Scalaとは?オブジェクト指向と関数型を併せ持つプログラミング言語をわかりやすく解説

はじめに

Scalaとは、オブジェクト指向関数型の概念をあわせ持つプログラミング言語です。
名前だけは聞いたことがあっても、具体的に何を指しているのかピンとこない方もいるでしょう。
Javaの実行環境として有名なJVM上で動作し、高い開発効率や柔軟性を実現できるのが特徴とされています。

ただ、Scalaの概念や仕組みは初心者にとって少し難しく見えるかもしれません。
オブジェクト指向と関数型という二つの異なるパラダイムを統合していることもあり、どこから学べばいいのか戸惑う方が多いのではないでしょうか。

本記事では、プログラミング初心者でも理解しやすいように、Scalaの基本的な仕組みやメリット、実務での利用シーンなどを具体的に解説します。
これからプログラミングの学習を始める方、あるいは他の言語からステップアップしていきたい方の参考になれば幸いです。

この記事を読むとわかること

  • Scalaの基本的な特徴とオブジェクト指向・関数型の両面を持つ意味
  • 実際の開発現場でScalaが使われるケース
  • 初心者がScalaの考え方を理解するために押さえておくべきポイント
  • 他の言語との比較を通じたScalaならではの強み
  • Scalaを活用する上で知っておきたいビルドツールやフレームワークの概要

Scalaとは何か

Scalaは、2000年代にスイスのローザンヌ連邦工科大学(EPFL)の研究者たちによって開発されました。
JVM(Java Virtual Machine)上で動くため、Javaの環境があれば動かせるという利点があります。
さらに、静的型付けでありながら型推論の機能を持ち、コード量を極力抑えられるのが魅力です。

オブジェクト指向と関数型の統合

Javaのようにクラスやオブジェクトを使った設計ができる一方で、Haskellのような関数型のスタイルも取り入れています。
具体的には、メソッドを値として扱えたり、高階関数を活用して簡潔にロジックを記述できる点が挙げられます。
従来ならばオブジェクト指向言語と関数型言語を別々に学ぶ必要がありましたが、Scalaは両方の魅力を一体にまとめて提供しているのです。

コードのシンプルさ

Javaと同様に静的型付け言語であるにもかかわらず、型推論などの機能によって宣言がシンプルになります。
例えば、Javaでは明示的に型を記述しなければならないケースでも、Scalaはコンパイラが推測してくれます。
そのため、書くコード量が減り、可読性を高めることが期待できます。

Scalaが注目される理由

プログラミング言語は数多く存在しますが、Scalaが注目されるのにはいくつかの理由があります。
大規模なサービスでの利用を想定した高い拡張性と、関数型の特性を活かした並行処理のしやすさがポイントです。

JVMとの互換性

JVM上で動作するため、Javaとの相互運用性が高いのが強みです。
既存のJavaライブラリを流用しやすく、チームにJava経験者が多い場合でも比較的スムーズに導入しやすいと言われています。
これまでJavaで構築されてきた各種フレームワークやライブラリを活かせるので、導入コストを抑えたい現場で好まれる傾向があります。

機能的な書き方によるバグの抑制

Scalaでは、関数型の考え方を取り入れたコードを書くことで、状態の変化を最小限に抑える設計がしやすくなります。
プログラムが扱うデータの変更箇所が減るため、不必要なバグを回避しやすいという利点があります。
これは大規模開発や長期運用において、とくに効果を発揮するでしょう。

マイクロサービスとの相性

近年のシステム開発では、マイクロサービスアーキテクチャが注目されています。
複数の小規模なサービスが連携しあう構造を取るため、それぞれが独立して動作し、他のサービスへの影響を少なくできます。
Scalaは軽量なサービスを作りやすく、大規模分散システムとも親和性が高いとされています。

実務での活用シーン

ScalaはWebアプリケーション開発だけでなく、ビッグデータ解析や分散処理の分野でも活用されています。
その幅広さが、Scalaを学ぶメリットの一つにもなっているといえます。

Webアプリケーション

Play FrameworkはScalaによって書かれたWebアプリケーションフレームワークです。
RailsやLaravelのように素早く開発が進められることから、スタートアップ企業やプロトタイプ開発でも活用されます。
また、Javaとも高い互換性を持つため、Javaをベースにしたサービスへ移行する際のハードルも比較的低めです。

分散処理やビッグデータ

Apache SparkはScalaで書かれており、大規模データを分散処理するフレームワークとして多くの企業が利用しています。
Scalaを使いこなすことで、Sparkのコアな部分へも理解が及びやすくなるでしょう。
そのため、ビッグデータ分野でのデータエンジニアやデータサイエンティストにもScalaの知識が求められるケースがあります。

