Gitとは?初心者でもわかる基本概念と導入方法
皆さんは、ソフトウェア開発やチームでのファイル管理をする際に「ファイルの変更履歴を追跡したい」と考えたことはありませんか?
そこで登場するのが Git です。
Gitは、プログラミング初心者にとって「よく聞くけれどよくわからない」ツールかもしれません。
しかし、テキストファイルを扱うプロジェクトであれば幅広く活用できます。
多くの企業や開発者が採用しており、しかも無料で使うことができます。
最新バージョンの Git 2.42.0 を前提に、基本概念から導入方法までを解説します。
「どうやって導入したらいいの?」といった疑問を持つ方でも理解できるように進めていきます。
Gitの特徴
Gitには、以前まで主流だった集中型バージョン管理システムとは異なる特色があります。
ここでは、分散型バージョン管理システムのメリットを含めて説明します。
わかりやすい言葉を使いながら実務での活用シーンもイメージしてみましょう。
分散型バージョン管理システムとは
分散型バージョン管理システムとは、自分のPC(ローカル環境)にプロジェクト全体の履歴を保存できる仕組みのことです。
集中型であればサーバーにしか履歴がありませんが、Gitでは各開発者がローカルにデータを持ちます。
そのため、ネットワークが不安定な状況でも履歴を確認したり、変更内容を比較することができます。
また、一度コミットを行えば、自分のPCの中で履歴が保管されるのでサーバーから切り離された状態でも作業しやすくなるのが利点です。
大きなプロジェクトではブランチという機能がよく使われますが、分散型の構造なのでブランチの切り替えも軽快に行えます。
自宅やカフェなどのネット環境が限られた場所で作業する方には便利な仕組みではないでしょうか。
実務での活用シーン
実務の現場では、単独開発はもちろん、チーム開発にもGitはよく使われます。
たとえば、Webサービスの新機能を試すときはブランチを作成してコードを編集し、問題なく動作すればメインのブランチに統合します。
もし不具合が発生しても、コミット履歴から過去の状態に戻せるのでトラブルシューティングがスムーズになります。
また、ドキュメントやデザインデータのバージョン管理にも応用できます。
ドキュメントを頻繁に更新するプロジェクトでは、変更履歴の比較や巻き戻しをすることが多いです。
そういったときにGitがあれば、いつ、誰が、どのファイルをどのように変えたかを素早く把握できます。
Gitを使い始める準備
ここからは、Gitを使い始める上での導入準備を説明します。
基本的なインストールの流れとリポジトリの作成方法を中心に見ていきます。
初心者の方が最初につまずかないよう、なるべく具体的に書いていきます。
Gitのインストール方法
WindowsやmacOSなど、OSによってインストール手順は多少変わります。
しかし、基本は公式サイトからダウンロードしてインストーラーを実行するだけです。
Linux系OSの場合はパッケージマネージャーを使ってインストールすることが多いです。
インストール後はターミナルやコマンドプロンプトを開き、下記のようにバージョンを確認してみてください。
git --version
上記のように表示されれば、基本的なセットアップは終わりです。
会社の業務PCに導入する場合は管理者権限が必要なこともあるため、管理者に相談することをおすすめします。
リポジトリを作成する
Gitを使うには、まず リポジトリ と呼ばれる変更履歴を管理する空間を用意します。
ここではローカルリポジトリとリモートリポジトリの2つを押さえておきましょう。
ローカルリポジトリの作成
任意のディレクトリに移動したうえで以下のコマンドを実行すると、そこでバージョン管理が始まります。
git init
このコマンドを実行すると、.git
という隠しフォルダが作成されます。
このフォルダの中でGitが変更履歴などを管理します。
ファイルを作成し、下記のようにコミットするところまでやってみると操作感がつかみやすいです。
echo "Hello Git" > sample.txt git add sample.txt git commit -m "Initial commit"
これで、sample.txtを初めてGitに記録しました。
あとは変更を加えるたびに git add .
