Rust Vecの基本と使い方を初心者向けに解説

Rustにおける動的配列の特徴

皆さんは配列にデータを格納するとき、要素数を決めるタイミングに迷ったことはないでしょうか。

Rustのrust vecは、実行時に柔軟に要素数を増やせる動的配列を指します。

配列との大きな違いは、コンパイル時ではなく実行時にメモリを確保する点です。

たとえば固定長の配列が向いている場面ではサイズを明確に決めることが多いですが、不確定要素のあるデータを扱うときはrust vecが便利です。

サーバーサイドの開発では、APIから取得したユーザー情報をまとめて格納したい場面があるかもしれません。

そうした場合にVector型を使えば、取得した数だけ要素を追加できるので扱いやすいですね。

一方で、動的なメモリ割り当てが走るため、パフォーマンス面に気を配る必要も出てきます。

そのため、要素の追加や削除が頻繁に起こるならば、Vector型の操作コストを意識しておくといいでしょう。

基本的な宣言と操作

では実際にrust vecを使うときの基本的なコードを見てみます。

以下のサンプルは要素の作成、追加、参照、削除といった操作をまとめています。

fn main() {
    let mut numbers = vec![10, 20, 30];
    numbers.push(40);
    numbers.push(50);

    println!("最初のベクター: {:?}", numbers);

    // 要素の取り出し
    if let Some(first) = numbers.get(0) {
        println!("先頭の要素: {}", first);
    }

    // 最後の要素を削除
    numbers.pop();
    println!("要素削除後のベクター: {:?}", numbers);
}

要素の追加はpush、削除はpop、インデックスアクセスはget[n]で行うことが多いです。

ただし[n]で要素を取得するときは、範囲外だとエラーが発生する点に注意が必要です。

このようにシンプルな構文で、後から自由に要素を増減できるのがrust vecの利点です。

実務で考える利用シーン

実務の場面では、データの総数が実行時まで確定しないケースがあります。

たとえばWebアプリでユーザー情報を一覧取得するとき、データの件数はAPIのレスポンスによって変わります。

このとき、要素の数に応じて柔軟にメモリを確保できるVector型が重宝されるでしょう。

またゲーム開発でも、敵キャラクターの出現数がリアルタイムに変動するシーンがあるかもしれません。

そのような場合にもrust vecが便利です。

一方で、要素を頻繁に追加・削除するときはパフォーマンス面を考える必要があります。

例えば、大量の要素を一度にベクターへ追加する場合、適切な容量(capacity)を確保しておけば再割り当てを減らすことができます。

そのため、実装時にはあらかじめ想定されるデータ量を意識しておくとスムーズですね。

メモリ割り当ての仕組み

rust vecはヒープ領域にメモリを確保し、要素の追加に合わせて容量が足りなければ再確保を行います。

コンストラクタのVec::new()vec![]マクロなどは、内部的には空の領域を持つだけです。

実際に要素が増えて足りなくなったタイミングで、より大きなメモリ領域を確保してデータを移動する仕組みになっています。

この動的割り当てが、固定長配列との大きな違いです。

加えて、Rustは所有権やライフタイムの仕組みによってメモリの安全性を確保します。

所有権がVec<T>にある限り、有効範囲外でメモリに触るといった事故を防ぐことができます。

もし大量のデータを扱う場合は、一度に領域を確保しておくwith_capacityを使うことで再確保の回数を抑えることができます。

再確保によるコストが気になるならば、事前に大まかな容量を指定しておくのも選択肢になります。

ベクターとイテレータの活用

rust vecに格納された要素を処理するときは、イテレータを使うケースが多いです。

イテレータを利用することで、要素をひとつずつ取り出して操作したり、集計処理をまとめて行えます。

例えば以下のコードでは、iter()を使って合計値を求めています。

fn main() {
    let numbers = vec![1, 2, 3, 4, 5];
    let sum: i32 = numbers.iter().sum();
    println!("合計値: {}", sum);
}

イテレータはメソッドチェーンを組み合わせると処理が見通しやすくなるので、開発現場でもよく使われる手法です。

さらに、要素の参照権限が必要かどうかによってiter()iter_mut()を使い分ける場面も出てきます。

そこがRustらしい部分で、所有権と合わせて理解するとコードの安全性を高められます。

実務では、大量のデータをまとめて変換するような場面で大変役立つでしょう。

ベクターとスライスの違い

Rustにはスライスという概念もあるので、rust vecとの違いが気になるかもしれません。

スライスは参照型の一種で、特定の連続したデータ領域を指し示すだけの仕組みです。

ベクターは自身が所有権を持ってヒープ領域にデータを格納していますが、スライスは所有権を持ちません。

例えばベクターから特定範囲を切り出す場合、&numbers[1..3]のように書くことが多いです。

このときの戻り値はスライスなので、要素のアクセスはできますが、追加や削除はできません。

一時的に一部分のデータだけを参照したいときにはスライスが便利ですが、内容自体を操作したいならベクターを使うことになります。

実務でも、リソースを無駄に増やさずに部分的な要素にアクセスしたい場面ではスライスが好まれるでしょう。

スライスは配列やベクターだけでなく、文字列(String)にも関連します。 範囲指定を誤るとパニックを引き起こすことがあるので、範囲外アクセスには注意してください。

ベクターの安全性と所有権

Rustはメモリ安全性を特徴としています。

そのため、ベクターに格納したデータに対する操作も、所有権の概念が深く関わります。

例えばvec![1, 2, 3]で宣言したものを別の関数に渡すとき、可変借用か不変借用かによって操作可能範囲が変わります。

これは複数のスレッドでベクターにアクセスするシーンでも役立ちます。

一方で、マルチスレッド環境で同じベクターを共有したい場合、Arc<Mutex<Vec<T>>>のように所有権を共有する仕組みが登場します。

こうした仕組みは少し難易度が上がりますが、実際の開発では複数のスレッドから同じデータを扱うケースもありますね。

このように、所有権と借用を理解することで、ベクターを含むコレクションの使い方がより安全になります。

複数のスレッドで安全にベクターを操作するには、共有のための仕組みを正しく利用する必要があります。 不変借用と可変借用の使い分けを、用途に応じて整理しておくと安心です。

まとめと次のステップ

ここまでrust vecの基本を見てきました。

固定長の配列と異なり、実行時に要素数を増やせる点がベクターの魅力です。

また、所有権や借用のルールと組み合わせることで、高い安全性を保ちながら柔軟なデータ操作が可能になります。

実務の場面でも、ユーザー情報やゲーム内のオブジェクトなど、規模や用途によってはベクターがよく利用されます。

もし皆さんがRustでの開発を始めるならば、まずは小さなプロジェクトで試してみると感覚が掴みやすいでしょう。

そして、イテレータやスライスなど、Rust特有の概念と一緒に学ぶことで全体像が見えやすくなります。

扱うデータの特性に合わせて、最適なコレクションを選ぶという意識を持つと、開発体験もスムーズに進むのではないでしょうか。

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