非同期・並行処理

メッセージ駆動型の分散アプリケーションを開発するAkkaというツールキットもScalaがベースです。
並行処理の設計に適しており、高負荷なシステムでもスムーズに動作させられる点が強みとなります。
リアルタイムで多くのリクエストをさばく必要があるサービスでは、ScalaとAkkaの組み合わせが選択されることがあるようです。

オブジェクト指向と関数型のメリット

Scalaの最大の特徴であるオブジェクト指向と関数型の融合には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、コードの再利用性や変更への強さといった点を中心に解説します。

コードの再利用性

オブジェクト指向の考え方では、共通する処理をクラストレイトとしてまとめます。
一方、関数型の要素では、データの流れを関数で受け渡すスタイルを用いることで、同じロジックをさまざまな場所で共有できます。
これにより、不要な重複コードを減らし、全体的なコード品質を高めやすいのがメリットです。

変更に強い設計

状態をあまり持たない関数型の書き方に慣れると、ロジックの変更を行いやすくなります。
副作用を少なくすることで、他の部分に影響を及ぼしにくくなるからです。
これは大規模開発では重要な要素であり、運用フェーズでもバグが広範囲に波及しにくくなる利点があります。

理解しやすい抽象化

Javaの抽象クラスやインタフェースと比較して、Scalaのトレイトはよりフレキシブルに使えるのが特徴です。
さらに、パターンマッチや高階関数などを組み合わせると、一見すると複雑そうですが、慣れてくるとロジックの流れが抽象化されて見通しが良くなります。
この抽象化によって複雑な処理をまとめやすくなるのも、Scalaの利点の一つです。

初心者が気をつけたいポイント

Scalaは高機能ゆえに、最初はどこから手を付けていいのか分かりにくいかもしれません。
ここでは、初心者が学び始めるときに気をつけるべきポイントを挙げておきます。

言語機能が豊富

一つの言語に、オブジェクト指向と関数型の機能が詰め込まれているため、言語仕様が広範囲に及びます。
初心者の方は、一度にすべてを理解しようとすると混乱しがちです。
まずは、基本的な文法と簡単なコレクション操作、クラスの書き方など、必要最低限の要素から触れていくと良いでしょう。

コードの書き方が複数ある

Scalaでは同じ処理を複数の書き方で表現できる場合があります。
たとえば、for式ひとつ取っても、従来の命令型スタイルかリスト内包表記のようなスタイルかで、表記が変わることがあります。
最初は混乱するかもしれませんが、コードをたくさん読むうちにパターンがつかめてくるでしょう。

SBTなどのビルドツール

Javaでよく使われるMavenやGradleの代わりに、Scalaでは SBT (Scala Build Tool)がよく利用されます。
依存関係の管理やテスト実行などを自動化できるため、大規模なプロジェクトでも適切に構成を管理できます。
最初はこのビルドツールの設定に慣れないかもしれませんが、プロジェクトの雛形を利用するなどして着実にステップを踏むことが大切です。

簡単なコード例

ここで、Scalaのプログラムがどのように書かれるのか、簡単な例を見てみましょう。
下記は"Hello, Scala!"と表示するだけのシンプルなコードです。

object HelloScala {
  def main(args: Array[String]): Unit = {
    println("Hello, Scala!")
  }
}

このコードは、objectキーワードで定義されたHelloScalaというオブジェクトのmainメソッドから実行されます。
Javaのpublic static void mainに相当する仕組みと考えるとわかりやすいでしょう。
また、Scalaでは型の指定をすべて省略することもできますが、初心者のうちは明示的に書いたほうが理解が進みやすいかもしれません。

Webアプリケーション開発におけるScala

Scalaの特徴が活きる場面として、Webアプリケーション開発が挙げられます。
高並行なアクセスを捌きやすく、非同期処理に向いた設計ができるからです。

Play Frameworkの特徴

Play Frameworkは、MVCアーキテクチャに沿ってWebアプリケーションを構築できるフレームワークです。
Javaとも併用できる柔軟性を持っていますが、Scalaで書くと一層シンプルにまとめられる場面が多いと言われています。
テンプレートエンジンやフォーム操作、ルーティングの設定も用意されており、Web開発でよくある機能を素早く組み込めます。

非同期I/Oと拡張性

非同期I/Oを標準でサポートしているため、大量のリクエストを同時に処理する必要があるサービスにも向いています。
コールバック地獄を避けるためにFutureやPromiseといった抽象化が使えるので、コードの見通しを保つことが可能です。
多様なプラグインも存在するため、必要に応じて機能を拡張しながら開発を進められます。

