Shell Scriptとは？初心者にやさしく解説

はじめに

Shell Scriptという言葉を聞いたことがある皆さんも、具体的にどんなものなのかイメージしづらいと感じるかもしれません。
普段、コマンドラインで実行しているコマンドをまとめて自動化したり、複数の操作をスクリプトとして一度に実行したりするために用いられるのがShell Scriptです。

PC上で作業を効率化する方法としては、GUI（グラフィカル・ユーザー・インターフェース）を使う手段が一般的です。
しかし、ある程度まとまった処理や繰り返しが多い作業では、Shell Scriptに代表されるスクリプト言語を覚えておくと便利な場面が多くなります。

皆さんがこの記事を最後まで読むことで、Shell Scriptの基本的な概念や書き方、そして実務での使われ方が分かるようになるでしょう。
プログラミング未経験者でも理解しやすいように、できるだけ平易な表現や具体例を交えて解説していきます。

この記事を読むとわかること

• Shell Scriptが何なのか、その概要と特徴
• 実務での活用事例や、どのような場面で役立つのか
• 基本的なShell Scriptの書き方や実行方法
• 開発や運用で気を付けるべきポイント
• 作成にあたって意識すると良いことや、よくある疑問点

Shell Scriptの概要と特徴

Shell Scriptとは何か

Shell Scriptとは、シェルと呼ばれるコマンドラインインターフェース上で実行する命令の集合を一つのファイルにまとめたものです。
シェルはいわば皆さんとOS（LinuxやUNIXなど）の間を取り持つ通訳のような存在で、文字で入力したコマンドをOSに伝えて実行させます。

Shell Scriptは複数のコマンドを連続して書いておき、それを上から順に実行するという単純な仕組みが基本となっています。
ファイルのコピーや移動のようなシンプルな作業から、サーバーの状態監視やログ解析といった高度な処理まで、多彩な用途で活用できるのが特徴です。

プログラミングというとハードルが高いイメージを持つ方も多いと思いますが、Shell Scriptは比較的短いコマンドの組み合わせで目的を達成できるのが魅力です。
シェル自体が用意する構文を利用すれば、条件分岐や繰り返し処理も簡単に記述できます。

Shell Scriptの歴史と活用分野

Shell Scriptは主にUNIX系OSの世界で長い歴史を持っています。
古くからシステム管理者が、サーバー内で定期的に実行すべき作業の自動化などで利用してきました。

現在ではLinuxサーバーの管理のみならず、開発環境の構築手順をスクリプト化するケース、またアプリケーションのビルドやテストを自動化するためにも使われています。
クラウド上のコンテナ環境や仮想環境のセットアップ手順をまとめてShell Script化しておけば、同じ環境を何度でも再現できるというメリットがあります。

GUI操作しかしてこなかった場合でも、Shell Scriptの基礎を習得しておくと効率化できる作業が増えるでしょう。
たとえば定期的なファイルバックアップ、ログの整理、複数のツールを組み合わせたデータ処理など、多岐にわたる場面で効果を発揮します。

コマンドラインとShellの関係

コマンドラインは、文字ベースの操作を行うためのインターフェースです。
WindowsではコマンドプロンプトやPowerShell、macOSやLinuxであればBashやZshなどが代表的なシェルとして知られています。

シェルの種類ごとに文法や標準で使える機能に若干の差があるため、皆さんがどのシェルを使っているかを把握しておくのも大切です。
この記事では主にBashを念頭に解説しますが、ZshやDashなどの他のシェルでもほぼ同様の考え方で理解できます。

Shell Scriptを作るうえで、シェルとコマンドラインの関係を理解しておくのは重要です。
基本的には皆さんが日常的に手動で入力しているコマンドを、そのままテキストファイル（スクリプト）に書き下ろしているイメージでOKです。

Shell Scriptを始めるメリット

作業の効率化

普段手作業で実施している操作を、自動化できるのがShell Scriptの大きな魅力です。
例えば「毎日決まった時間にバックアップを取り、ログをまとめて別ディレクトリに移動する」といった処理があるとします。

Shell Scriptを使えば、以下のような一連の操作をまとめて実行できます。

• バックアップコマンドを起動
• 結果を特定のフォルダに保存
• ログファイルを圧縮して保存場所を整理

人間がやると、操作ミスやコマンドの打ち間違いがあるかもしれません。
しかしShell Scriptなら、ファイルに書いてある通りにきっちりと実行してくれます。

知っておくと便利な場面

Shell Scriptの用途は、開発や運用の現場で幅広いです。
皆さんが初心者としてプログラミングを始めた際、GUIツールだけでは解決できない処理をバッチ的に回したい場面が出てくるかもしれません。

