React Lazyを使ったコード分割の基礎と活用方法
はじめに
Reactを使ってアプリケーションを作るとき、画面遷移がスムーズに行われるかどうかが気になる方は多いのではないでしょうか。 とくに機能が増えてくると、アプリの読み込みが重くなりやすくなります。 そのような問題を解決する手段として、React Lazy が存在します。 コード分割を活用できるようになると、ユーザー体験を損なうことなく効率的なパフォーマンスが実現しやすくなります。 今回は、初心者の方でも理解しやすいようにReact Lazyの基礎的な概念や実務での活用シーンまでお伝えしたいと思います。
ところで、Reactでパフォーマンスを最適化する方法はいくつもありますが、最初に学ぶべきなのがこのLazy機能かもしれません。 複雑な設定をほぼ必要とせず、直感的に使えるメリットがあるからです。 しかし、何となくファイルを分割すれば良いというわけでもなく、React特有の考え方を知っておくことが欠かせません。
このように、React Lazyは性能向上につながる便利な仕組みですが、意図せずエラーが発生して画面が真っ白になるといったトラブルも起きやすいです。 そこで、仕組みや注意すべきポイントを押さえておきたいですね。 実務で役立つ具体例を交えながら、一緒にReact Lazyを使いこなす方法を学んでいきましょう。
この記事を読むとわかること
- React Lazy の基本的な考え方と仕組み
- 実際のコード例を通じた具体的な使用方法
- Lazyロードが実務でどのようなシーンで役立つか
- 注意点やエラー発生時の対処の考え方
React Lazyとは何か
React Lazyとは、Reactの機能のひとつで、コンポーネントを必要なときにだけ読み込む形でコードを分割する手段を提供するものです。 大きなReactアプリケーションでは、すべてのコンポーネントを一括で読み込むとファイルサイズがかなり大きくなってしまいます。 そうなると、ユーザーがサイトやアプリを開いた瞬間の読み込み時間が長引いてしまうわけですね。
しかし、すべてが一度に読み込まれているわけではないとしたらどうでしょう。 ユーザーがまだアクセスしていない画面のコードは、最初の段階では取得しないようにすれば、初回ロードを軽くできます。 この「今使う部分だけをロードする」という考え方が、Lazyロードの根幹にあるわけです。
React Lazyを活用すれば、遅延読み込みが簡単に実現できます。 コンポーネントをあらかじめ分割し、そのコンポーネントが必要になった時点でロードすればいいのです。 こうすることで、アプリケーションのパフォーマンスが向上しやすくなるでしょう。
React Lazyの仕組み
React Lazyの仕組みは、コンポーネントを非同期でインポートする という考え方に基づいています。 非同期インポートが呼び出されると、その瞬間に必要なコードだけをサーバーから取得します。 通常のインポート文だとアプリ起動時にすべて読み込むため、初回ロードが大きくなりがちです。
一方で、Lazyを使った書き方では React.lazy(() => import("./SomeComponent"))
のように宣言します。
これによってコンポーネントを読み込む処理を分割し、そのコンポーネントにアクセスしたタイミングで取りに行く仕組みです。
ユーザーが当該コンポーネントを利用しなければ、実質的にそのコードを永遠にロードしないで済むことさえあります。
ただし、Lazyロードを使う場合は、同時に Suspense
という機能を使わないと画面にエラーが出てしまうことがあります。
Suspenseは、Lazyロードのような非同期処理を行うコンポーネントを抱える領域に対して、「まだ読み込みが終わっていない時はどう表示するか」を指定できる仕組みです。
このセットで構成するのが基本パターンになると考えておくと良いでしょう。
React Lazyを使うメリット
React Lazyを使う最大のメリットは、ファイルサイズの軽減が期待できる点にあります。 ページ遷移ごとに必要なコードだけをロードするので、初回の読み込みが速くなる可能性があります。 利用者はサイトを開くまでの待ち時間が短くなるため、離脱率の低下に寄与するかもしれません。
また、Lazyロード自体の仕組みはそれほど複雑ではないため、初学者でも導入しやすいのが大きな魅力です。 あらかじめアプリケーションの構成を考え、一部のコンポーネントはLazyロードに切り替えておくと、後から拡張する際にも柔軟に対応できます。 たとえば、複数の画面を持つSPA(Single Page Application)を作る場合、画面ごとにLazy化することでロード時間を分散できます。
さらに、必要なときだけ必要なコードを取得できるため、メモリ負荷の面でも有利かもしれません。 特に、画像や動画、あるいは大規模なライブラリを含むコンポーネントなどを一括で読み込むと、メモリの使用量が増えがちです。 Lazyロードなら、ユーザーが実際にその機能にアクセスするまでは読み込まないので、アプリの起動直後の負担を減らせる可能性があります。
React Lazyの基本的な使い方
React Lazyを使うには、あらかじめ分割したいコンポーネントをモジュールとして用意しておく必要があります。
