Dockerチュートリアル 完全ガイド Windows初心者向け

DevOps

はじめに

Dockerは、ソフトウェアをコンテナという単位でまとめて動かせる技術です。

仮想マシンよりも軽量で扱いやすいため、多くの開発現場で使われています。

ただ、初めてDockerを使う方にとっては「インストールは難しくないのか」「使うメリットは何か」という不安もあるでしょう。

特にWindows環境で導入しようとすると、情報が多すぎて混乱する方もいるかもしれません。

そこでこの記事では、WindowsでDockerを始めるうえでの基本と具体的な使い方を初心者向けに解説します。

抽象的な話だけでなく、実務とのつながりや具体的な操作例を交えて紹介していきます。

この記事を読むとわかること

  • Dockerのメリットや特徴
  • 仮想マシンとの違い
  • Windowsでの導入手順
  • 基本的なDockerコマンドの使い方
  • コンテナを活用した実務イメージ
  • Docker Composeによる複数コンテナの管理
  • コンテナ活用の注意点やポイント

ここから順番に学ぶことで、Dockerを使った開発や学習をスムーズに進めるための基礎を身に付けられるはずです。

Dockerとは何か

Dockerはアプリケーションをパッケージ化し、実行環境ごとまとめたものをコンテナとして動かす仕組みです。

コンテナを利用することで、開発者は手軽にアプリケーションを試したり、他の開発者と同じ環境を共有しやすくなります。

Dockerが注目を集める背景

従来は仮想マシンを用いてOSごとアプリケーションを動かすことが多くありました。

しかし、仮想マシンは起動が重かったり、ホストOSへの負荷が大きい場合があります。

そこで、より軽量なアプローチとしてコンテナ技術が普及してきました。

Dockerはその代表格であり、多くの企業や開発コミュニティが取り入れています。

仮想マシンとの違い

仮想マシンでは、OS全体を仮想化し、その中でソフトウェアを実行します。

一方、Dockerなどのコンテナ技術では、ホストOSのカーネルを共有しつつ、アプリケーションが必要とするライブラリだけをまとめた仕組みで動かします。

そのため、コンテナは仮想マシンに比べて起動が早く、動作が軽快です。

実務では複数のアプリケーションを同時に動かす場面もあり、コンテナを使うことで環境構築をより効率化できます。

Windows上でのDockerの導入手順

WindowsでDockerを使う場合、多くの方はDocker Desktopというソフトウェアを導入します。

これは公式が提供するもので、Windows環境でDockerエンジンと連携しながらコンテナを操作できるようになる便利なツールです。

システム要件の確認

Docker Desktopを動かすために、Windows 10以降であることが望ましいです。

必要なハードウェアやOSのエディションなどはDocker Desktopの公式ドキュメントに一覧がありますが、基本的には一般的なWindowsマシンであれば問題ないケースが多いです。