たとえば「大量のCSVファイルを特定のルールで加工して集計したい」といった作業がある場合、1つ1つ手作業でアプリケーションを立ち上げるのは大変です。
Shell Scriptと、Linux標準コマンドであるgrepやawkなどを組み合わせることで、テキストの加工やファイル操作を素早く完了できます。

開発環境のセットアップも同様です。
たとえば「必要なツールのインストール→設定ファイルのコピー→環境変数の調整→依存するライブラリの取得」など、手順が多く複雑な場合、Shell Scriptを用意すれば一度コマンドを走らせるだけで作業を完了できます。

他のスクリプト言語との違い

自動化やタスク管理を行うスクリプト言語としては、PythonやRubyなども有名です。
それらは本格的なプログラミング言語としての機能を豊富に備えていますが、シンプルにOSコマンドを連続実行するのはShell Scriptの得意分野です。

Shell ScriptはOSレベルでの操作（ファイル操作やパーミッション変更など）を直接扱いやすく、構文も比較的軽量です。
一方で複雑な数値計算やデータ構造の処理は、Pythonなどに任せることが多い印象があります。

皆さんが最初に覚えるべきかどうかは、必要な作業によって変わります。
しかし、Linuxサーバーを扱う仕事や開発プロジェクトに関わるなら、Shell Scriptをある程度読めて書けるようになると何かと重宝されるでしょう。

実務での活用事例

システム管理の自動化

企業のサーバー運用では、毎日定期的に行わなければならないバックアップや、サーバー状態の確認作業があります。
具体的には、CPUやメモリの使用率、ディスクの空き容量などを調べ、問題があれば管理者に通知するような仕組みを組むことが多いです。

Shell Scriptであれば、必要なコマンドを並べて記述し、処理結果をログファイルに出力できます。
さらに、そのログを別のShell Scriptで解析し、条件に応じてメールを送信したり、別のツールと連携してアラートを上げたりといった拡張が容易に行なえます。

ログ収集やレポート作成

サーバー上で動作しているアプリケーションが出力するログを整理したい場合、Shell Scriptを用いて複数のログファイルをまとめ、日付ごとに分割して保管する仕組みを作ることができます。
集計を行い、アクセス数やエラー発生回数などを取りまとめてCSVに出力する例も少なくありません。

これを手動で行うとなると、ログファイルを一つ一つ開いてコマンドを打ち、それをコピー＆ペーストで別ファイルに移し…という煩雑な手順になります。
Shell Scriptなら、これらをワンコマンドで済ませられるので大変助かります。

JenkinsなどCI/CDでの利用

ソフトウェア開発の現場では、テストの自動化やビルドの自動化が欠かせません。
CI/CDツールとして知られるJenkinsやGitHub Actionsの設定ファイルで、Shell Scriptが呼び出される形で処理を行うことがよくあります。

アプリケーションをビルドする前の依存関係チェック、ビルドした成果物を特定の場所に配置するステップ、テストスクリプトの実行など、開発プロセス全体を連鎖的に自動化できます。
これにより開発者が手動で行う作業が大幅に減り、ミスの防止と生産性向上につながります。

Shell Scriptの基本的な書き方

シェバンの指定方法

Shell Scriptを書く際、ファイルの冒頭に#!という記号を使って、どのシェルで実行するかを指定することが一般的です。
これを シェバン (Shebang)と呼びます。

例えばBashを使う場合は、スクリプトの先頭に以下のように書きます。

#!/bin/bash

この行を入れることで、スクリプトを実行する際にbashを呼び出してもらえるようになります。
OSによってbashのパスが異なる場合がありますが、多くのLinuxディストリビューションでは/bin/bashが一般的です。

スクリプトの先頭にシェバンを書いておくと、直接実行権限を付与して起動したときに、指定されたシェルが自動的に呼ばれます。
逆にシェバンを書かずに、例えばbash myscript.shのようにコマンドから明示的に呼び出すケースでは不要です。

変数と環境変数

Shell Scriptでも、変数を使って値を一時的に保管できます。
例えば以下のように書くと、USERNAMEという変数にtarouという文字列を格納できます。

USERNAME="tarou"
echo $USERNAME

変数の宣言時はイコールの前後に空白を入れない点に注意してください。
変数を参照するときは$USERNAMEのように書きます。

また、環境変数と呼ばれるシステム全体で使われる変数があります。
PATHやHOMEといったものが代表例ですが、Shell Script内でそれらを上書きすることも可能です。
ただし、環境変数を扱う際は他のプログラムやシェル設定に影響が及ぶ場合もあるため、上書きする場合は慎重に行いましょう。

条件分岐とループ処理

Shell Scriptでは条件分岐や繰り返し処理といった基本的な制御構文も利用できます。
例えば条件分岐にはif構文を使い、次のように書きます。

if [ -f /path/to/somefile ]; then
  echo "ファイルが存在します"
else
  echo "ファイルが存在しません"
fi