や git commit -m "some message"
などのコマンドを実行して履歴を積み重ねていきます。
リモートリポジトリとの連携
大勢で作業するときは、GitHubやGitLabなどのホスティングサービス上にリモートリポジトリを用意します。
ローカルリポジトリからリモートに変更を送信する場合は、以下のようにリモートリポジトリを登録します。
git remote add origin <リモートリポジトリのURL> git push -u origin main
ここで origin
はリモートの名前としてよく使われる例です。
main
はメインブランチの名称になります。
この作業を行うことで、自分のPCからリモートリポジトリへ最新の変更内容をプッシュできるようになります。
チームメンバーはプル(pull)コマンドでリモートリポジトリから変更を取得し、共有しながら作業を進めます。
Gitの基本的な操作
Gitはコミットやブランチ操作など、いくつかの基本コマンドを覚えるだけで日常的な作業を十分にこなせます。
ここでは、よく使われる操作を順番に紹介します。
コミット
コミット は「変更履歴を確定して保存する」イメージです。
ファイルを編集したら、まず git add <ファイル名>
でステージングし、その後に git commit -m "メッセージ"
を行います。
複数ファイルを一度に追加したいなら git add .
が便利です。
コミットメッセージには「何を変更したのか」を端的に書くと、あとで履歴を見返すときに助かります。
また、コミットを小まめに行っておくと、過去の状態へ戻したり差分を見たりするのが楽になります。
ブランチ
ブランチ は、メインの作業ラインから枝分かれして独自の変更を加える仕組みです。
新機能の開発や実験的なコードを試したいときに便利です。
ブランチを使うとメインコードを汚さずに進められるため、チーム開発では必須の概念です。
新規ブランチの作成
以下のコマンドで新しくブランチを作成できます。
git branch feature-login
feature-login
はブランチ名の例です。
続けてブランチを切り替えるためには、次のコマンドを実行します。
git checkout feature-login
Gitのバージョンによっては、git switch
コマンドを使うこともできます。
git switch feature-login
この切り替えにより、現在の作業ブランチが feature-login
になりました。
ブランチの切り替え
別のブランチへ戻るには再び checkout
や switch
コマンドを使います。
git checkout main
これでメインブランチに戻った状態です。
切り替え時点で未コミットの変更がある場合、コンフリクトを避けるためにコミットやスタッシュをしてから移動することが推奨されます。
マージ
ブランチ上での開発が完了したら、メインブランチに統合するために マージ を行います。
マージしたいブランチに切り替えて以下のようにコマンドを打ちます。
git checkout main git merge feature-login
衝突(コンフリクト)があれば解消作業が必要です。
コンフリクトは別々のブランチで同じ行を修正した場合などに起こるもので、Gitはどちらの変更を採用すべきか判断できません。
そのため、テキストエディタ上で意図どおりに修正し直してから再度コミットすると解消されます。
Gitがなぜ便利なのか
Gitの操作方法を学んでみると「多くのコマンドを覚えなきゃいけないのでは」と不安になりがちです。
しかし、慣れるとわずかなコマンドでバージョン管理ができるようになります。
さらに、Gitを採用するメリットは大きいです。
バージョン管理のメリット
Gitを使うと、ファイルの変更履歴がひと目でわかります。
特定のコミットに戻ってコードを確認したり、「いつ不具合が混入したのか」を探すことも容易です。
作業中に間違ってファイルを削除してしまっても、コミット履歴から以前の状態を取り戻せる場合があります。
同じファイルを何度もコピーして命名規則で混乱するより、Gitで履歴を管理したほうがシンプルという声も多いです。
さらに、ブランチによる作業分岐があるおかげで、複数の作業ラインを同時進行しやすくなります。
チーム開発での利点
メンバーが増えると、誰がどの機能を担当しているか追うのが難しくなります。
Gitであれば、各メンバーが自分のブランチで開発を進めて、タイミングを見計らってメインブランチに統合できます。
変更内容が衝突しても、コミットの履歴を見ながら差分を解決できます。
