Angular Materialとは?初心者でもわかりやすいUI構築の基本
Angular Materialとは何か
Angularでアプリケーションを作るときに、見た目をどう整えたらいいか悩むことはないでしょうか。 CSSを一から書くのは負担が大きいですし、デザインの一貫性を保つのも難しいかもしれません。
そこで役に立つのが Angular Material です。 これはGoogleが提唱するMaterial Designに沿ったUIコンポーネントライブラリで、Angular向けに最適化されています。
Angular Materialを使うと、ボタンやフォームといったUI部品があらかじめ用意されており、統一感のあるデザインを簡単に作ることができます。 開発者がCSSまわりの細かい調整にかける時間を減らし、機能開発に集中しやすくなるのが大きなメリットです。
最新バージョンでは、Angularの更新にあわせてコンポーネントがアップデートされており、より便利な機能が追加されています。 見た目のカスタマイズもしやすく、企業向けのアプリケーションでも活用される場面が増えています。
たとえば、内部管理システムのように大量のフォームやテーブルを扱うシーンでは、Angular Materialのコンポーネントが重宝されるでしょう。 初めてAngularを学ぶ人にとっても、UIの作り込みに時間がかからないので、学習のハードルが下がるかもしれません。
こうした特長から、企業のWebアプリケーション開発や個人の学習用プロジェクトなど、多岐にわたる用途で利用されています。 では、次に導入手順や具体的な使用方法を見ていきたいと思います。
導入手順と基本的な使い方
Angular Materialを導入するためには、Angular CLIがインストールされている状態が必要です。 一般的にNode.jsとnpm、そしてAngular CLIをグローバルにインストールしておけば準備は整うでしょう。
Angular CLIで新しいプロジェクトを作成したあと、以下のコマンドを実行すると簡単にAngular Materialを導入できます。
ng add @angular/material
このコマンドを実行すると、プロジェクトに必要な依存関係や設定が自動で追加されます。 また、テーマの選択や必要なモジュールのインポート設定もガイドに沿って行えます。
インストールが終わったら、app.module.ts
などのモジュールにコンポーネント用のモジュールをインポートします。
たとえばボタンコンポーネントを使いたい場合は、MatButtonModule
をimports
に追加します。
import { BrowserModule } from '@angular/platform-browser'; import { NgModule } from '@angular/core'; import { AppComponent } from './app.component'; import { MatButtonModule } from '@angular/material/button'; @NgModule({ declarations: [ AppComponent ], imports: [ BrowserModule, MatButtonModule ], providers: [], bootstrap: [AppComponent] }) export class AppModule { }
このように設定すると、HTMLテンプレートで <button mat-raised-button>
のような記述が可能になります。
CSSを細かく書かなくても、まとまったデザインのボタンがすぐに表示できる点はとても便利ではないでしょうか。
また、フォントやアイコンなどの追加設定も行っておくと、より完成度の高いUIが用意できます。
テーマの切り替えも簡単で、angular.json
やSCSSファイルでカラーパレットを調整することで自分好みの見た目に仕上げられます。
このように導入自体はシンプルです。 ただし、プロジェクトの要件に合わせて必要なモジュールを選択し、細やかなデザイン調整を行うことがポイントです。
実務での活用シーン
Angular Materialは、多くの企業が使う管理画面やSaaSアプリケーションで利用されることが多いです。 フォームを多く含む会員登録フローや、検索機能があるリストページなど、コーポレート向けのWebアプリにマッチしやすい印象があります。
また、スタートアップ企業がプロトタイプを素早く作りたい場合にも、Angular Materialは使いやすいでしょう。 ゼロからデザインを考えるよりも、既存のコンポーネントを組み合わせる方が効率的だからです。
大規模開発においても、コンポーネントが統一されていると、チームメンバー間でデザインのブレが生じにくくなります。 コードレビューの際にも「見た目に関する指摘」が減りやすいので、機能面に集中できるのではないでしょうか。
さらに、AngularはTypeScriptベースで記述されるため、型定義がしっかりしている環境でUI部品を扱える点も安心です。 チーム開発で利用すると、メンバー間の連携がスムーズになります。
もちろん、社内ツールに限らず、ユーザー向けのサービスでもAngular Materialは活用できます。 ただし、場合によってはデフォルトのMaterial Designがユーザーのイメージに合わないこともあるので、カスタマイズの範囲を見極めながら使っていきましょう。
こうした実務のシーンにおいては、AngularとAngular Materialの組み合わせがもたらす開発効率の高さが大きな利点といえます。 次のセクションでは具体的なコンポーネントの例を取り上げてみます。
代表的なコンポーネントの活用例
Angular Materialには多くのコンポーネントが用意されています。 ここでは代表的なものをいくつか紹介してみます。
ボタンコンポーネント (MatButtonModule)
ボタンはWebアプリで頻繁に使われる要素です。
Angular Materialの場合、MatButtonModule
をインポートしておくと、次のようにHTMLテンプレートで書くことができます。
<button mat-raised-button color="primary"> 送信する </button>
mat-raised-button
というディレクティブを指定するだけで、立体的なボタンが表示されます。
color="primary"
を付与すると、テーマで定義された色を適用できます。
フォームコンポーネント (MatFormFieldModule, MatInputModule)