データ解析・分散処理におけるScala

ビッグデータ解析の分野でScalaが活躍しているのは、Apache Sparkの存在が大きな理由の一つです。
特に大量のデータをリアルタイムで処理する必要がある場合、Sparkの RDD (Resilient Distributed Dataset)などの概念が頼りになります。

Apache Sparkとの親和性

Apache Sparkのコア部分はScalaで書かれているため、Scalaを使うとSparkの機能を自然な文法で呼び出せるメリットがあります。
また、SparkとScalaを組み合わせると、Javaよりも短いコード量で分散処理のロジックを表現できるため、開発スピードが上がることが期待されます。
データサイエンスの現場でも、データを多角的に処理・分析する際にScalaが選ばれることがあります。

ストリーミング処理

Spark StreamingやStructured Streamingなどの機能によって、リアルタイムのデータストリーミングが可能です。
例えば、SNSの投稿やセンサーデータなどを連続的に処理し、即座に分析結果を得る仕組みを作ることができます。
Scalaの並行処理の考え方は、こういったリアルタイム解析でも役立つでしょう。

Scalaの開発環境とツール

開発環境を整えるうえで、エディタやIDEとビルドツールに加えて、各種ライブラリをどう導入するかが気になるポイントです。
代表的なツールとしてSBTがあるほか、IDEではIntelliJ IDEAが注目されています。

SBTによるビルド管理

SBTを使うと、プロジェクトのビルド設定や依存ライブラリの管理、テストの実行などを一括で行えます。
Scalaに特化したビルドツールなので、設定ファイルが比較的シンプルにまとまりやすいです。
たとえば、build.sbtというファイルでバージョンやライブラリ情報を記述し、プロジェクト全体を制御できます。

IntelliJ IDEAやVisual Studio Code

IntelliJ IDEAは、Scalaプラグインをインストールすると、コード補完やリファクタリングが行いやすくなり、多くの開発者から支持されています。
Visual Studio CodeにScalaの拡張機能を入れて開発を行う方もいます。
いずれのツールも、デバッグやコードフォーマット機能が用意されているので、開発効率を高めやすいでしょう。

コマンドラインだけでも開発は可能ですが、IDEや適切なビルドツールを活用することで、タイピングミスや構文エラーに早めに気づきやすくなります。

関数型プログラミングのポイント

Scalaで関数型プログラミングを行う際には、従来の命令型スタイルとは異なる思考が求められるかもしれません。
ここでは、関数型の考え方がどのように実装に反映されるかを簡単に触れてみます。

不変データ構造

関数型では、できるだけ 不変 (Immutable)なデータ構造を使うことが推奨されます。
この方針により、データの書き換えを最小限に抑えられるため、予測しにくいバグや副作用を減らすことができます。
Scalaの標準ライブラリでもイミュータブルなコレクション(List, Mapなど)が用意されています。

高階関数

関数を引数として渡したり、戻り値として返す仕組みが高階関数です。
Javaで同じような動きを実現しようとすると、匿名クラスなどで煩雑になりがちですが、Scalaではシンプルな文法で記述できます。
この機能を活用すると、柔軟な抽象化やロジックの再利用が容易になります。

他言語との比較

Scalaを選択するメリットをより明確にするため、JavaやKotlinなどのJVM言語との比較を簡単に見ておきましょう。
それぞれ良さがあるため、用途やチームのスキルセットに応じて選ぶのが現実的です。

Javaとの比較

Javaは歴史が長く、エンタープライズ環境で圧倒的な普及度を誇ります。
一方、Scalaはよりモダンな文法を使ってコンパクトに表現できるため、同じ機能を実装する場合にコード量を減らせるケースがあります。
ただし、Scalaを使うには新たな学習コストがかかる点には注意が必要です。

Kotlinとの比較

Kotlinも同じくJVM上で動作し、Android開発などで広く使われるようになってきました。
KotlinはJavaからの移行がしやすいという点が評価されていますが、関数型の要素に関してはScalaほど広範には取り入れられていない面があります。
その分、Kotlinは学習障壁が低めであるため、プロジェクトの規模や求められる柔軟性を踏まえて選択すると良いでしょう。

学習段階で抱えがちな疑問

初心者の皆さんがScalaを学ぶうえで抱えがちな疑問点について、いくつか取り上げてみます。
疑問を放置しないことで、よりスムーズにScalaの特徴を理解できるかもしれません。

クラスとオブジェクトの違い

Scalaにはclassobjectの二種類があり、Javaのstaticに相当するものがobjectで定義されます。
これらの役割が曖昧になると、どこにコードを書いていいか迷うかもしれません。
まずはobjectシングルトンオブジェクトとして使い、簡単なユーティリティ関数などをまとめる感覚で理解すると良さそうです。

