【Python】累積和をわかりやすく解説!初心者でも理解できる基本から応用まで

はじめに

プログラミングでは、数値の合計を順番に積み重ねていく累積和という考え方があります。
この考え方を使うと、リストなどのデータを効率よく処理できることが多いです。

たとえば、売上データを日ごとに足し合わせて推移を見たり、ゲームでキャラクターのステータスがどの程度上がっているかをシミュレーションしたりと、日常的な処理やアプリケーションの開発に役立ちます。

今回は Python で累積和を扱うための基本的な手法と、実務での活用方法をわかりやすくご紹介します。
初心者の方でも理解できるよう、コード例も交えながら順序立てて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を読むとわかること

  • 累積和の基本的な考え方
  • Pythonを使った累積和の計算方法
  • リスト内包表記や標準ライブラリでの累積和の扱い方
  • 実務での活用シーン

累積和とは何か

累積和とは、配列やリストに含まれる要素を先頭から順番に足していき、その合計値を順次リストとして記録する考え方です。
たとえば、リスト [1, 2, 3, 4] の累積和を計算すると、[1, 3, 6, 10] という結果になります。

特に数字の集計や統計処理でよく利用されるため、データ分析や数値シミュレーションなどで便利です。
また、累積和のリストを事前に用意しておくと、一部の区間だけの合計を素早く計算できるというメリットもあります。

Pythonでの累積和のメリット

Pythonではリストやイテレータを扱う機能が充実しているため、累積和の計算を実装しやすいです。
さらに、標準ライブラリである itertools の関数を活用することで、シンプルかつ読みやすいコードを書くことが可能です。

メリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 複数の数値を順番に足していく計算を簡潔に書ける
  • コードが読みやすくなり、保守性が上がる
  • 計算結果をすぐにリスト化できるので、後続の処理を楽にできる

このように、累積和はPythonの柔軟な記述力を活かしてスムーズに実装しやすい特徴があります。

累積和を計算する基本的な方法

ここからはPythonで累積和を求めるための具体的な方法をご紹介します。
初心者の方でも分かりやすいように、まずはシンプルな for 文を使った実装から見ていきましょう。

for文を使った累積和の計算

もっとも基本的な実装方法は、for 文を使って一つひとつの要素を足し合わせていくやり方です。

numbers = [1, 2, 3, 4, 5]
cumulative_sum = []
current_sum = 0

for num in numbers:
    current_sum += num  # ここで加算を行う
    cumulative_sum.append(current_sum)

print(cumulative_sum)  # [1, 3, 6, 10, 15]

この例では、変数 current_sum に対してリスト要素を順番に足していき、その時点での合計値を cumulative_sum リストに追加しています。
最終的に [1, 3, 6, 10, 15] という累積和のリストが得られます。

この方法の特徴

  • 処理が非常にわかりやすい
  • ループの中身で何が行われているかを明確に把握できる
  • 小規模なリストを扱う場合や、累積の計算ロジックをカスタマイズしたいときに向いている

一方で、ループ処理がやや冗長になるので、より簡潔に書きたい場合には次に紹介するリスト内包表記やライブラリが役に立ちます。

リスト内包表記を使った累積和の計算

Pythonらしい記述としてよく使われるのが リスト内包表記 です。
ただし、累積をとるにはある程度工夫が必要になります。以下のように書く方法があります。

numbers = [1, 2, 3, 4, 5]
cumulative_sum = []
temp_sum = 0

# リスト内包表記と一緒に書くと少し複雑に見えるので、事前にtemp_sumで累積を管理する
cumulative_sum = [
    (temp_sum := temp_sum + num)  # := は代入式 (Walrus operator)
    for num in numbers
]

print(cumulative_sum)  # [1, 3, 6, 10, 15]

このコードでは、Pythonの代入式 := (いわゆる Walrus operator) を使って累積和を一時変数に代入しながら生成しています。
変数 temp_sum はリスト内包表記の外で宣言しておき、各イテレーションで値を更新しています。

リスト内包表記のポイント

  • コードがまとめられるためスッキリと見える
  • 細かい処理を一行で書きたいときに便利
  • ただし複雑すぎるロジックを埋め込むと読みにくくなる

リスト内包表記はPythonの特徴的な書き方ですが、初めて見る方には少し難しく感じるかもしれません。
わかりやすさを優先するなら、for 文で書くほうが安心です。

itertools.accumulateを使う

Pythonの標準ライブラリ itertools には accumulate という便利な関数があります。
これを使うと、ほとんどコードを書かずに累積和を求めることができます。

import itertools

numbers = [1, 2, 3, 4, 5]
cumulative_sum = list(itertools.accumulate(numbers))

print(cumulative_sum)  # [1, 3, 6, 10, 15]

itertools.accumulate は引数に渡したイテラブルから次々と要素を取り出して、累積的な結果を返してくれます。
list() でラップしてあげると、結果をリストとして扱えるようになります。

accumulateの利点

  • 非常にシンプルで可読性が高い
  • accumulate にカスタム関数を渡せば、加算以外の演算 (たとえば掛け算や独自のロジック) も適用できる
  • 大量の要素を処理するときにも便利

実務で累積和を素早く実装するには、この accumulate が多くの場面で役立つでしょう。
標準ライブラリで提供されているため、追加のインストール作業が不要という点も使い勝手の良いポイントです。

実務での活用シーン

ここでは、実務の現場で累積和がどのように利用されるかを考えてみます。
シンプルながら、いろいろな分野で応用されている手法です。

データ分析での応用

データ分析では、時間軸での推移を把握する機会が多いです。
たとえば日々の売上データを累積し、その時点までの合計売上を把握するのはよくあるケースではないでしょうか。