[ -f ... ]はファイルが存在するかをチェックする式です。
条件が真ならthenブロックを実行し、そうでなければelseブロックを実行します。

繰り返しにはforやwhileなどがあります。
以下の例はforループで複数のファイルを処理する例です。

for file in *.txt
do
  echo "$file を処理中"
done

このようにShell Scriptの制御構文はシンプルなので、初心者の方でも慣れるのは難しくないでしょう。

コマンドの使い方

Shell Scriptのコアとなるのは、外部コマンドの呼び出しです。
ファイル操作に使われるcpやmv、テキスト検索に使われるgrepなど、Linux/UNIX環境で標準的に利用されるコマンドを組み合わせていきます。

例えばディレクトリ内のすべてのCSVファイルをまとめてコピーしたいなら、以下のように書きます。

#!/bin/bash

mkdir backup_csv
cp *.csv backup_csv/
echo "すべてのCSVファイルをbackup_csvディレクトリにコピーしました"

これをスクリプトとして保存して実行すれば、簡単にファイルのバックアップがとれます。
Shell Scriptはこうしたコマンドの連携を容易にするための仕組みと言えるでしょう。

Shell Scriptの実行方法

実行権限の付与

Shell Scriptをそのままの状態で実行しようとすると、「権限がありません」とエラーが出る場合があります。
そういった場合は以下のようにchmodコマンドを使って実行権限を付与します。

chmod +x script.sh

これでスクリプトファイルに実行権限が付与されるため、./script.shのように直接実行できるようになります。
なお、シェバンを省略したスクリプトの場合、bash script.shと書いてbashコマンド経由で実行する方法もあります。

ファイルに付与する権限には、所有者とグループ、その他ユーザー向けなどが存在しますが、個人で使う場合は+xで充分でしょう。
共有サーバーなどでの管理では、誰が実行できるかを意図的に制限しておく必要もあります。

標準入出力とパイプ

Shell Scriptでは、標準出力（stdout）と標準入力（stdin）の使い方が重要です。
コマンドが出力した文字列を別のコマンドに渡すときは、パイプ|を使います。

例えばlsコマンドで得たファイル一覧から、文字列testが含まれる行だけを抽出したい場合は以下のようになります。

ls | grep test

Shell Scriptの中でもこのようにパイプを用いて複数のコマンドを連結し、処理をステップごとに組み合わせていきます。
標準出力をリダイレクトしてファイルに書き出す>や、標準入力からファイルを読み込む<も組み合わせれば、さらに柔軟な処理が可能になります。

デバッグ方法

Shell Scriptの動作を調べたい場合、スクリプトの実行時にデバッグモードを有効にできます。
例えば以下のように書くことで、コマンドが実行される前にその内容を表示してくれます。

bash -x script.sh

また、スクリプト内でもset -xと書いてデバッグを有効化し、set +xで無効化する、といった制御ができます。
想定した動きになっているかを細かく確認したいときに便利です。

エラー原因を探る際には、途中で変数の中身をechoしてみたり、条件分岐の手前でログ出力を挟んだりすることも多いでしょう。
Shell Scriptは比較的シンプルな動きなので、一つ一つのステップを追うだけでもバグの原因を特定しやすいです。

Shell Script作成時の注意点

エラー処理とトラップ

Shell Scriptでは、あらゆるコマンドが正常に終了するとは限りません。
想定外の状況が発生した場合、どう処理するかを考えておく必要があります。

if文を使ってコマンドの終了コードをチェックし、失敗したらスクリプトを終了する、あるいはエラー用の処理を行うという方法が一般的です。
さらにエラーが発生した際に特定のコマンドを実行させるトラップ機能も存在します。
例えばtrapを使うと、シグナルを受け取ったときに特定の関数を呼び出したりできます。

こういった仕組みをしっかり組み込んでおくと、異常が起こった際にログを出力してスクリプトを安全に終了させることができ、システムの信頼性が高まります。

可読性の高い書き方

Shell Scriptの可読性を意識しないまま書くと、複数のコマンドや条件分岐が入り乱れ、どこに何が書いてあるのか分かりにくくなりがちです。
関数を使う、適度にコメントを入れる、インデントを整えるなど、読み手が理解しやすいように工夫しましょう。

関数を利用すれば、function backup_files() { ... }のようにまとまった処理を定義できます。
こうすることで、メイン部分のスクリプトからはbackup_filesという呼び出しだけにしておき、細かい処理を隠蔽できます。
これにより、Shell Scriptが複雑化してもメンテナンスが行いやすくなります。

実行環境の差異に注意

Shell Scriptはシェルによって微妙に文法が異なったり、一部のコマンドの仕様が違っていたりする点に注意が必要です。
BashとZshでエイリアスの扱いが違う、あるいはLinuxディストリビューションが変わるとパッケージ名やディレクトリ構成が異なる、といったケースがあります。

