LPIC-2とは?試験範囲や難易度、合格のポイントを初心者向けに解説

Linux資格

はじめに

Linuxのスキルを証明する資格のひとつに、LPIC-2 があります。
サーバー運用やネットワーク管理などの現場で高く評価される資格のため、エンジニアへの転職を目指す皆さんや、これからLinuxの知識を身につけたい皆さんにとって、取得を検討する価値があるでしょう。

ただ、資格の名前は聞いたことがあっても、具体的にどんな試験内容なのか、どれほどの難易度なのか、そして取得後にどんなメリットがあるのかがわからず、不安に感じる方も多いかもしれません。
そこでこの記事では、LPIC-2の試験概要や学習するうえで押さえておきたいポイント、実務における活用例などを丁寧に解説します。

Linuxの知識がほぼない皆さんでも理解しやすいよう、初心者目線で平易な言葉を意識して書いています。
どのような内容が問われるかだけでなく、職場や開発現場でどんなふうに活かせるのかも取り上げますので、ぜひ学習の参考にしてください。

この記事を読むとわかること

  • LPIC-2の基本的な概要と特徴
  • 試験範囲や出題内容、難易度の目安
  • 現場でどのように評価・活用されるか
  • 学習の際に意識したい具体的な実務例
  • 資格取得後に期待できるキャリアパス

LPIC-2とは?

LPIC-2は、Linux技術者認定試験の中級レベルに当たります。
一般的にLPICは、「Linux Professional Institute Certification」の略称で、Linuxの専門団体が認定する資格です。
LPIC-2では、複数のサーバーを連携させたり、ネットワークやセキュリティの設定を行ったりするスキルが問われます。

LinuxはWebサーバーや企業内システムなどで利用されることが多く、ビジネスの幅広い場面で活躍しています。
その中核を担うLinux管理スキルを有する証明として、LPIC-2は実務での評価につながることが期待されます。

LPIC-1との違い

LPIC-2とよく比較されるのが、LPIC-1です。
LPIC-1はLinuxの基本的な操作や設定を問われ、1台のLinuxサーバーを管理するために必要な知識が中心です。
それに対して、LPIC-2はより複雑な環境に対応できる力が求められます。

たとえば、複数のサーバーをまたいだネットワーク構築や監視、負荷分散、セキュリティ設定など、実際の運用では避けて通れない作業も試験範囲に含まれます。
そのため、学習範囲はLPIC-1よりも広く、レベルもワンランク上がるイメージです。

試験概要

LPIC-2は大きく分けて2科目あり、「201試験」と「202試験」に合格すると資格を取得できます。
これら2科目はどちらから受験しても構いませんが、最後に両方とも合格してはじめてLPIC-2認定となる仕組みです。

試験の形式は、主に選択式問題が中心です。
マークシート形式でありながら、記述式の問題が一部含まれることもあります。
具体的には、コマンドラインでの操作や設定ファイルの内容などについて問われるケースがあります。

試験時間は1科目あたり約90分です。
合格ラインは非公開ですが、およそ65~70%前後の正答率を目安とする声が多いです。
細部については、受験前に公式サイトで最新情報を確認するとよいでしょう。

LPIC-2が必要とされる業務領域

LPIC-2の取得が活きる仕事としては、サーバー管理やネットワーク設計、クラウド環境の構築などが挙げられます。
現場によっては、Linuxディストリビューションが異なることもありますが、LPIC-2の学習過程で得られる知識は、ディストリビューションを超えて基本的な管理スキルのベースになると考えられます。

サーバー運用やネットワーク管理

Webサーバーやメールサーバーなどを立ち上げ、稼働させるためには、適切な設定と継続的なメンテナンスが必要です。
たとえば、ApacheやNginxといったWebサーバーソフトウェアの設定ファイルを書き換えながら、動作確認を行う場面がよくあります。
また、ネットワーク管理では、IPアドレスの設定、ファイアウォールの調整、VPNの構築などを行うことがあります。

LPIC-2の範囲では、こうしたサーバー運用とネットワーク管理に関わるスキルが問われます。
そのため、資格の取得によって「現場で実際に何ができるのか」がアピールしやすくなります。

セキュリティ保守

Linuxサーバーを運用する上でセキュリティ対策は欠かせません。
たとえば、不正アクセスを防ぐためのパケットフィルタリングやSSHの設定項目を見直したり、ファイルのパーミッションを適切に管理したりといった作業が挙げられます。

LPIC-2では、ネットワークを含めたシステム全体のセキュリティ管理を扱います。
ログの監視や監査設定、攻撃を受けた場合の対策なども含まれるため、セキュリティ保守の基礎を固める上で大いに役立つでしょう。

