モノリスとは?初心者でもわかる基本概念と実務での活用例
はじめに
皆さんはソフトウェアの構造を考えるとき、どのようにプログラムを分割しているでしょうか。 アプリケーションの全機能が一体となった構成を、モノリスと呼ぶことがあります。 このスタイルは名前の通り「塊」のような作り方で、初心者でも概要を把握しやすい反面、さまざまな注意点も存在します。 一見すると「ひとつにまとまっている方がわかりやすいのでは?」と思うかもしれませんが、その考え方だけでは不十分なことも多いです。 本記事ではモノリスがどのようなものか、そして実務における具体的な活用シーンや注意点を含めて、わかりやすくお伝えします。
この記事を読むとわかること
- モノリスの基本的な考え方
- モノリスアーキテクチャのメリットとデメリット
- 実務での活用シーンや開発の流れ
- モノリスとマイクロサービスの違い
- 実際にコードを使った簡単な例
ここでは抽象的な説明に終わらず、具体的な場面をイメージしやすいように進めていきます。
モノリスとは何か
モノリスという言葉は「単一の塊」という意味を持ちます。 ソフトウェア開発では、アプリケーションのフロントエンドやバックエンド、データベース接続などのすべてをひとつのプロジェクトとして構築する手法を指します。
実際の開発現場を考えると、ユーザーへの画面表示やデータベースとのやり取りなど、やるべきことは多岐にわたります。 それらをひとまとめにすると、全体像を早い段階で把握しやすくなるという利点があります。 例えば、ウェブサービスを一度にパッケージしてサーバーにアップロードすれば、すべての機能が一括でデプロイできるイメージです。 開発経験が浅い方にとっても、プロジェクトをいくつにも分割するよりは管理しやすく感じるかもしれません。
しかし、コードや機能が大きくなりすぎると、一箇所の修正がシステム全体に影響を与えやすくなるという問題が表面化します。 このあたりがモノリス特有の特徴であり、後ほど詳しくメリットとデメリットを解説します。
ビジネスでの活用シーン
現実的に考えると、最初に小規模のサービスをリリースするときにはモノリスの方が手早いことが多いです。 機能やユーザー数が少ないうちは、サーバー構成もシンプルに保てますし、別々のサービスを統合する手間もありません。
例えば、以下のような場面でモノリス構成が採用されることがあります。
- 立ち上げたばかりのスタートアップが、まずは早くサービスを世に出したい
- 機能が限定的で、追加開発もそれほど複雑にならないと予想される
- チームメンバーが少なく、運用コストを抑えたい
このようなシーンでは、一体型であるモノリスの設計が有効にはたらく場合があります。 開発工程を一元管理できるため、学習コストも抑えやすく、新人エンジニアにも全体像を示しやすいと言われることがあります。
モノリスアーキテクチャのメリット
シンプルなデプロイフロー
単一のプロジェクトとして管理できるので、デプロイの手順が簡単になりやすいです。 ビルド(コンパイルやパッケージ化)から本番環境へのリリースまでがワンストップで行われるケースが多いでしょう。 複数のサービスを連携させる必要がないので、バージョンの互換性に悩むことも少なくなります。
コードの見通しが立てやすい
機能がそこまで大規模でなければ、プロジェクト全体を通してソースコードを把握しやすいです。 複数の技術スタックを同時に扱わなくても良いので、初学者にとっては理解のハードルが低いと感じるかもしれません。 例えば「コントローラー → サービス(ビジネスロジック) → データベースアクセス」の流れがひと目でわかることも少なくありません。
チームのコミュニケーションが取りやすい
単一のコードベースを共有していれば、チーム全員が同じ基盤を見ながら話し合えます。 ある機能を開発した人が別の機能と連携するときも、ひとつのプロジェクト上でやり取りするため、コミュニケーションロスが発生しにくいです。 規模の小さいプロジェクトであれば、このメリットは特に顕著です。
複数の機能を俯瞰しながら開発できる点は、モノリスならではの特長です。
モノリスアーキテクチャのデメリット
規模拡大による複雑化
最初は小さい機能セットで始めても、サービスが成長すれば機能やユーザー数が増えていきます。 そうなると、一つのプロジェクトに詰め込む要素が多くなり、コードが膨らみやすいです。 管理しきれなくなると、不具合を修正する際に想定外の場所に影響を及ぼすリスクが高まります。
リリースサイクルの遅延
サービス内のある部分だけ更新したい場合でも、アプリ全体をまとめて再デプロイする必要が出るかもしれません。 さらに、プロジェクト全体が大きいと、ビルドやテストに時間がかかることがあります。 結果として、新機能や修正のリリースサイクルが遅れる要因にもなりやすいです。
柔軟なスケーリングが難しい
全体が一体化しているので、特定の機能だけを横に増やしたい場合でも、基本的にはアプリ全体を同様にスケーリングしなければなりません。 例えば「画像変換の処理だけサーバーを増やしたい」と考えても、モノリス構成だと部分的な負荷分散が難しい場面があります。 コスト面や運用面でも非効率になることがあるため、大規模サービスには注意が必要です。
