インフラエンジニアとは?仕事内容・必要スキル・将来性をわかりやすく解説
はじめに
インフラエンジニアは、企業やサービスの土台となるサーバーやネットワークなどを設計・運用する役割を担います。
この職種がいなければ、ウェブサイトやアプリケーションが動作しないだけでなく、セキュリティリスクも増大し、ビジネスの継続性も損なわれるかもしれません。
ただし、インフラと聞くと「難しそう」「敷居が高い」と感じる方もいるのではないでしょうか。
サーバーやネットワーク、クラウドなどに触れることが多いため、専門的な用語や概念が多く並びがちです。
しかし実際には、必要な基礎を一つひとつ積み上げることで、未経験からでも習得可能な領域でもあります。
この記事では、インフラエンジニアとは何か、具体的な仕事内容や必要なスキル、将来性などを、初心者でも分かるように解説していきます。
技術要素だけでなく、「どんなキャリアの広がりがあるのか」「実際の業務例を踏まえるとどんな流れでインフラを構築するのか」といった内容もカバーします。
この記事を読むとわかること
- インフラエンジニアの基本的な定義と特徴
- サーバーやネットワークをはじめとした主な仕事内容
- 必要なスキルセットと基礎知識
- インフラエンジニアのキャリアパスと将来性
- 未経験からインフラエンジニアを目指す際のポイント
インフラエンジニアとは
インフラエンジニアとは、ITシステムの基盤を構築・運用・監視するエンジニアを指します。
インフラ(Infrastructure)という言葉は「基盤」「土台」を意味しますが、ITの世界ではサーバー、ネットワーク、ストレージ、クラウド環境などが該当します。
具体的には、物理サーバーをデータセンターに設置し、ネットワーク設定を行い、OSや必要なソフトウェアを導入・管理するといった作業が挙げられます。
近年では、クラウドサービス(AWS、Azure、Google Cloudなど)の活用が進んでおり、物理サーバーに触れる機会が減る場合もありますが、設定やチューニングの考え方は共通する部分が多いです。
インフラエンジニアは、システム全体の可用性・耐障害性・セキュリティを担保する役割を果たすため、企業のIT部門や開発プロジェクトにとって欠かせない存在といえるでしょう。
アプリケーションが正常に機能するための“土台”を作るのがインフラエンジニアの仕事です。
インフラエンジニアの主な仕事内容
インフラエンジニアの仕事は多岐にわたります。
大きく分けると、下記のような流れで業務を行うことが多いです。
設計
要件をヒアリングし、必要なサーバー構成やネットワーク構成、セキュリティポリシーなどを検討します。
構築
実際に環境を構築します。クラウドサービスを利用する場合もあれば、データセンターに物理サーバーを設置する場合もあります。
運用・監視
稼働したシステムの負荷状況や異常を検知する仕組みを整え、安定稼働をモニタリングします。障害が起きた場合は早急に対応し、影響を最小限に抑えます。
チューニング
サーバーのスペックやネットワーク設定を改善し、快適に動作するように調整します。例えば、アクセスが増加した場合に備えて、負荷分散(ロードバランサ)を導入するなどの施策を取ります。
これらを一度で完了するわけではなく、プロジェクトの成長や新規サービスの導入に合わせて継続的にアップデートするのが通常です。
ネットワークエンジニアとの違い
「インフラエンジニア」とほぼ同じ文脈で、「ネットワークエンジニア」という職種を目にすることがあるかもしれません。
両者は似ていますが、ネットワークエンジニアはルーターやスイッチ、ファイアウォールなどの機器を中心に、通信経路やトラフィック管理に特化している点が特徴です。
一方、インフラエンジニアはネットワーク分野も含みつつ、サーバーのOSレイヤーや仮想化・コンテナ技術、クラウド基盤、さらにはセキュリティや運用設計など、守備範囲が広いことが多いです。
特に小規模な組織では、インフラエンジニアがネットワークも含めてまとめて管理するケースがよくあります。
必要なスキルセット
OSの基礎
インフラエンジニアはLinuxやWindows ServerなどのOSを扱うシーンが多いため、OSの仕組みや基本的な操作方法は不可欠です。
例えば、Linux環境ならターミナルでのファイル操作やユーザー管理、パーミッション設定などを理解しておく必要があります。
また、サービスのデーモン管理やログの確認方法なども知っておくと、運用・監視に役立ちます。
高度なスキルとしては、カーネルレベルのチューニングやプロセス管理などがありますが、最初は基礎コマンドやディレクトリ構造を理解するところから始めると良いでしょう。
ネットワークの基礎
インフラエンジニアにとって、ネットワーク技術は欠かせません。
TCP/IPの基本原理、IPアドレスの割り当て方法、DNSやDHCPなどの主要プロトコルの概要は理解しておきたいところです。
さらに、L2スイッチ・L3スイッチといったネットワーク機器の役割、ルーティングの考え方、VPNの仕組みなども業務で直面するケースがあります。