スクリプト自動化による効率化

Linux環境では、シェルスクリプトなどで定期的な作業を自動化することがよく行われます。
LPIC-2では、より複雑なスクリプトやジョブスケジューリングなどの運用にも触れます。

たとえば、バックアップ作業を毎週末に自動で実行し、ログをメールで管理者に送るスクリプトを組んでおけば、手動作業を減らせます。
こうした自動化は時間とリソースの節約になり、トラブル対応にも迅速に取りかかる余裕が生まれます。

LPIC-2の難易度とメリット

「LPIC-2を受験してみたいけど、どれぐらい難しいのだろう?」と気になる方は多いでしょう。
確かにLPIC-1よりも範囲が広く、出題内容も発展的なテーマが含まれるため、難易度はやや高く感じるかもしれません。
しかし、その分だけ取得後の評価も高まりやすく、自信を持ってLinux関連の仕事をこなしやすくなる利点があります。

難易度を感じるポイント

  • 複数サーバーの連携やネットワーク構築
  • セキュリティ、暗号化、VPNなどの理解
  • 複雑なコマンドのオプションや設定ファイルの内容

これらのポイントは初心者にとって一度に学ぶにはハードルが高いかもしれません。
しかし、一歩ずつ着実に学んでいくことで、全体像を理解しやすくなります。
最初は難しく感じても、演習環境を用意して実際に操作しながら進めることで、段階的に身につけられることが多いです。

取得メリット:キャリアアップや転職

LPIC-2を取得するメリットとして、キャリアアップや転職でのアピールポイントになることが挙げられます。
IT企業でLinuxサーバーの管理やセキュリティ関連のプロジェクトを行う際に、LPIC-2レベルのスキルが重宝されるケースは多いです。

また、クラウド環境(AWSやAzureなど)を活用する現場でも、OSレイヤーの管理知識が求められることがあります。
LPIC-2を持っていれば、クラウド環境上のLinuxインスタンスのチューニングやネットワーク設定をスムーズに行いやすいでしょう。

LPIC-2試験範囲と出題内容

LPIC-2は大きく2つの試験に分かれ、「201」と「202」があります。
それぞれの試験では、Linux運用のより深いテーマが扱われます。
ここでは、主だった試験範囲をポイントごとに紹介します。

201試験の内容

201試験では、以下のような分野が中心に扱われます。

Linuxカーネルのコンパイルと管理

カーネルのバージョン管理や再構築の手順などが問われることがあります。
サーバーに最適化したカーネルを自分でビルドするなど、Linuxをより深く理解するための知識に触れます。

システムの起動プロセス管理

initやsystemdなどのサービス管理方式について理解し、プロセスの優先度変更や問題の切り分けに応用します。

ファイルシステム管理とディスククォータ

パーティション作成、ファイルシステムの作成・メンテナンス、ディスク使用量の制限などを行う方法を学びます。

ハードウェア管理

デバイスの設定やシステムリソースの最適化に関わる内容が含まれます。

ネットワーク設定の基本

IPアドレスの設定、ルーティング、ネットワーク診断など、LPIC-1よりも発展的な操作が求められます。

202試験の内容

202試験では、ネットワーク全般やサービスの構築、セキュリティ対策などがより広範に扱われます。

Webサーバー (Apache、Nginxなど) の設定

バーチャルホストの設定やHTTPS化など、サービス運用に直結する内容です。

メールサーバーの運用

PostfixやDovecotなどを使い、送受信メールサービスを構築・管理する知識が問われます。

DNSサーバーの構築

BINDなどを利用したDNSの設定や、ゾーンファイルの書き方を理解します。

セキュリティ設定

ファイアウォールやTCP Wrappersなどを使った制限方法、SSHのキー管理方法などが含まれます。

システム監査とログ管理

サーバーが正常に稼働しているかをモニタリングし、問題発生時の原因を特定するための技術を扱います。

LPIC-2の学習方法を実務例と紐付けて考える

LPIC-2の学習では、ただテキストを読むだけでなく、可能であれば実機を触る経験が重要になります。
仮想マシンを利用して複数のLinux環境を構築し、ネットワークの設定やセキュリティ対策を試してみると、試験範囲を理解しやすくなるでしょう。

学習ロードマップ

1. LPIC-1レベルの復習

LPIC-2で問われるのは発展的なテーマが中心ですが、基本的なコマンド操作やファイル操作、パーミッション設定などは引き続き使います。
忘れている部分がある場合は、まずLPIC-1レベルの知識を一通り復習するのがおすすめです。

2. 201試験の主要範囲を分野ごとに整理

カーネル管理やファイルシステム、ネットワークなど、それぞれのテーマを区切りながら学びます。
手順書を見ながら、実際にカーネルビルドを試したり、systemdでサービスを制御したりしてみてください。