例えば、DetailPage.js
というファイルにDetailPageコンポーネントを定義しているケースを考えてみましょう。
通常は import DetailPage from "./DetailPage";
のように書きますが、Lazyロードにする場合は以下のように書き換えます。
import React, { lazy, Suspense } from "react"; // Lazyロードしたいコンポーネントを非同期インポート const DetailPage = lazy(() => import("./DetailPage")); function App() { return ( <div> <Suspense fallback={<div>Loading...</div>}> <DetailPage /> </Suspense> </div> ); } export default App;
lazy(() => import("./DetailPage"))
という形に変えることで、DetailPageコンポーネントは必要になった時点で読み込まれるようになります。
ただし、Lazyロードを行うときは必ず Suspense
によるラッピングが必要です。
上記の例では、読み込み中に表示される代替UIとして <div>Loading...</div>
を指定しています。
この構造を見てわかるように、React LazyとSuspenseはセットで使うイメージを持っておくと良いでしょう。 もしSuspenseで包まずにLazyコンポーネントをそのまま描画しようとすると、エラーが起きてしまうことがあります。 コード分割を導入した直後に画面が真っ白になる事態を防ぐためにも、基本構造はしっかり押さえておきましょう。
SuspenseとReact Lazyの連携
ここまで読んでみると、React Lazyはコンポーネントの遅延読み込み、Suspenseは「まだ読み込みが終わっていない状態」をどう扱うかを管理する仕組みだとイメージできるのではないでしょうか。 言い換えれば、React LazyとSuspenseがあるからこそ、コード分割を行いながらもエラーのない画面描画が実現できるわけです。
具体的には、Lazyで宣言したコンポーネントが読み込まれていないタイミングでは、Suspenseのfallbackに記載した要素が表示されます。 処理が完了したら、自動的に本来のコンポーネントが差し替わる仕組みです。 これによってユーザーは読み込み中であることを理解しやすくなり、突然のフリーズや空白画面のまま放置されるリスクを下げることができます。
また、Suspenseをどう配置するかも重要です。 アプリ全体を1つのSuspenseで囲む場合は、全画面に大きく読み込み表示を出すスタイルになります。 一方で、部分的に複数のSuspenseを設置すれば、読み込みが完了した箇所だけ順次表示し、ほかの箇所は引き続きローディングのUIを出すといった表現も可能です。 こうした制御によって、ユーザー体験が向上する可能性があります。
実務でReact Lazyを活用する場面
実務では、画面遷移が多いSPAや、コンテンツ量の多いダッシュボードなどでReact Lazyはよく役立ちます。 例えば、ユーザーのアカウント設定画面など、常にアクセスされるわけではないコンテンツは、Lazyロードしておくと起動時の負荷を抑えやすいでしょう。 また、管理画面のように多種多様な機能を持ち、ユーザーごとに異なる操作をする場合にも、特定の機能にアクセスしたときだけロードするようにできます。
ECサイトのように商品詳細ページやカートページなど、複数の独立した画面を持つアプリケーションでも活用するチャンスが多いです。 たとえば、トップページだけは通常のインポートを使い、そのほかの詳細ページや管理画面はLazyロードとすることで、ユーザーが最初に訪れるページの読み込みを軽くするわけですね。 こうした工夫を積み重ねることで、ユーザーが求める情報をすぐに得られるようになり、サイトやアプリへの評価が上がる可能性があります。
さらに、画像や動画を扱う場面でも、メインコンテンツに必要のない部分をLazyロードすることがあります。 たとえば、プレビュー用の画像だけは先に表示しておいて、拡大表示などの詳細機能はLazyロードされるコンポーネントで制御するといった使い分けです。 このように、React LazyとSuspenseを使いこなすと、設計の幅が広がることを実感できるでしょう。
React Lazyを導入する際の注意点
React Lazyは便利ですが、いくつか注意点もあります。 まず、Lazyで分割したコンポーネントが多すぎると、管理が煩雑になる可能性があるという点です。 基本的には、ある程度アクセスされる見込みが低いコンポーネントや、容量が大きなコンポーネントを優先的にLazyロードするのが効果的だと考えられます。
次に、Lazyロードの分割数が多い場合、初回アクセスのときにユーザーがコンポーネントごとに待ち時間を感じることがあります。 これが悪いわけではないのですが、あまりにも分割しすぎると逆に体験が細切れになる可能性もあるので、バランスが大切ですね。 どこまで分割するかは、実際のプロジェクトの規模やユーザーの利用状況を考慮しながら決めるのが良いでしょう。