皆さんが書いたスクリプトを他の環境でも使いたい場合は、bashで統一するのか、POSIX互換シェルとして書くのかなど、ある程度方針を決めると良いでしょう。
また、外部コマンドに依存する部分では、そのコマンドがインストールされているか、バージョンが違いすぎないかの確認も大切です。

実行コマンドの例

ファイル操作

Shell Scriptでよく使われるコマンドの一つに、ファイル操作のcpやmvがあります。
例えば、直下にある画像ファイル（拡張子が.pngや.jpgなど）をまとめて移動するときは次のように書けます。

mkdir images_backup
mv *.png *.jpg images_backup/
echo "画像ファイルをimages_backupディレクトリへ移動しました"

このようにシンプルな一文で一括処理が可能です。
GUIを使ったドラッグ＆ドロップより速いケースも多く、スクリプト化しておくとさらに効率化が進みます。

テキスト処理

テキスト処理ではgrepやsed、awkなどを組み合わせて使うことが多いです。
例えば「すべてのテキストファイルから特定のキーワードを含む行だけを抽出し、別ファイルにまとめる」といった作業をしたいときは、次のように書けます。

KEYWORD="error"
grep -i "$KEYWORD" *.txt > error_lines.txt
echo "errorを含む行をerror_lines.txtに書き出しました"

さらにsedを組み合わせれば、一部の文字列を置換したり、条件付きで行を削除したりといった編集も容易です。
テキストが大量にある場合や、大きなファイルを扱う場合でも、Shell Scriptならストレスなく処理できることが多いでしょう。

正規表現の活用

grepやawkなどは正規表現を活用できます。
正規表現を使えば、「特定のパターンに合致する行だけ」を抽出するといった操作を一度のコマンドでこなせます。
例えばメールアドレスの形式に一致する行だけを探すなど、細かな条件でテキストをフィルタリングする場面でも有効です。

皆さんがShell Scriptを書いていると、「入力データはこのような形式だろう」という前提に基づいて処理を組み立てる場面があるかもしれません。
そういった際に正規表現を組み合わせると、誤ったデータを弾いたり、必要な部分だけを抜き出すことが簡単にできます。

よくある質問と対策

WindowsでShell Scriptを使うには

Windows環境にも、WSL（Windows Subsystem for Linux）やGit Bash、Cygwinなどシェルを動かす方法がいくつか存在します。
もし皆さんがWindowsを使っていても、これらのツールを導入すれば、ほぼLinuxに近い形でShell Scriptを実行できます。

ただし、Windows特有のファイルパスの扱いや文字コードの問題に気を付ける必要があります。
WSLならLinuxと同じような動作を期待できますが、Git Bashでは細かい部分で差が出ることもあるため、最初は単純なスクリプトから試してみるのが良いでしょう。

パフォーマンス向上のコツ

Shell Scriptは基本的に外部コマンドを連続して実行する仕組みなので、スクリプト自体の処理速度が極端に遅くなることは多くありません。
とはいえ、無駄にforループを多用したり、大量のファイルを1つずつ処理していると、結果的に時間がかかるケースはあります。

一つのコマンドで複数の処理をまとめて行えるか検討したり、処理対象をまとめるバッチ的なアプローチを考えるだけでも、体感的な速度が大きく変わる場合があります。
また、CPU負荷の高いコマンドを並列実行するときは、システム全体の負荷にも注意が必要です。

セキュリティ面の考慮

Shell Scriptはファイル権限や環境変数を扱うため、誤った書き方や過度に広い権限設定はセキュリティ上のリスクになることがあります。
一度スクリプトに実行権限を付与すると、意図しない人がそのスクリプトを起動してしまう可能性もゼロではありません。

スクリプトで削除系の操作を行う際は、とくに慎重なチェックを実装しましょう。
意図しないディレクトリに対してrm -rfを実行してしまうと、取り返しのつかない問題に発展することもあります。

まとめ

Shell Scriptとは、シェル上で実行するコマンドをまとめてスクリプト化することで、繰り返しの作業や複雑な手順を自動化できる便利な手法です。
サーバー運用だけでなく、開発環境のセットアップやログ処理など、さまざまな場面で役立ちます。

初心者の方が最初に取り組む場合、シェバンの記述方法や実行権限の設定あたりを押さえておけば、スクリプトを作成して試すことができるようになります。
その後はif文やforループなどの制御構文を使いこなし、必要なコマンドを組み合わせることで多彩な自動化が実現できるはずです。

Shell Scriptはとても単純な文法でありながら、環境差異やファイル権限、外部コマンドの依存など細かい注意点が多いのも事実です。
しかし、実際の運用や開発現場では今でも頻繁に活用される技術ですので、ぜひ基本を押さえてみてはいかがでしょうか。