3. 202試験の主要範囲に着手

Webサーバーやメールサーバー、DNSサーバーなど、サービス構築に関連する項目が多いです。
仮想環境で複数のサーバーを立ち上げ、相互に通信ができるよう設定したり、DNSを社内用に立てて動作を確認したりすると理解が深まります。

4. セキュリティ対策とログ管理を重点的に演習

ファイアウォールの設定やSSHキーの設定、アクセス制御リストの仕組みなどは実務でも重要度が高いです。
定期的にログを確認し、問題があればすぐに気づける仕組みを構築してみるのも良いでしょう。

実務で役立つ具体例

例1:Webサーバー構築から運用まで

  • ApacheまたはNginxでWebサーバーを用意し、仮想ホストを複数立てる
  • HTTPS化のためにSSL/TLS証明書を導入し、設定ファイルでポート443を開放
  • クライアントからアクセスして、正しく暗号化されているかを確認する
  • ファイアウォール設定で必要なポートを開放、それ以外は遮断

例2:メールサーバーの運用

  • Postfixをインストールし、メール送受信のテストを行う
  • DovecotによるIMAP/POP3の設定も合わせて試す
  • 不要なリレーを防ぐためのセキュリティ設定を施す
  • ログを監視し、エラーがないかを定期的にチェック

例3:DNSサーバー構築

  • BINDを使って内部DNSを構築し、独自ドメインを設定
  • 正引き・逆引きの設定を行い、各サーバーのホスト名解決を容易にする
  • 名前解決の手順が間違っていないか、クライアントからのnslookupで検証する

これらの作業を実機または仮想マシンで体験することで、単なる座学だけでは得られない実践的な知識が身につきます。
試験に出題される設定項目やコマンドも「こういう場面で使うんだな」と思いながら覚えると、記憶に定着しやすいでしょう。

LPIC-2合格のために押さえておきたいポイント

学習がある程度進んだら、効率良く試験対策をするための工夫が必要です。
ここでは合格に近づくために意識すべきポイントを紹介します。

コマンドの習得

Linux運用ではコマンドの種類やオプションが多く存在します。
たとえば、tarrsyncを使ったバックアップ、iptablesfirewalldによるパケットフィルタリング、systemctlコマンドを用いたサービスの起動制御など、多岐にわたります。

例:iptablesで特定のポートを許可する設定

# 例として、SSHのポート(22)を許可
sudo iptables -A INPUT -p tcp --dport 22 -j ACCEPT

# 他の通信は拒否
sudo iptables -P INPUT DROP
sudo iptables -P FORWARD DROP
sudo iptables -P OUTPUT ACCEPT

このように複数のコマンドを組み合わせてセキュリティを強化しながら、サーバーを運用するケースが試験に出ることがあります。
コマンドに慣れるために、1つひとつの役割を実機で試して覚えると実務にも直結しやすいです。

設定ファイルの管理

Linuxの世界では、多くの設定がテキストベースの設定ファイルに集約されています。
Webサーバーのhttpd.confやDNSサーバーのnamed.confなどが代表例です。

試験においても、設定ファイルの編集やパラメータの意味が問われることがあります。
実際の業務でも、設定ファイルを誤って編集するとサービスダウンにつながる恐れがありますので、細心の注意が必要です。
試験対策として、よく使う設定ファイルは一度読んでみて、主要なセクションとパラメータを把握しておくとよいでしょう。

パーミッションとプロセス管理

Linuxの基本として、ファイルやディレクトリのパーミッション管理は重要です。
chmodchownchgrpなどを活用して、正しく権限を設定します。

プロセス管理では、psコマンドやtopコマンドを使ってシステムの状態を確認し、killコマンドで不具合のあるプロセスを終了させるなど、日常の運用で必須の操作が問われることが多いです。
本番環境では、優先度を調整するniceコマンドや、サービスを再起動せずに設定を反映させる方法などもよく使います。

ネットワーク設定

IPアドレスの割り当てやルーティング設定、DNSサーバーとの連携など、ネットワーク関連の問題も頻出です。
複数のインターフェースを持つサーバーで、どのようにルーティングテーブルを管理するかも重要なポイントです。

また、SSHによるリモートログイン設定やVPNの基礎知識なども含まれます。
ネットワークがうまくつながらない場合にどこを調べればいいのか(DNSの設定が原因なのか、ファイアウォールが原因なのかなど)を総合的に判断できる力が求められます。

セキュリティ

LPIC-2では、基本的な暗号技術や認証機構についても問われることがあります。
SSHキーによるパスワードなし接続や、SSL/TLSの証明書設定、ファイアウォールのルール設定など、多面的なセキュリティ対策を理解しておきましょう。

