ReactとTypeScriptの環境構築をはじめからやさしく解説
はじめに
ReactとTypeScriptを組み合わせる環境を作りたいと思っても、どこから手をつければよいか分からず困ることはないでしょうか。
JavaScriptで開発を始めたものの、型に関するエラーが本番運用時に見つかってしまい、チームでの修正作業が大変になることがあります。
そうした問題を減らすうえで、TypeScriptはとても役に立ちます。
ReactとTypeScriptを組み合わせると、画面の動的な操作やコンポーネント指向のメリットを活かしながら、型定義の恩恵を得られます。
実務では、複数人でのプロジェクト進行や、大規模なコードベースでのメンテナンスのしやすさが重要になりますね。
Reactを使ったフロントエンド開発とTypeScriptの型安全性を上手に組み合わせれば、エラーを事前に予測しやすく、保守性の高いコードを書けるようになります。
今回の記事では、こうしたReact+TypeScriptの環境構築手順を一歩ずつ見ていきたいと思います。
この記事を読むとわかること
- ReactとTypeScriptを組み合わせるメリット
- 実務での活用イメージ
- 基本的な環境構築の手順
- コマンドの実行方法やコードサンプル
- プロジェクト構成の考え方
ReactとTypeScriptを組み合わせるメリット
Reactはコンポーネントを使って画面を細かく分割し、再利用しやすい設計を行うために開発されました。
一方でJavaScriptだけを使っていると、自由度が高いがゆえに、型の不一致が原因のバグに気づきにくいことがあります。
TypeScriptは変数や関数の引数、コンポーネントのpropsなどに対して明示的に型を指定できます。
これによって、実行前にある程度のミスを発見できるため、後から気づくバグが減りやすくなるでしょう。
実務の現場では、各コンポーネント間で渡すデータ型が明確になると、コードレビューがスムーズになります。
「このpropsに想定外の型が入りそうだ」というようなエラーがビルド時点で警告されるので、レビューの段階で見落としにくくなるんですね。
複数人での開発では、コンポーネントの型定義がドキュメントのような役割も果たすため、後からプロジェクトに参加した人でも理解しやすくなります。
実際に業務で使われる場面も多いので、初心者の皆さんがReact+TypeScriptの環境構築方法を覚えると、将来的に役立つ場面が増えるでしょう。
React+TypeScriptのプロジェクト作成フロー
ReactとTypeScriptのプロジェクトを作る方法はいくつかあります。
たとえば「Create React App」を使う方法や、「Vite」などのビルドツールを活用する方法などが代表的です。
ここでは、Create React Appを使って最小限の流れをつかんでみましょう。
1行ずつ手を動かしながら理解すると分かりやすいですよ。
Create React Appによる基本手順
Reactアプリを作成するための便利なツールとして、Create React Appが挙げられます。
TypeScriptのテンプレートを指定すると、はじめから型定義がセットアップされた状態でプロジェクトが作られるので便利です。
以下のようにターミナルやコマンドプロンプトで入力してみてください。
npx create-react-app my-react-ts-app --template typescript cd my-react-ts-app npm start
上記の手順を実行すると、ReactとTypeScriptの環境を組み込んだプロジェクトが自動的に生成されます。
もし何らかの依存関係を追加したい場合も、同じディレクトリで npm install パッケージ名
のようにコマンドを使うだけでOKです。
初期の段階からTypeScriptが導入されていることで、JavaScriptファイルをそのまま使うより型の管理がしやすい状態で開発を始められます。
一度プロジェクトを起動できたら、src/App.tsx
や src/index.tsx
といったファイルを確認してみましょう。
TypeScriptファイルが用意されていることが確認できると思います。
Viteを使った環境作成
また、より高速なビルドやホットリロードを求める場合は、Viteを使った環境作成も人気があります。
Viteはビルドツールとして動作が軽く、開発時に更新が素早いのが特徴です。
以下のようにプロジェクトを作成するコマンドを実行してください。
npm create vite@latest my-vite-react-ts -- --template react-ts cd my-vite-react-ts npm install npm run dev
