況なら、以下のような対策を取るケースがあります。
- 社内LANなど閉じたネットワークだけで運用する
- VPNを利用して、暗号化された通信経路の中でFTPを使う
- パスワードを頻繁に変更する
- 権限を最小限に絞ったユーザーアカウントを用意する
こうした工夫をすることで、リスクを小さくすることができるでしょう。 ただ、暗号化に対応しているプロトコル(SFTPやFTPSなど)を使った方が安心といわれています。
FTP以外のファイル転送手段
昨今ではクラウドストレージを使う方法や、SSH経由のSCPなどがよく使われています。 特に個人間でファイルを渡すだけなら、オンラインストレージを利用することが手軽です。
一方で、サーバーとプログラムの連携という点では、SFTPやAPIを通じてファイル送受信することが増えています。 大容量のデータをやり取りするなら、分割転送や専用の送信ツールを使うこともあります。
FTPを選択する場合は、いつどのような状況で利用するかをしっかり確認した方がいいでしょう。 あえてFTPにこだわる必要があるのか、それとも新しい方法に切り替えた方がいいのかを見極めることが大切です。
ただ、学校や独学の学習環境でFTPしか使えないケースもあるかもしれません。 そのような場合は、セキュリティリスクを理解した上で、慎重に取り扱いましょう。
FTPを学ぶメリット
学習者にとっては、FTPを使えるようになることで「サーバーとファイルをやり取りする」という感覚をつかみやすくなります。 例えば、単純なテキストファイルをアップロードして、Webブラウザでアクセスしてみると「こうやって公開されるんだ」という経験ができます。
プログラミング初心者が最初に作ったHTMLファイルをインターネット上に置くときにFTPを使うと、Webサーバーやネットワークの仕組みに興味を持つきっかけになるかもしれませんね。
また、古いシステムやWebホスティングなど、FTPを前提とした環境はまだ数多く存在しています。 そうした現場に遭遇したときに、自分で操作できるとスムーズに作業が進むでしょう。
さらに、SFTPやFTPSといった暗号化プロトコルはFTPの拡張版や派生と捉えることもできます。 FTPの概念がわかっていると、新しいプロトコルの導入に対しても理解が早くなるでしょう。
FTPを扱うときの注意点まとめ
改めて、FTPを扱うときに意識しておきたいポイントを整理しましょう。
- FTPの通信は平文であるため、基本的に暗号化されない
- パスワードを含めてネットワーク越しに流れてしまうリスクがある
- 大切なファイルを取り扱う場合は、SFTPやFTPS、あるいはVPNを組み合わせた運用が望ましい
- 企業や組織内の限られたネットワークで使う分には比較的使いやすい
- 運用中の古いシステムがFTPに依存している場合、すぐに置き換えができない可能性がある
こうした点を理解しておけば、実務でも困りにくいでしょう。
まとめ
ここまで、 FTP (File Transfer Protocol)について、初心者にもわかりやすい形で解説してきました。 大まかな流れは理解できたでしょうか。
FTPはファイル転送の基本的な仕組みを学ぶのに役立ちます。 一方で、通信内容が暗号化されないことからセキュリティリスクも大きいです。
そのため、現代ではSFTPやFTPSのような暗号化されたプロトコルが推奨されることが増えています。 とはいえ、古くから存在するため多くの現場やシステムで使われ続けています。
初心者のうちは、まずFTPでファイルのアップロードやダウンロードを試しながら、サーバーに触れる感覚を身につけてみるといいかもしれません。 そして、本格的な開発や運用の際はセキュリティを意識して、安全な手段を選ぶことを検討するのが自然な流れでしょう。
プログラミングの世界では、ファイルの管理やサーバーへの接続といった作業がしばしば登場します。 FTPの基礎を理解しておくと、こうした場面に遭遇しても混乱しにくくなります。
これを機に、ファイル転送の仕組み全般に興味を持ってみるのもいいですね。 初心者の皆さんが、自分に合った方法でサーバーとのやり取りをスムーズに進められるようになることを願っています。