システム監査やログの分析、ログイン履歴のチェックなども現場では大切な作業です。
不正アクセスがあった場合や、サービスに障害が起きた場合に迅速に対応できる知識が、LPIC-2取得者には求められています。

LPIC-2の需要と将来性

LinuxはWebサービスやクラウド基盤の裏側で動いていることが多く、今後も需要は続くと見込まれます。
特にLPIC-2レベルの技術者は、単なるOSの基本操作にとどまらず、セキュリティやネットワーク、複数システムの連携など広範な領域をカバーできるため、企業からの評価も高まりやすいでしょう。

現場でのLinux需要

インターネットサービス、組込みシステム、企業の基幹業務サーバーなど、あらゆる場面でLinuxが使われています。
近年のクラウド普及やコンテナ技術(Dockerなど)も、ベースにLinuxが動いているケースが多いです。
そのため、Linuxに精通した人材の需要は常に存在すると考えられます。

LPIC-2が評価される理由

LPIC-2を取得しているということは、Linuxの実務で遭遇するような課題を一通りこなせる可能性が高いと判断されやすいです。
たとえば、ネットワーク設定がうまくいかないときにルーティングテーブルやファイアウォールを見直し、DNSサーバーやWebサーバーの設定を確認するといったプロセスを理解している証拠となります。

運用保守だけでなく、新しいサーバーを導入する際の設計や移行計画にも深く関わりやすいでしょう。

海外でのLPIC-2の評価

LPICは国際的に認知度があり、海外の多国籍企業でも評価される傾向があります。
もしグローバルな環境で働きたいと考えている場合も、LPIC-2の取得によって世界中で通用するLinuxスキルを客観的に示しやすくなります。

LPIC-2取得後に広がるキャリアパス

LPIC-2を取得した後、どうステップアップしていけるのか気になる方もいるでしょう。
ここでは、LPIC-2を活かしてさらに専門性を高めたり、別の分野と組み合わせたりすることでどのような道が開けるのかを紹介します。

上位資格のLPIC-3

より専門性を高めたい場合は、最上位資格であるLPIC-3の取得を目指す道があります。
LPIC-3はセキュリティや仮想化、ミックスド環境の統合などのトピックも含まれ、Linuxエンジニアとして高い専門性を証明できます。
シニアクラスのエンジニアを目指す際に視野に入れてもよいでしょう。

LinuCとの互換

日本国内では、LinuCという別のLinux資格もあります。
実はLPICとLinuCは学習範囲や出題基準が似ている点が多く、ある一定の条件を満たすと、相互に認定を得ることが可能な場合もあります。

たとえばLPIC-1を持っていれば、LinuC-1を取得しているとみなされる仕組みがあったりします。
詳細は時期やバージョンによって異なることがありますが、LPIC-2を取っておくとLinuCの対応資格も得られることがあるため、転職の幅が広がる可能性があります。

他分野との組み合わせ

Linuxスキルは、クラウドやコンテナ技術、セキュリティ領域などと相性が良いです。
LPIC-2で磨いたスキルを活かしながら、新たにDockerやKubernetesなどを学び、より先端的な開発・運用に取り組むこともできるでしょう。

また、ネットワーク系の資格(CCNAなど)と組み合わせると、ネットワークからサーバーまで包括的に理解できるエンジニアとして評価されやすくなります。

Linux技術は幅広い分野に応用できるため、LPIC-2を入り口にして複数の専門分野を掛け合わせると、キャリアの選択肢が増えるでしょう。

まとめ

ここまで、LPIC-2の試験概要や学習ポイント、実務での活用シーンなどを解説してきました。
LPIC-2は初級レベルのLPIC-1よりも範囲が広く、ネットワークやセキュリティ、複数のサービス運用など、より高度なテーマをカバーしています。

資格としての評価が高いだけでなく、実務に直結する知識が身につくのがLPIC-2の大きな魅力です。
Linuxサーバーの運用・保守やネットワーク管理を行う際に、学んだ内容がすぐに活かせるでしょう。

初めは難易度が高く感じるかもしれませんが、仮想マシンなどで試行錯誤を重ねながら学ぶことで、理解は深まります。
ぜひ一歩ずつ着実に知識を積み重ねながら、LPIC-2合格を目指してみてください。
資格取得後は、上位資格のLPIC-3やクラウド関連の分野へとスキルを拡張し、キャリアを広げるチャンスにもつなげられるはずです。

Linuxを本格的に使いこなせるエンジニアとして活躍するための大きなステップとなるLPIC-2。
この記事がその第一歩を踏み出す手がかりになれば幸いです。

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