Viteの場合も、TypeScriptが組み込まれたテンプレートを指定することで、TypeScriptを設定したReactプロジェクトを簡単に始められます。
実行してみると、ローカルサーバーが立ち上がり、ブラウザでReactアプリを確認できるでしょう。
ディレクトリ構成とファイルの役割
ReactとTypeScriptの環境を整えた後、ディレクトリ構成をある程度把握しておくと分かりやすいですね。
以下はCreate React Appで生成されたフォルダ構造の例です。
my-react-ts-app ├── node_modules ├── package.json ├── tsconfig.json ├── src │ ├── App.tsx │ ├── index.tsx │ └── ... └── public └── index.html
-
tsconfig.json TypeScriptのコンパイラ設定を定義するファイルです。 型チェックやコンパイル時の詳細設定がまとまっています。
-
srcディレクトリ Reactのコンポーネントやスタイル、ロジックを配置します。
App.tsx
が最初に呼び出されるメインコンポーネントで、index.tsx
がアプリ全体をブラウザ上にレンダリングする役割を持ちます。 -
publicディレクトリ 静的ファイルを配置するフォルダで、
index.html
などが含まれます。
プロジェクトが大きくなってきたら、機能ごとにディレクトリを分けたり、コンポーネントをフォルダ単位で分類したりすると管理しやすいでしょう。
この構成を知っておくことで、ファイルをどこに配置すればよいか迷わずに開発を進められます。
開発が進むにつれ、コンポーネントを細かく分けてフォルダを増やすことはよくあります。使う人数や目的に合わせて、適宜構成をカスタマイズしてみてください。
TypeScriptでの基本的な型定義
ReactとTypeScriptを組み合わせる環境が整ったら、実際にコンポーネントで型を使ってみましょう。
以下は、Reactコンポーネントでpropsに型を付けた例です。
import React from "react"; type GreetingProps = { name: string; age?: number; }; function Greeting(props: GreetingProps) { return ( <div> <p>Hello, {props.name}!</p> {props.age && <p>Your age is {props.age}</p>} </div> ); } export default Greeting;
上記のように、GreetingProps
というオブジェクト型を定義し、name
には必須の文字列、age
はあってもなくてもいいオプションの数値型としています。
これにより、コンポーネントを利用するときに間違った型を渡した場合、エディタやコンパイル時に警告が出るでしょう。
また、オプション型があると「年齢を表示したいときだけ props を与えればいい」というように柔軟なコンポーネント設計が可能になります。
こうした型定義の力によって、ランタイムエラーが起きにくいコードを書くことにつながります。
実務でのメンテナンスやチーム開発を想定すると、型を明示する習慣は後のトラブルを減らしてくれますね。
実務で役立つ具体的な活用シーン
ReactとTypeScriptの組み合わせは、たとえば以下のような実務シーンで活かされることがあります。
コンポーネントの分割管理
大規模なアプリでは、多くのコンポーネントを使い分ける必要があります。
型を使っておけば、どのコンポーネントにどんなデータを渡すべきかすぐに分かります。
社内向けのダッシュボードや、一般ユーザーが利用するWebアプリでも、管理するデータ構造をチーム全員で共有しやすいです。
データ処理ロジックの安全性
Reactでは、APIから取得したデータを画面に表示する場面が多いでしょう。
TypeScriptを使うと、取得したデータの形式が合っているかどうかを定義しておくことで、不正な形式のデータを受け取ったときに早期に発見できます。
結果的にバグや予期しない挙動を回避しやすくなります。
保守や拡張のしやすさ
一度リリースしたWebアプリは、後から機能追加やデザイン変更を行うことがよくありますよね。
そうしたときに、既存のコードベースで型が定義されていれば、新しい機能を追加した際の影響範囲を把握しやすいです。
「データ型が変わるなら、関連するコンポーネントにも修正が必要だな」といった流れが可視化されるため、変更に伴う不具合のリスクを下げられます。
ReactとTypeScriptは、それぞれに慣れていないうちは設定や型エラーに戸惑うかもしれません。
しかし、最初にしっかり型を定義する習慣をつけると、後々のトラブルを減らす助けになります。