また、他のライブラリやフレームワークを使っている場合は、そのツールが提供する独自のコード分割方法との相性も考えたほうが良いです。 React Routerなどを使う場合は、ルーティング単位でLazyロードを仕組むことも一般的です。 その際はReact LazyとReact Routerの機能を組み合わせて、必要に応じてSuspenseを配置するといった工夫が必要になります。
Lazyロードされたコンポーネント自体に大きなバグがあると、読み込み時に予期せぬエラーが発生するかもしれません。 この場合、コンポーネントを切り分ける前にまず動作確認を十分に行い、重大な不具合を抱えたまま分割しないように気をつける必要があります。
エラーハンドリングの考え方
React Lazyの読み込み中や読み込み失敗時にエラーが起きると、画面が真っ白になることがあります。 このリスクを減らすためには、Lazyロードしている箇所をSuspenseで包むだけでなく、さらにエラー境界(Error Boundary)を設けておくと安心です。 エラー境界とは、Reactのコンポーネントで発生したエラーをキャッチし、フォールバックUIに切り替える機能をもつ仕組みです。
たとえば、読み込み時のエラーが起こったら「読み込みに失敗しました。再度お試しください。」のようなメッセージを表示することもできます。 こういった工夫をしておけば、万一サーバーやネットワークが不安定でも、ユーザーに「何か不具合が起きている」ことを可視化しやすいでしょう。 React Lazyはあくまで部分的なコード分割の手段なので、アプリ全体のエラーハンドリングやユーザー体験を意識した設計が欠かせません。
React Lazyと他のコード分割手法との違い
Reactには、コード分割を行うための他の手法も存在します。 たとえば、ビルド時にWebpackのダイナミックインポート機能を活用したり、React Routerのルーティング単位でのコード分割をすることもよくあります。 実はこれらとReact Lazyは重複する部分が多く、やっていることは「必要なときに必要なファイルを取得する」という点で共通しています。
ただし、React LazyはReact標準の機能として提供されているため、難解な設定ファイルをいじらずに実装しやすいという特徴があります。 逆に、Webpackの設定で細かなコントロールをしたい場面などでは、手動で分割ポイントを指定するやり方が向いているかもしれません。 プロジェクトの規模感やチームのスキルセットによって、React Lazyだけで十分か、あるいは追加の設定が必要かを判断すると良いでしょう。
React Routerのバージョンによっては、ルート単位で lazy
を使える仕組みが提供されている場合もあります。
こうしたルーティングと組み合わせたコード分割は、ページ単位での遅延読み込みに最適です。
一方で、ウィジェットのようにページの一部でしか使わないコンポーネントを分割したいなら、React Lazyの方が手軽かもしれません。
実装の流れをまとめてイメージしよう
ここで、実際の実装フローをざっくりイメージしてみましょう。
まずは通常のインポートを使っているコンポーネントの中から、「ユーザーがいつ使うかわからない」「初回ロードを重くしている」などの候補を探します。
次に、それらのコンポーネントを React.lazy(() => import("..."))
の形式に書き換えましょう。
そして、Lazyで読み込むコンポーネントを含む部分は、必ずSuspenseで包み込みます。 ここで複数のLazyコンポーネントを同時に扱う場合、Suspenseのブロックをどの階層で配置するかがポイントになります。 さらに、読み込みが失敗したときのことを想定して、エラー境界を用意しておくと親切です。
こうした手順を踏んでおくと、React Lazyが実際に動き出した後に「画面が真っ白になってしまった」「何が起きているのか分からない」といったトラブルを減らせます。 最初は小規模な部分だけLazy化して様子を見て、十分に動作が安定したら全体に広げていくという方法もあるでしょう。 このように段階的に導入していくのは、実務ではよくあるパターンです。
まとめ
React Lazyは、コード分割を簡単に導入できるReactの機能です。 コンポーネントをあらかじめ非同期インポートすることで、必要なタイミングでのみ読み込むように設計できます。 これによって初回ロードが軽くなりやすく、利用者の待ち時間を短縮する可能性があります。
ただし、Lazyロードしたコンポーネントは Suspense
で包み込まなければエラーが起きることがあるので、セットで考えるのが鉄則です。
また、分割しすぎると管理が大変になったり、逆にユーザー体験を損なう場合もあります。
エラー境界などと併用して、万一のトラブルにも柔軟に対処できるデザインを考えておくことが重要です。
実務では、React Routerなどを組み合わせるケースも多いため、プロジェクト全体のアーキテクチャやユーザーの利用動線を見極めながら導入すると良いでしょう。 React Lazyを活用することで、アプリのパフォーマンス向上や開発効率の維持につなげることができるはずです。 少しずつ慣れながら、自分のアプリに最適なコード分割の形を見つけてみてくださいね。