また、Windowsの設定で仮想化が有効になっていない場合があります。

その場合は、BIOSまたはUEFIの設定から仮想化を有効にしておきましょう。

Docker Desktopのインストール

Docker Desktopのインストーラを用意し、インストールを進めます。

セットアップウィザードに従って進めるだけで、特別なカスタマイズがなければデフォルト設定のままでも動作するはずです。

インストールが完了すると、WindowsのスタートメニューなどからDocker Desktopを起動できます。

起動後しばらく待ち、Dockerのバックグラウンドサービスが立ち上がったら準備完了です。

簡単な動作確認

インストール後は、コマンドプロンプトPowerShell、あるいはWindows Terminalなどを開き、下記のようにコマンドを打って動作確認を行います。

docker run hello-world

画面に「Hello from Docker!」などのメッセージが表示されれば、Dockerの基本動作は問題ありません。

Dockerの基本概念と用語

Dockerを使ううえでよく出てくる用語があります。

どれも最初は難しそうに感じるかもしれませんが、シンプルなイメージをつかんでおくと便利です。

イメージとコンテナ

イメージ

アプリケーションを動かすために必要なファイルや設定をまとめたテンプレートのようなものです。

コンテナ

イメージを実際に起動したインスタンスです。

イメージは「型」、コンテナは「型から作られた実際のモノ」という理解でも問題ありません。

Dockerfile

Dockerfileはイメージを作るための設計図です。

アプリケーションをコンテナで動かす際に、必要なライブラリのインストールや環境変数の設定などを書き込みます。

Dockerfileに沿ってイメージをビルドし、そのイメージからコンテナを起動するという流れになります。

リポジトリ

イメージを保管しておく場所をリポジトリと呼びます。

これはDocker Hubやプライベートレジストリなどを指すことが多いです。

必要に応じてリポジトリからイメージを取得し、コンテナとして起動する仕組みが一般的です。

実務での活用例

Dockerは開発、テスト、本番運用など幅広いシーンで使われます。

以下では初心者の方がイメージしやすい実務での活用例を簡単に紹介します。

開発環境の構築

複数の開発者で共同作業をするとき、環境がそれぞれ異なると設定ファイルやライブラリのバージョン違いが起きることがあります。

Dockerを使うと、同じイメージを使って統一した環境を手軽に共有できます。

これによって、動作に差異が出にくくなり、トラブルシューティングにかかる時間を短縮できます。

テストの自動化

継続的インテグレーション(CI)などの仕組みにDockerを組み合わせれば、自動テストを行うときに毎回同じイメージからクリーンなテスト環境を作れます。

テストの再現性が高まり、本番環境と同じ状態でテストを回すこともやりやすくなるでしょう。

本番運用

コンテナは起動が早いため、負荷が高まったときに短時間でスケールアウトできる利点があります。

本番環境でコンテナを運用する場合、複数のコンテナをまとめて管理するオーケストレーションツール(Kubernetesなど)を使うケースもあります。

なお、最初の段階ではDocker Desktopと基本的なコマンドに慣れてから、必要に応じてステップアップするとよいでしょう。

Dockerを使うメリット

Dockerを活用すると、いくつかの大きなメリットがあります。

初心者の方が特に感じやすいものをピックアップしてみましょう。

環境構築がシンプルになる

これまで、開発に必要なツールやライブラリを一つひとつ手作業でセットアップしていた場合、Dockerではイメージとしてまとめて管理できます。

プロジェクト参加者はDockerイメージを取得してコンテナを起動するだけなので、手動のインストール作業を大幅に削減できます。

スケールが容易

コンテナを増やすときは、同じイメージから新たにコンテナを起動するだけです。

仮想マシンのようにOSのセットアップを待つ必要がないため、時間をかけずにスケールアウトができます。

これが負荷への柔軟な対応につながり、サービスを止めるリスクの軽減に役立ちます。

運用コストの削減

環境やアプリケーションのバージョン不一致によるトラブルを減らせるため、開発や運用担当がトラブルシュートにかける時間を抑えられます。

また、コンテナはホストOSのリソースを効率的に使う仕組みがあり、仮想マシンよりもリソースを節約しやすい場面が多いです。

Dockerの基本コマンドを学ぼう

Dockerを本格的に使う前に、代表的なコマンドを覚えておくとスムーズです。

ここでは、よく使うコマンドを簡単にまとめます。

docker pull

リポジトリからイメージをダウンロードするコマンドです。

以下のように打ちます。

docker pull nginx

これでnginxというイメージをローカル環境にダウンロードできます。

docker run

イメージからコンテナを起動します。

一般的には下記のような形です。

docker run -d -p 80:80 nginx
  • -d はバックグラウンドで起動するオプションです。
  • -p 80:80 はホストの80番ポートをコンテナ内の80番ポートに繋げる指定です。

docker ps

現在稼働中のコンテナ一覧を確認するコマンドです。

すでに停止したコンテナも含めて表示したい場合は、docker ps -a を使います。

docker stop

指定したコンテナを停止させます。

コンテナIDや名前を後ろに付けて使います。

docker rm, docker rmi

  • docker rm <コンテナID> でコンテナを削除します。
  • docker rmi <イメージID> でイメージを削除します。

使わなくなったコンテナやイメージは定期的に掃除しておかないと、ディスク容量が膨らんでしまうことがあります。

Docker Composeで複数コンテナを連携させる

実務では、複数のコンテナを同時に扱うことが多いです。

たとえば、Webサーバとデータベースを連携させたいケースを考えましょう。

このとき、Docker Composeを使うと設定を一括で管理し、起動や停止を簡単に行えます。

Docker Composeとは

Docker Composeは、複数のコンテナを定義するための設定ファイル(docker-compose.yml)と、起動・停止を一括管理するための仕組みです。

コンテナごとの環境変数やネットワーク設定をまとめて記述できるので、複数コンテナを手動でコマンドを打って起動する手間が省けます。

docker-compose.ymlのイメージ

最小限の例として、WebサーバとDBを同時に立ち上げるdocker-compose.ymlは以下のように書くことがあります。

version: "3"
services:
  web:
    image: nginx
    ports:
      - "80:80"
  db:
    image: mysql
    environment:
      - MYSQL_ROOT_PASSWORD=example

