機械学習の決定木をやさしく解説:仕組みから実装例まで

はじめに

機械学習の世界にはさまざまなアルゴリズムがありますが、その中でも 決定木 は構造がシンプルでわかりやすい部類に入ります。 形が木のように広がるため「決定木」と呼ばれており、分類や回帰など幅広いタスクに使われています。 初心者の方でも比較的理解しやすいアルゴリズムと言われることが多く、最初の学習ステップとして選ばれることもあるようです。 ただし、言葉だけで説明しても抽象的に思われるかもしれません。 そこで実務の現場でどのように役立つのか、具体的な例やPythonでのコード例を交えて解説していきます。

決定木とは何か

決定木はその名のとおり、枝分かれを繰り返しながら最終的な予測結果を導く手法です。 分類問題の場合は「○○か××か」、回帰問題の場合は数値を予測するために使われることが多いです。 構造をざっくりイメージすると、根(ルート)からスタートし、条件に応じて複数の枝(ノード)に分岐し、最終的な葉(リーフ)で予測結果やクラスが決まります。

ここで、たとえばECサイトの購買予測をイメージしてみてください。 「性別は何か」「年代はどうか」「ある商品を過去に購入したことがあるか」などの条件によって、最終的に購買するかどうかを予測する、といった流れを作りやすいのが決定木の特徴です。 条件分岐を視覚的に理解しやすいので、初心者でも「どうやって予測しているのか」を把握しやすいでしょう。

決定木の構造をシンプルに理解する

決定木を理解するために、まずはその基本的な構造と用語を押さえることが大切ですね。 代表的な用語は以下のようになります。

用語説明
ルートノード決定木の一番上のノード。データがまず最初にここから始まる
内部ノードルートノードから分岐したノード。複数の条件が入り組んでおり、条件に応じてさらに枝分かれする
葉ノードこれ以上分岐がなくなり、最終的なクラスや数値などを提示するノード

もし分類問題に使うなら葉ノードにはクラス分類(例:男性/女性、購買する/購買しない)などが格納されます。 一方で回帰問題の場合は、葉ノードに数値(たとえば予測金額)が格納される形になるでしょう。 このように、ツリー構造の中で条件をどんどん絞っていく仕組みが決定木の基本的な考え方です。

決定木を使うメリットと気を付けたい点

決定木にはほかのアルゴリズムと比べて、次のようなメリットがあります。

  • 結果が視覚的で理解しやすい
  • 前処理が比較的シンプルなことが多い
  • 分類・回帰のどちらにも対応可能
  • 特徴量のスケーリングに厳密さを要求しない

視覚的に追いやすいという点は、初心者にとってうれしい特徴ではないでしょうか。 一方で、以下のような注意点もあります。

  • 過学習を起こしやすい
  • データのばらつきが大きいと不安定になりがち
  • 高次元データ(特徴量が多い場合)では深い木になりやすい

過学習を防ぐためには木の深さを制限したり、分岐条件の最小サンプル数を設定したりする工夫が必要です。 データ量が少ない状況で無理に決定木を伸ばしてしまうと、細かい例外に適合しすぎてしまうこともあります。

実務での活用シーン

ここからは、実際のビジネス現場で決定木がどう役立つのかを具体的に考えていきましょう。 たとえばマーケティングの領域では、顧客がある商品を購入する可能性を予測したり、離脱リスクを早期に察知するためによく使われます。 金融業界でも、融資の審査や顧客の信用リスク分析などで決定木のアルゴリズムが採用されるケースがあります。

さらに、小売業やECサイト運営者は購入金額の予測を行い、在庫の最適化に役立てることがあります。 もし何かしらの異常検知をしたい場合でも、決定木を応用した手法で異常なトランザクションやユーザー行動を洗い出すことが可能です。 このように多方面で利用できる理由は、決定木がシンプルでありながら解釈がしやすいという点にあるのではないでしょうか。

Pythonでの決定木実装例

ここではPythonの scikit-learn を使った決定木の簡単な実装例をご紹介します。 分類を例に挙げますが、回帰でも大きな流れは同じです。 以下のコードでは仮のデータを作成して、決定木のモデルを作り、正解率(Accuracy)を出力しています。

import numpy as np
from sklearn.datasets import make_classification
from sklearn.model_selection import train_test_split
from sklearn.tree import DecisionTreeClassifier
from sklearn.metrics import accuracy_score

# サンプル用の分類データセットを作成
X, y = make_classification(
    n_samples=1000,
    n_features=4,
    n_informative=2,
    n_redundant=0,
    random_state=42
)