複数のビルドツールやライブラリとの連携
フロントエンド開発は、React本体だけでなく、ルーティングライブラリや状態管理ライブラリといったさまざまなパッケージを組み合わせることが多いです。
TypeScriptの型定義は、こうした追加ライブラリを導入する際にも役に立ちます。
たとえばReact Routerを導入する場合、URLパラメータの型を明示することで、安全にルーティングや画面間のデータ連携を行えます。
また、グローバルな状態管理にReduxやReact Queryを使う場合も、アクションやデータの型を定義しやすくなるので、予期せぬバグを減らせるでしょう。
ReactとTypeScriptの環境が整っていれば、複数のライブラリを組み合わせる際も型推論が効くため、エディタの補完機能がより助けになります。
特に大きめのプロジェクトであればあるほど、型安全性と補完機能は開発効率を上げてくれますね。
コンポーネントを追加して動かしてみる
もう少し具体的なイメージをつかむために、先ほどの Greeting
コンポーネントを使う例を見てみましょう。
import React from "react"; import Greeting from "./Greeting"; function App() { return ( <div> <Greeting name="Alice" age={25} /> <Greeting name="Bob" /> </div> ); } export default App;
App.tsx
内で Greeting
コンポーネントを呼び出しています。
age
を指定している呼び出しと、指定しない呼び出しが混在しますが、型定義があるのでいずれもコンパイルエラーにはなりません。
もし name
に数値を渡した場合は、エディタ上でエラー警告が出ます。
これは、型定義のメリットを直感的に感じられる部分ですね。
実務でも「このデータ型は必須だが、これはオプション」というような区別を付ける場面が多いです。
実際の画面では「Alice」「Bob」が表示されるシンプルな見た目になりますが、開発者からすればメンテナンス性が高く、安全に拡張できるという利点が得られています。
テスト導入のしやすさ
React+TypeScriptの環境下では、ユニットテストやコンポーネントテストの導入がしやすいという面も挙げられます。
TypeScriptの型があるおかげで、テストコードを書くときも間違った呼び出し方があれば即座に検知してくれます。
たとえばJestやTesting Libraryなどを組み合わせると、コンポーネント単位で動作を確認できるようになりますよ。
テストを書くほど開発コストは上がりそうに思えますが、将来的なバグ修正やデグレード(機能が意図せず壊れること)のリスクを下げてくれる点では、実務では有力な手段です。
将来的にチームで働くことを考えると、こういったテストとの親和性も視野に入れておくと良いですね。
よくあるトラブルと対処法
ReactとTypeScriptの環境において、初心者の皆さんが最初によく遭遇するトラブルをいくつか挙げておきます。
tsconfig.jsonの設定ミス
コンパイラオプションによって、コンパイル結果が意図しない形になることがあります。 もしビルドや型チェックに失敗したら、一度tsconfig.jsonの内容を確認してみましょう。
型定義ファイルのインストール漏れ
ライブラリによっては、型定義が別パッケージとして提供されている場合があります。
足りない場合は @types/ライブラリ名
を追加インストールすることで解決できます。
propsの受け渡しミス
コンポーネントに定義されていないプロパティを渡してエラーになることはよくあるケースです。 このときこそ、TypeScriptのエラー表示を参考に正しい型を見直すのが大切です。
こうしたエラーに遭遇すると、一瞬戸惑うかもしれません。
しかしエラーが出るということは事前に潜在的な問題を見つけられているということでもあるため、安心材料にもなります。
型エラーの内容を読み解いて、慣れていくことが大事ですね。
まとめ
ReactとTypeScriptを組み合わせる環境構築について、基本的な流れを見てきました。
Create React AppやViteなどのツールを使えば、初心者の皆さんでも比較的スムーズにプロジェクトをスタートできます。
コンポーネントのpropsや関数の引数などに型をつけると、エディタ上でエラーを検知しやすくなり、実行時のバグを減らすのに効果的です。
実務のシーンをイメージしながら、環境構築と簡単なコード例を試してみると理解が深まるでしょう。
少しずつ型定義を覚えていくことで、Reactを使った開発をより安心して進められると思います。
ぜひ試しながら慣れてみてください。