このファイルを用意し、docker compose up -d のように実行すれば、2つのコンテナが自動で起動し、相互に通信できる状態を作れます。

Docker DesktopにはDocker Composeが同梱されているため、追加インストールは不要なケースが多いです。

Windows特有の注意点やトラブルシュート

WindowsでDockerを使う場合、いくつか特有の注意点があります。

たとえば、ファイル共有の設定や仮想化設定の不備などです。

ファイル共有の設定

Docker Desktopでは、Windowsホストのフォルダをコンテナ内で使いたいときにファイル共有の許可設定が必要な場合があります。

共有したいドライブやフォルダに対して、Docker Desktopの設定画面で許可を与えることを忘れないようにしましょう。

仮想化設定が有効になっているか

WindowsのBIOS(UEFI)設定で仮想化が無効になっていると、Docker Desktopは正しく動作しないことがあります。

パソコンによっては既定で無効になっている場合もあるため、起動前にチェックしてください。

Docker Desktopがエラーを出して起動しない場合、まずは仮想化設定とWindowsのエディション、バージョンを確認しましょう。

コンテナを使うときのセキュリティ意識

DockerはOSのカーネルを共有する仕組みゆえ、セキュリティ面でも注意が必要です。

Dockerだから完全に安全というわけではありませんので、基本的な対策を把握しておきましょう。

不要なポートの公開を避ける

コンテナ起動時にポートをホスト側にマッピングすると、外部ネットワークからアクセス可能になります。

必要のないポートは公開しない、あるいは適切なファイアウォール設定を用いることが大切です。

信頼できるイメージを使用

Docker Hubなどには大量のイメージが公開されていますが、中にはセキュリティリスクのあるものもないとは言えません。

公式イメージや信頼できる組織が配布しているイメージを選ぶのがおすすめです。

もし自分でDockerfileからビルドする場合は、必要最小限のパッケージのみをインストールするように心がけるとよいでしょう。

ボリュームと永続化

コンテナは一時的なものとして設計されており、コンテナを削除するとその中のデータも消えてしまいます。

データベースなどをDockerで動かす場合は、ボリュームを使ってデータを永続化する仕組みを理解する必要があります。

ボリュームの基本

ボリュームはコンテナが消えても残るデータ領域で、ホストOSや外部ストレージに保存されます。

コンテナ再起動後も同じボリュームを紐付けることで、継続して同じデータを利用できます。

ボリュームの指定方法

Docker Composeを使うと、docker-compose.yml内でボリュームを定義し、servicesのセクションでマウントできます。

例として、MySQLのデータを永続化する際の書き方は以下のイメージです。

version: "3"
services:
  db:
    image: mysql
    volumes:
      - db_data:/var/lib/mysql
    environment:
      - MYSQL_ROOT_PASSWORD=example

volumes:
  db_data:

この設定により、コンテナを再作成してもデータが消えにくくなります。

イメージのビルドと運用の流れ

Dockerの運用は、基本的には「Dockerfileを作る → イメージをビルド → コンテナを実行」という流れになります。

Dockerfileの作成

ここでは簡単な例として、静的なWebページをNginxで配信するDockerfileを考えてみます。

FROM nginx
COPY ./html /usr/share/nginx/html

ローカルにhtmlフォルダがあり、そこにWebページのファイルを置いているとしましょう。

上記Dockerfileを使い、以下のようにコマンドを実行します。

docker build -t my-nginx .

これでmy-nginxというイメージが生成されます。

コンテナの実行と確認

続いて、生成したイメージからコンテナを起動します。

docker run -d -p 8080:80 my-nginx

ホストのポート8080へアクセスすると、コンテナ内のNginxサーバが返すページが表示されるはずです。

実務に活かすためのヒント

Dockerは単なる技術要素としてだけでなく、開発ワークフロー全体を効率化する手段としての役割があります。

例えば、テスト自動化やステージング環境の再現など、多岐にわたる活用が可能です。

チーム開発でのメリット

チーム開発では個々人が異なるOSを使っている場合があります。

Dockerを導入すると、実行環境を均一化できるため、OS依存のエラーを減らすことに役立ちます。

環境構築を新メンバーに説明する手間も少なくなるでしょう。

バージョン管理

Dockerfileやdocker-compose.ymlなどの設定ファイルは、ソースコードと同じバージョン管理システム(Gitなど)で管理できます。

設定ファイルに変更があれば、その差分をすぐに把握できますし、特定のバージョンに戻すことも容易です。

まとめ

Dockerは初心者にとってハードルが高そうに見えるかもしれません。

しかし、WindowsでDocker Desktopを使えば、比較的シンプルなステップでコンテナ技術を始められます。

イメージコンテナの仕組みを押さえ、基本的なコマンドとDocker Composeの使い方を理解するだけで、開発環境はもちろん、実務のさまざまなシーンで役立つはずです。

コンテナ技術をマスターすると、環境構築やチーム開発の効率が大きく向上し、スケールアウトや自動テストなど多角的にメリットを得られます。

もし途中で不安や疑問が出てきたら、小さなサンプルから繰り返しコンテナを動かして学んでみてください。

手を動かして感覚をつかむことが、Dockerをしっかり身につける最善の方法です。

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