ネットワーク関連の障害はサーバー障害と混同しやすいこともあるため、どこがボトルネックになっているかを判別できる基礎知識を持つことが重要です。
セキュリティ対策
セキュリティリスクは年々増大しており、インフラエンジニアには防御策の設計と運用が強く求められます。
ファイアウォールの設定やアクセス制御リストの管理、OSやミドルウェアのセキュリティパッチ適用などは基本中の基本です。
さらに、暗号化通信の設定(HTTPSやSSHなど)、侵入検知システム(IDS/IPS)の導入、クラウド環境ではセキュリティグループの設定など、守るべき領域は広範囲に及びます。
また、定期的な脆弱性診断や監査ログのチェックも、セキュリティ対策の一環として行われることが多いです。
仮想化とコンテナ技術
近年、多くの企業が仮想化技術を導入しています。
VMwareやHyper-Vなどのハイパーバイザーによる仮想マシンの運用はもちろん、DockerやKubernetesなどのコンテナ技術も一般的です。
これらを使うことで、環境を素早く構築・移行できるだけでなく、リソースを効率的に活用できるようになります。
特にKubernetesは、複数のコンテナをまとめて管理・オーケストレーションするための仕組みとして注目されており、規模の大きいサービスでは標準的に採用されています。
クラウドサービスの活用
AWS、Azure、Google Cloudなどのクラウドサービスを利用することで、オンプレミス(自社データセンター)を使わずにインフラを構築できるケースが増えています。
これらのサービスでは、コンピューティングリソース、ストレージ、ネットワーク、さらにはAIやビッグデータ解析などの機能を簡単に呼び出せる特徴があります。
インフラエンジニアとしては、それぞれのクラウドサービスが提供するコンポーネント(EC2やS3、Virtual Machines、Cloud Storageなど)の特性を理解し、要件に合った設計を行うスキルが求められます。
クラウド上でのセキュリティ設定やコスト管理も重要です。
実務例: Webサービスのインフラ構築
インフラエンジニアの仕事がどのように進むのか、Webサービス構築の例でイメージしやすいように説明します。
サーバー構築の流れ
Webサービスを運用する場合、まずWebサーバーとDBサーバーを用意するのが一般的です。
クラウド環境を使う場合、AWSのEC2インスタンスやAzureのVMなどを起動し、そこにOSをセットアップします。
例えばLinux上でApacheやNginxなどのWebサーバーを動かし、データベースにはMySQLやPostgreSQLなどを利用します。
必要に応じてロードバランサを設定し、サービス全体の稼働状況やアクセス負荷に対応できるように調整します。
以下のようなコマンドを使って、Webサーバー(例としてApache)をインストールするイメージです。
sudo apt-get update sudo apt-get install apache2 sudo systemctl start apache2 sudo systemctl enable apache2
このようにコマンドで環境をセットアップする場合もあれば、TerraformなどのIaC(Infrastructure as Code)ツールを使って構築を自動化する手法もあります。
ネットワーク設定の流れ
サーバーを構築しただけでは外部からアクセスできないので、ネットワーク関連の設定を行います。
クラウドの場合は、VPC(仮想ネットワーク)を作成し、サブネットを分割して各サーバーのプライベートIPを割り当てます。
外部からの通信はロードバランサやインターネットゲートウェイを介して流入させ、ファイアウォールやセキュリティグループでポートを制限します。
また、DNSレコードを登録して独自ドメインでアクセスできるようにする場合も多いです。
オンプレミスの場合も考え方は似ていますが、物理的にネットワーク機器を配線し、ルータやスイッチを設定しなければなりません。
この部分の設計を誤ると、サービスにアクセスできない、あるいは外部から不正アクセスが入りやすくなるなどのリスクがあります。
監視と運用の流れ
インフラエンジニアの大きな仕事の一つが、監視と運用です。
サーバーが落ちたり、ネットワークが途切れたりした場合、サービス自体が止まる可能性があります。
そこで、監視ツールやクラウドのモニタリング機能を活用し、CPU負荷やメモリ使用量、ディスク容量、通信トラフィックなどを常に観察します。
異常が発生したら即座にアラートを受け取り、原因を追究して対策を行います。
さらに、セキュリティ的な監視も重要です。
不正ログインや攻撃が疑われる通信があればログを調べて必要な対策を取り、継続的に強固な状態を保つようにします。
インフラエンジニアの将来性
IT業界ではサービスの多様化・高度化が進んでおり、それに伴いインフラエンジニアの需要は高まり続けています。