また、リモートリポジトリを利用することで、離れた場所にいるメンバーとも最新のソースコードを簡単に共有できます。
メインブランチが安定していれば、本番環境へのデプロイはメインブランチのコードをベースに行いやすくなるわけです。
コミット履歴を追ってバグ修正の箇所を特定するのも容易になるため、実務においては必須と言える管理手法として広く定着しています。
実務での活用事例
ここではもう少し具体的な実務風景をイメージしてみましょう。
チームが5人だとして、それぞれが自分の機能ブランチを持ちます。
コミットを積みながら機能開発を続け、テストが終わったらメインブランチへマージを申請します。
この流れを繰り返すことで開発が同時並行でも破綻しにくくなるのです。
Webエンジニアでなくても、ドキュメント担当やデザイナーがGitを用いる場面もあります。
たとえばデザインデータのバージョン管理を行い、差分を確認できるツールと連携して履歴を可視化する方法も考えられます。
Gitに慣れてしまえば、ファイル管理に悩む機会が減って、プロジェクト全体の効率が上がりやすくなるでしょう。
Git運用で気をつけたいポイント
Gitは便利ですが、運用中に意識しておくと良いポイントがあります。
チームで使うときに混乱しにくい運用ルールを決めておくとトラブルを減らせます。
コミットメッセージの書き方
コミットメッセージは他の開発者が読んでも内容を把握しやすいようにするのが理想です。
たとえば「Fix bug #123」や「Add user login feature」のように、何をしたかが伝わるメッセージを意識すると後から見返しやすくなります。
逆に「Change files」といった曖昧なメッセージばかりだと、過去の変更を振り返るときに困ることがあります。
定期的なプッシュとプル
ローカルでコミットを積んでいるだけでは、他のメンバーに変更が共有されません。
定期的にプッシュして変更をリモートリポジトリと同期しましょう。
また、他のメンバーの変更を取り込むためにプルすることも忘れないようにしてください。
短いスパンでプッシュやプルを行うほど、コンフリクト発生時に解消しやすくなります。
コンフリクトを恐れない
コンフリクトに直面すると戸惑うことがあります。
しかし、それは同じファイルの同じ行を複数人が同時に変えたために起きる自然な現象です。
解消するときは競合箇所をテキストエディタで修正し、再コミットすれば完了します。
チームで話し合って「どちらの変更を優先するか」を決めればスムーズです。
よくある質問
ここでは、初心者が最初に抱きがちな質問を取り上げます。
これからGitを使うときの参考にしてみてください。
GitとGitHubは同じもの?
Gitはソフトウェアです。
GitHubはGitを使ってホスティングを行うサービスです。
自分のPCだけでGitを使うこともできますが、チーム開発や共同作業を行うならリモートリポジトリが便利です。
GitHubはリモートリポジトリをオンラインで管理する代表的なサービスというだけであり、Git本体そのものではありません。
バージョン管理って何が便利?
ファイルの履歴を追える、変更を後から振り返られる、複数人で同時に編集しても合流しやすいという利点があります。
個人開発でも「変更点をテキストで管理」できるため、時間が経ってから「あの時点の状態に戻したい」という場面で役立ちます。
MacのFinderやWindowsのエクスプローラーで管理しちゃダメなの?
管理自体はできますが、履歴を手動で記録していくのは大変です。
Gitでは自動的に変更点を追跡し、操作ミスが起きてもコミット履歴を通じて復元しやすいという強みがあります。
手動でフォルダをコピーし続けるよりは効率が高いでしょう。
まとめ
ここまで Gitとは何か という基本から導入、実務での活用シーンまでを解説しました。
Gitは複雑に見えても、最初に押さえるコマンドは「init」「add」「commit」「push」「pull」「branch」「merge」など限られたものです。
慣れてきたらブランチを活用して同時並行開発を行い、コミット履歴を有効活用していきましょう。
実務でも個人でも、ファイルの履歴管理が必要であればGitは大いに助けになってくれます。
チームの中で「こういうルールでコミットメッセージを残す」などの方針を決めておくと、後から履歴を参照するときに混乱が少なくなります。
バージョン管理ツールとしてのGitをうまく使いこなすことで、開発の効率や品質の向上が期待できます。
試行錯誤しながらでも、まずはGitを導入してみると良いでしょう。