また、株価データやセンサーデータのように、連続する数値を扱う分野でも累積和は役立ちます。
現在までにどの程度の値が蓄積されたかを可視化し、ビジネス判断やシミュレーションに生かすことができるからです。

Webアプリでの応用

Webアプリケーションでも、累積和が必要な場面が出てくることがあります。
たとえば、ポイントサービスを提供しているサイトで、ユーザーの累積ポイントをリアルタイムで表示したい場合などが考えられます。

ユーザーが行ったアクションごとにポイントが加算されるとき、その総計がどの程度になるかを累積和で瞬時に計算することができます。
必要に応じてデータベースに保存したり、画面に表示したりすることで、アプリにわかりやすいインタラクションを与えることが可能です。

累積計算の結果を複数のシステムで共有する場合は、元データと累積後データの整合性をきちんと管理する必要があります。

累積結果だけを保存してしまうと、後から個別の履歴を再構成できなくなるケースがあるため、元のログデータもきちんと残しておくと安心です。

累積和と区間合計の関係

累積和を用いると、リストの任意の区間 (たとえばインデックス i 番目から j 番目まで) の合計を手早く求めることができます。
これはデータ分析の場面でよく登場する便利なテクニックです。

区間合計の計算例

具体的には、先に累積和を作ったうえで、ある区間 i から j の合計を求めたいときは、以下の式で計算可能です。

cumulative_sum[j] - cumulative_sum[i - 1]

ただし i が 0 の場合は cumulative_sum[j] をそのまま使います。
以下のサンプルコードを見てください。

import itertools

numbers = [10, 20, 30, 40, 50]
cumulative_sum = list(itertools.accumulate(numbers))
# 累積和: [10, 30, 60, 100, 150]

# 例: インデックス1(要素20)から3(要素40)までの合計を求める
i, j = 1, 3
if i == 0:
    result = cumulative_sum[j]
else:
    result = cumulative_sum[j] - cumulative_sum[i - 1]

print(result)  # 90 (20+30+40=90)

このように、一度累積和のリストを作っておく と、その後はいろいろな区間の合計値をすぐに取り出せるのが大きな利点です。
大量のデータを扱う場合は特に有用で、計算量を大幅に削減できます。

マイナスや小数値を含む場合の扱い

累積和は整数のリストだけでなく、マイナスや小数を含むリストにも適用可能です。
Pythonの加算処理は数値型であれば問題なく動作するので、たとえば以下のようにしても正常に計算されます。

numbers = [3.5, -1.2, 2.8, -0.5]
cumulative_sum = []
current_sum = 0

for num in numbers:
    current_sum += num
    cumulative_sum.append(current_sum)

print(cumulative_sum)  # [3.5, 2.3, 5.1, 4.6]

たとえば家計簿アプリを作っているときに、プラスは収入、マイナスは支出として扱うケースが考えられます。
こうしたデータを累積和として保持しておくと、どの時点でどれだけお金が増減したかを簡単に把握できますね。

複雑な演算を伴う累積和

累積和と同時に、別の演算をこなす必要がある場合もあります。
itertools.accumulate では、累積計算に使う関数を自分で指定することができますので、下記のように柔軟に操作可能です。

import itertools
import operator

numbers = [1, 2, 3, 4, 5]

# デフォルトは加算
default_sum = list(itertools.accumulate(numbers))
print(default_sum)  # [1, 3, 6, 10, 15]

# たとえば乗算による累積
product_sum = list(itertools.accumulate(numbers, operator.mul))
print(product_sum)  # [1, 2, 6, 24, 120]

ここで operator.mul を渡すと、掛け算による累積が行われます。
つまり、[1, 1*2, 1*2*3, 1*2*3*4, ...] のように計算されるわけです。

このようにカスタム演算を組み合わせれば、単純な合計以外のロジックにも対応できます。
ただし、初心者の方は最初は加算のみを扱い、慣れてきたらこうした拡張的な使い方にチャレンジしてみるとよいでしょう。

処理パフォーマンスの考え方

累積和は、まとめて計算すると効率の良い手法です。
ただし、一回ごとの値更新をリアルタイムで行うのか、それとも必要なタイミングで一括して累積化するのかは、設計によって変わってきます。

たとえば、データが大きい場合は、accumulate で一気にリストを作るほうが速いことがあります。
一方で、逐次更新が必要なアプリケーションでは、都度累積していく実装が求められます。

大量データを扱うときは、データ構造の選択や、どのタイミングで累積計算を行うかを検討してみてください。

いずれにしても、Pythonのループと accumulate はシンプルなコードになるので、保守もしやすいでしょう。

まとめ

ここまで、Pythonで累積和を実装する方法や、それがどういったシーンで役立つかについてご紹介しました。
実際に書いてみると意外とシンプルな手順であり、いろいろな場面に応用できる考え方だと感じませんでしたか。

  • 累積和はリスト内の数値を順番に加算していき、その合計を順次蓄える考え方
  • for 文やリスト内包表記を使って自前で実装することもできる
  • itertools.accumulate を使うと短いコードで実装が可能
  • 実務では売上推移やポイント管理など、数値の時間的変化を把握したい場面で役立つ
  • 区間合計も累積和を応用すると効率よく計算できる

ぜひご自身のプロジェクトで、累積和を活用してみてください。
少しでも業務や学習のお役に立てれば幸いです。

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