パターンマッチの便利さ

Scalaにはパターンマッチという強力な仕組みがあり、条件分岐のコードをすっきりまとめられます。
ただ、最初はif-elseの代わりにmatchを使うスタイルに戸惑うかもしれません。
慣れてくると、あらゆる分岐ロジックを短く書けるようになるため、エラー処理や複数の条件分岐をきれいに整理できるでしょう。

エラーや例外の扱い

ScalaではJavaの例外クラスを使うことができますが、関数型の考え方では例外をできるだけ返り値に変換して扱うのが好まれます。
TryEitherといった型を利用してエラーを表現し、バグを早期に検知する設計が可能です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、安定したプログラムを書くうえで大きな効果を発揮します。

Scalaを使うメリットとデメリット

どんな言語にもメリットとデメリットがあります。
Scalaを選ぶべきかどうか迷っている方が多いと思いますので、ここで代表的なポイントを整理してみましょう。

メリット

  • オブジェクト指向と関数型両方の利点を得られる
  • Javaと相互運用が容易であり、既存のライブラリを活用しやすい
  • 簡潔な記述と型推論で、コード量を減らしつつ安全性を確保できる
  • SparkやAkkaなど、特定分野で注目される技術との相性が良い

デメリット

  • 言語仕様が多岐にわたるため、初心者には最初とっつきにくい
  • KotlinやGoなど、他のモダン言語と比べると学習リソースが限られる場合がある
  • チーム全体でScalaに精通していないと、導入・保守コストが高くなる可能性がある

オブジェクト指向と関数型の両面からシステムを設計できるのは大きな魅力ですが、その分学習すべき内容が多い点には注意が必要です。

キャリアと将来性

Scalaは大規模なシステムで採用される例もあり、特定の企業や分野で重宝されているのは事実です。
とくにビッグデータ関連や高負荷サービスでの需要は根強く、Scalaエンジニアを求める声もあります。

ビッグデータ・データサイエンス領域

Apache Sparkの登場以降、データ解析や機械学習の前処理部分をScalaで書くケースも増えてきました。
Pythonだけでなく、Scalaを併用しているデータエンジニアも少なくありません。
このように、大規模データ処理の仕組みを低レベルから理解できるという面では、Scalaが重宝されることがあります。

Webサービスの拡大

国内外のWebサービスで、Scalaをメイン言語として採用している事例もいくつか報告されています。
企業の成長に合わせてコードベースを柔軟に拡張しやすい点が評価されているようです。
一方で、企業全体での標準言語がJavaやKotlinの場合は、Scalaの学習コストを理由に敬遠されるケースもあるでしょう。

よくある誤解

Scalaは難しい、関数型は取っつきにくいといった声を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、実際には学ぶ順番や使いどころを押さえれば、そこまで複雑ではないとの意見もあります。

すべて関数型で書かなければならない?

Scalaを学ぶときに、関数型の書き方に強いこだわりを持ってしまい、「オブジェクト指向の要素は使うべきでないのでは?」と悩む方がいます。
しかし、Scalaの特性は両方のパラダイムを柔軟に利用できることです。
大事なのは、コードをより読みやすく安全に保つ方法をチーム全体で合意できるかどうかでしょう。

Javaを知らないと理解できない?

確かにScalaはJVM上で動くため、Javaの知識があると理解が早い部分があります。
ただ、あらかじめJavaを学ばなければ使えないというわけではありません。
コンソールアプリを動かす程度なら、必ずしもJavaの詳細を理解していなくても問題なく開発を進められます。

まとめ

Scalaとは、オブジェクト指向と関数型という二つの異なる概念を合わせ持ったプログラミング言語です。
JVMとの高い互換性と、コードを簡潔に書ける特性から、多くの企業の大規模開発やビッグデータ解析の現場で採用されています。

一方で、言語機能が豊富な分、最初は学ぶ範囲が広いと感じるかもしれません。
しかし、基本的な文法とプログラミングの基礎をしっかり押さえれば、オブジェクト指向と関数型の両面のメリットを同時に享受できるのがScalaの強みです。

  • JVM上で動作し、既存のJavaライブラリも活用しやすい
  • コードが比較的コンパクトになり、可読性や保守性を高めやすい
  • 大規模開発や分散処理において注目される技術との相性が良い

プログラミング未経験の方や初心者の方にとっては、初めて聞く専門用語も多く戸惑う部分があるでしょう。
それでも、Scalaの基本概念を押さえて少しずつ学んでいけば、実プロジェクトでも大いに役立つ言語となるはずです。
ぜひ、オブジェクト指向と関数型の良いところを同時に味わえるScalaの世界を楽しんでみてください。

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