クラウド技術の普及によって「物理サーバーを触る機会が減るのでは」と考える方もいるかもしれませんが、むしろクラウドを含む新たな基盤技術を活用できる人材は重宝される傾向にあります。
また、セキュリティリスクが増加していることから、インフラレベルでの防御策を設計・運用できるエンジニアの価値は依然として高いです。
自動化やコンテナオーケストレーションなどの最新技術を取り入れながら、全体のアーキテクチャを俯瞰できる能力がある人材は、今後ますます求められるでしょう。
クラウドネイティブな環境が当たり前になるにつれ、インフラエンジニアの役割は「物理サーバーの管理」から「多様なサービスを組み合わせてインフラを最適化する」方向に変化してきています。
未経験からインフラエンジニアになるには
未経験からインフラエンジニアを目指す場合は、まずサーバーやネットワークの基礎を学ぶのがおすすめです。
コマンドライン操作やTCP/IPの基本、主要なサーバーソフトウェアの概念を一通り押さえることで、業務内容がイメージしやすくなります。
クラウドサービスの無料枠を活用して、自分で仮想マシンを立ち上げてみるのも良い方法です。
Webサーバーを立ち上げてテストページを表示したり、ファイアウォールを設定して外部からのアクセスをコントロールしたりする過程で、理論と実践の両方を身につけることができます。
また、インフラエンジニアはチームでのコミュニケーションも重要です。
設定変更や構成の切り替えなどがサービス全体に影響する可能性があるので、変更内容やリスクを周囲に分かりやすく説明できるスキルも求められます。
インフラエンジニアのキャリアパスとやりがい
インフラエンジニアのキャリアパスは人それぞれですが、大まかには下記のような道が考えられます。
スペシャリストとしての道
特定の技術領域(ネットワーク、クラウド、セキュリティなど)を深掘りし、エキスパートとして活躍するケースです。大規模システムの設計や高度なトラブルシュートを担うことが多くなります。
ジェネラリストとしての道
開発や運用など幅広い知識を身につけ、DevOpsエンジニアやSRE(Site Reliability Engineer)のようにシステム全体を見渡すポジションへ進むケースもあります。継続的デリバリーやサービス品質向上のための取り組みに主眼を置くことが増えます。
マネジメントへの道
プロジェクトの進行管理やチームマネジメントを担当する道もあります。エンジニアの育成や、経営陣と現場の橋渡し役としての立場を担うことが増えていくでしょう。
やりがいとしては、ビジネスを根幹から支える部分に携われることが大きいです。
例えば、大型サービスのリリースに間に合わせてインフラを整備し、無事に運用が始まったときの達成感は大きいと感じる方が多いです。
インフラエンジニアがよくある悩み
インフラエンジニアとして働く中では、以下のような悩みに直面するケースがあります。
業務の拘束時間が長くなる場合がある
24時間365日の運用が求められる現場では、障害対応で休日や夜間に呼び出されることもあります。
技術の変化が速い
クラウドやコンテナ技術など、新しいサービスやツールが次々と登場します。学び続ける姿勢が必要です。
責任が重い
システムダウンは企業の信頼を損ない、売上にも影響を与える可能性があります。そのプレッシャーを感じることも多いでしょう。
重要なシステムのインフラ障害は、企業の信頼や業務に大きなダメージをもたらします。障害対策の運用ルールや復旧手順をしっかり決めておかないと、現場が混乱しやすくなるので注意が必要です。
ただし、こうした悩みはチーム体制や社内ルールの整備によって緩和できます。
また、自動化ツールの導入により、夜間対応の頻度や運用負荷を減らすことも可能です。
まとめ
インフラエンジニアとは、ITシステムやサービスの基盤を支える要となる存在です。
サーバー・ネットワークの設計、クラウド基盤の運用、セキュリティ対策など多岐にわたる業務を担当し、ビジネスを根本から支えます。
初心者の方は「難しそう」「どこから手をつければいいのか分からない」と感じるかもしれません。
しかし、OSやネットワーク、クラウドの基礎を少しずつ積み上げれば、未経験からでも着実にステップアップしていけるでしょう。
インフラエンジニアはキャリアの幅が広く、技術を究める道もあれば、運用自動化やSREなどの新たな分野へ進む道もあります。
企業にとって価値の高い職種であり、将来性も十分に期待できるでしょう。
もし皆さんが「IT基盤の裏側を支えてみたい」「サーバーやネットワークを自在に扱えるようになりたい」と考えているなら、インフラエンジニアはやりがいのある選択肢の一つです。
少しでも興味を持ったのであれば、まずは身近なところからサーバーを立ち上げたり、クラウドの無料枠を使ったりして、インフラ構築を体験してみると良いかもしれません。
地道な取り組みを積み重ねることで、サービスを安定稼働させるエンジニアとしての道が開けていくでしょう。