# 学習用データとテスト用データに分割
X_train, X_test, y_train, y_test = train_test_split(
    X,
    y,
    test_size=0.2,
    random_state=42
)

# 決定木のインスタンスを生成(木の深さを制限する例)
tree_model = DecisionTreeClassifier(max_depth=5, random_state=42)

# モデルを学習
tree_model.fit(X_train, y_train)

# テストデータを使って予測
y_pred = tree_model.predict(X_test)

# 正解率を計算
accuracy = accuracy_score(y_test, y_pred)
print("Accuracy:", accuracy)

上記のように、短いコードで決定木のモデルを構築することができます。 max_depth を指定して木の深さを制限しているのは、過学習を防ぐための一例です。 スクリプトを実行すればAccuracyがどれくらい出ているかを簡単に確認できます。

ハイパーパラメータとチューニングのポイント

決定木には、たとえば下記のようなハイパーパラメータが用意されています。 これらを適切にチューニングすることで、モデルの精度や汎化性能を高めることが可能です。

  • max_depth: 木の深さの最大値を決める
  • min_samples_split: 内部ノードを分割する際に必要なサンプル数の最小値
  • min_samples_leaf: 葉ノードに含まれるサンプル数の最小値
  • criterion: 不純度を評価する指標(例:gini、entropy など)

ハイパーパラメータを見直すことで、木が複雑になりすぎないように制御したり、逆に精度向上を狙ったりすることができます。 実務では、訓練データと検証データを使い分けながら、これらのパラメータを最適化していくのが一般的ですね。 グリッドサーチやランダムサーチなどの方法を用いて効率よく探索することもよくあります。

決定木をアンサンブル学習として拡張した「ランダムフォレスト」や「勾配ブースティング」などもあります。 これらは決定木を複数組み合わせて精度向上や過学習の抑制を狙う手法ですが、まずは決定木単体をしっかり理解することが重要です。

ビジネス上の解釈と可視化

実際にモデルを作ったら、「どの特徴量がどの程度予測に寄与しているのか」を解釈するのも大切です。 決定木は分岐が明確なので、可視化ツールやscikit-learn付属の関数を使ってツリー構造を図示すれば、どの条件を軸に予測しているか一目で把握できます。 具体的には sklearn.tree.plot_tree() などを利用することで、枝分かれの様子を可視化できます。

ビジネスユースでは、たとえば「購買確率を高める特徴量は何か」「この属性のユーザーはどんな購買行動をとりがちか」などを絞り込む場合に便利でしょう。 担当者がモデルの中身をある程度説明できるというのは、社内調整などの面でも大きなメリットになりやすいです。 モデルを導入する際に「ブラックボックスだと困る」という声が出ることがありますが、決定木は比較的説明しやすい部類だと言えそうです。

過度に深い決定木は解釈が難しくなる上に、過学習の原因にもつながります。 「可視化しやすいはずが、実際には複雑になりすぎてしまった」という事態を避けるために、定期的に木の深さをチェックしておきましょう。

決定木をさらに活かすためのアイデア

決定木をビジネスや実務で活用するときには、いくつかの工夫も考えられます。 たとえば、決定木の予測結果をレポートとしてまとめる際にはツリー構造の可視化を添えると、専門外の方にも伝わりやすいです。 また、インバウンド・アウトバウンドのマーケティング施策と組み合わせる際には、購買意欲が高いセグメントの抽出に役立てることができます。

もしデータが多すぎて一つの決定木では表現しきれない場合、ランダムフォレストや勾配ブースティングといったアンサンブル学習を検討してみるのも手です。 ただし、アンサンブル学習になるとアルゴリズムが複雑化し、可視化しにくくなる面もあります。 目的や用途に応じて、決定木単体で十分なのか、アンサンブルのパワーが必要なのかを見極めることが大切ですね。

まとめ

ここまで 決定木 という機械学習アルゴリズムについて、その特徴やメリット、実装例、ビジネスでの活用方法などを見てきました。 シンプルな構造でありながら解釈がしやすく、初心者の皆さんも学び始めの段階で「どうやってモデルが予測を行っているか」をイメージしやすいでしょう。 一方で、木を深くしすぎると過学習や解釈の難しさを招くため、ハイパーパラメータの調整が重要になってきます。

まずは、scikit-learnなどを使って小規模のサンプルデータで決定木を作り、その振る舞いや可視化を試してみるのがおすすめです。 決定木自体をしっかり理解しておくことで、その先にあるランダムフォレストや勾配ブースティングへのステップアップもしやすくなるのではないでしょうか。 皆さんが機械学習の一歩を踏み出すうえで、決定木が役立つきっかけになれば幸いです。

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