機能がどんどん増えるプロダクトでは、コードの保守と運用コストが急激に高くなることがあります。
モノリスとマイクロサービスの違い
役割分担のアプローチ
モノリスはすべてをひとつのプロジェクトにまとめますが、マイクロサービスでは機能ごとに独立したサービスを構築します。 ユーザー認証、決済、在庫管理などを別々のサービスとして作るイメージです。 それぞれが独立したAPIを持つため、故障やアップデートの影響を局所化しやすいのが特徴です。
運用負荷とのトレードオフ
マイクロサービスは柔軟性が高い一方で、サービス間のやり取りが増えるため、通信や管理が複雑になりやすいです。 一方、モノリスの場合は単一のプロジェクトで済むため、サービス間通信のオーバーヘッドは少なくなります。 どちらを選ぶかは、サービスの規模やチーム体制、成長の見込みなどを総合的に考えたうえで判断すると良いでしょう。
チームスキルの影響
マイクロサービスではチームごとに異なる技術を導入しやすいですが、その分だけチーム全体に幅広い知識や運用スキルが必要とされます。 モノリスの場合、基本的にはひとつの主要言語・フレームワークを押さえていれば開発が進められます。 そのため、初心者が最初に触れるにはモノリス構成の方がわかりやすいと感じることが多いです。
モノリスの具体的なコード例(Node.js)
ここでは簡単なNode.jsアプリケーションを例に挙げてみます。 一つのファイル内にルーティングからデータベース操作までを含めるスタイルは、まさにモノリス的な作り方と言えるでしょう。
// app.js const express = require("express"); const app = express(); // 一括でルーティングを定義 app.get("/", (req, res) => { res.send("ホームページへようこそ"); }); // ユーザープロフィール取得(仮例) app.get("/profile", (req, res) => { // データベースの処理やロジックがここに含まれる const userProfile = { id: 1, name: "John Doe", email: "john@example.com" }; res.json(userProfile); }); // サーバー起動 app.listen(3000, () => { console.log("モノリス構成のアプリが起動しました"); });
この例のように、ひとつのapp.js
にサーバーの設定とルーティング、ビジネスロジックなどが集約される形になります。
サービスが小さいうちは、これだけで機能が十分成り立つケースもあります。
一方、機能が増えていくと各ロジックを別ファイルに分ける必要が出るなど、コード管理の工夫が必要になります。
実務で活用する際のポイント
アーキテクチャを見直すタイミング
開発初期はモノリスが速いケースが多いですが、ユーザー数が急増したり、機能が複雑になったりするとマイクロサービス化を検討する場面に直面します。 全機能を一度に切り出すのはハードルが高いので、事前に「どこを分割しやすいか」を頭に入れておくと良いでしょう。
テスト体制の構築
モノリスでは、修正がシステム全体に影響する可能性があるため、自動テストやコードレビューの仕組みを早めに整えると事故を防ぎやすくなります。 小規模なうちはテストの回数も少なく、手動テストで済ませがちですが、成長期に入ると大量のテストをカバーできなくなるかもしれません。
チーム構成やスケジュールを明確化
モノリスであっても、人数が増えてくれば機能別に担当が分かれてくるでしょう。 複数人が同時にコードを変更する場合は、タスク管理ツールやコミュニケーションツールで「誰がどの部分を担当しているのか」をこまめに共有するのがおすすめです。 特にコードレビューの仕組みをしっかり回しておくと、いざ規模が大きくなったときにも対応しやすくなります。
まとめ
ここまで、モノリスというアーキテクチャについて基本的な仕組みからメリット・デメリット、実務での活用シーンや例を見てきました。 モノリスはシンプルな構成で全体像を把握しやすい一方、サービスの成長とともに保守や運用コストが増大しやすい特徴があります。 初心者の方が開発に入るときには理解しやすい設計ですが、中長期的にはマイクロサービスの導入も視野に入れながら、適切なタイミングで見直すとよいでしょう。
サービス規模や運用体制によって最適なアーキテクチャは変化します。 皆さんが取り組むプロジェクトの状況に合わせて、どのように拡張しやすい形を選んでいくかを考えてみてはいかがでしょうか。
以上がモノリスの基本的な概念と実務での活用例です。 単一の塊という意味合いを理解しておくことで、これからの開発方針をより明確にイメージできるのではないでしょうか。 いざ開発を始める際には、今回のポイントをぜひ参考にしてみてください。