フォーム入力まわりでは、mat-form-field
と mat-label
、mat-input
を組み合わせると便利です。
入力欄の下線やラベルのアニメーションが自動で適用され、デフォルトでも見やすいフォームが完成します。
<mat-form-field appearance="fill"> <mat-label>ユーザー名</mat-label> <input matInput placeholder="ユーザー名を入力してください" /> </mat-form-field>
appearance="fill"
をつけると、背景が塗りつぶされたデザインとなります。
他にも outline
や standard
など、見た目のバリエーションがいくつか用意されています。
テーブルコンポーネント (MatTableModule)
テーブルレイアウトを使う場合、<table>
タグを素で書くよりもAngular Materialの MatTableModule
を使った方が便利なことがあります。
ソート機能やページネーション機能と組み合わせることで、エンタープライズ向けのアプリケーションでも扱いやすいテーブルが実装しやすくなります。
<table mat-table [dataSource]="dataSource"> <ng-container matColumnDef="position"> <th mat-header-cell *matHeaderCellDef> No. </th> <td mat-cell *matCellDef="let element"> {{ element.position }} </td> </ng-container> <ng-container matColumnDef="name"> <th mat-header-cell *matHeaderCellDef> 名前 </th> <td mat-cell *matCellDef="let element"> {{ element.name }} </td> </ng-container> <tr mat-header-row *matHeaderRowDef="displayedColumns"></tr> <tr mat-row *matRowDef="let row; columns: displayedColumns;"></tr> </table>
このように、matColumnDef
で列を定義し、matHeaderCellDef
とmatCellDef
でヘッダーとセルを指定します。
さらにソートやフィルター機能を追加すると、ビジネスアプリケーションに適したテーブルが仕上がります。
デザインカスタマイズの考え方
Angular Materialは、標準でMaterial Designのルック&フィールが適用されます。 ただ、プロジェクトによってはブランドカラーやレイアウトルールを独自に設定したいケースがあるかもしれません。
その場合、SCSSやCSS変数などを活用してカスタマイズすることになります。 たとえば配色の設定は、Angular Materialが提供するテーマ設定を拡張する形で行います。
_theme.scss
のようなSCSSファイルを用意し、そこにプライマリカラーやアクセントカラーなどを定義できます。
angular.json
でスタイルシートとして登録しておけば、プロジェクト全体で新しいテーマを適用できます。
一方で、細部までデザインを変えすぎると、Material Designらしさが失われてしまう恐れもあります。 大枠でMaterial Designを利用しつつ、必要な部分だけを調整するバランスが大切です。
テーマの切り替えは同一プロジェクト内でも複数定義できます。ダークテーマとライトテーマを用意するなど、ユーザーが選択しやすい設計をすることも可能です。
こうしたテーマ設定をうまく使うことで、ブランドに合わせた見た目を保ちつつ、Angular Materialが提供する豊富なコンポーネントを活かすことができます。
アプリケーション構築時のポイント
Angular Materialを使ってアプリを構築するとき、コンポーネントの選定は重要です。 機能が増えてくるとモジュールのインポート数が多くなるため、不要なモジュールを取り込みすぎるとパフォーマンスに影響を与えることがあります。
そのため、最初の段階では必要最低限のモジュールだけをインポートし、アプリの成長にあわせて追加していくほうがよいでしょう。 また、Lazy Loadingを使うと、大規模なアプリでも読み込みを効率化できます。
コンポーネントを独自に拡張する場合は、Angularの機能であるカスタムディレクティブやサービスとの組み合わせを検討するとよいかもしれません。 フォームバリデーションをサービス化したり、共通関数をユーティリティとしてまとめたりすることで、コードの見通しが良くなります。
チーム開発では、Angular Materialの使い方や色の指定方法をガイドライン化するのがおすすめです。モジュールの追加やテーマ設定のルールをドキュメント化すると、デザインの一貫性が保たれます。
また、実務ではユーザーのアクセシビリティ(読み上げ対応やコントラスト比の確保)にも配慮したいところです。 Angular Materialのコンポーネントには、標準でアクセシビリティを考慮した設計が多いので、活用しやすいと考えられます。
まとめ
今回は Angular Material の基本的な特徴や導入手順、具体的なコンポーネントの例などを紹介しました。 初心者の方がAngularでUIを作るとき、デザイン面で苦労することを少なくできるのは大きな利点ですね。
実務では、社内ツールやダッシュボード、サービスの管理画面など、さまざまな場面で利用されています。 Material Designによる統一感が手軽に得られるので、チームでの開発にも適しています。
さらに、コンポーネントの幅広さやテーマのカスタマイズ性があるので、企業向けでも柔軟に対応が可能です。 機能の追加や拡張がしやすい仕組みになっているのもAngular Materialの魅力といえるでしょう。
ただ、初期設定で提供されるデザインを大きく変更するときは、独自のスタイル管理が必要になります。 そこをうまく調整することで、アプリケーションの個性とMaterial Designの利便性を両立させられます。
以上を踏まえると、Angular MaterialはAngularでの開発を進めるうえで便利な選択肢の一つではないでしょうか。 興味がある方は、まずは小規模プロジェクトで試してみると、その利点を実感しやすいかもしれません。