【Git】空コミットとは?メリットと作り方を初心者向けに解説
はじめに
Git では、ファイルを変更していない状態でもコミットの履歴を残したいことがあります。
たとえば、プロジェクトの区切りを明示したり、特定のイベントをトリガーさせるためにコミットが必要な場合などが挙げられます。
しかし通常、ファイルの変更がないとコミットできないようになっています。
そこで登場するのが 空コミット です。
何も変更していないのにコミットを残す機能は、開発の流れを整えるうえで役立ちます。
とはいえ、あまり使う機会がないと感じる方もいるかもしれません。
そこで今回は、空コミットの概要から活用シーン、具体的なコマンド例などをわかりやすくまとめます。
初めてGitに触れる方でも理解しやすいよう、専門用語をなるべく噛み砕いて説明します。
この記事を読むとわかること
- 空コミットとは何か
- 空コミットが役立つ場面
- 空コミットを作るための具体的なコマンド例
- メリットとデメリットの整理
これらを押さえることで、たとえファイルの変更がない状態でも意図的にコミットを残す方法や、実際の開発でどう役立てるかを理解できます。
Gitの空コミットとは
まず、空コミットとは 「何も変更点がないのにコミットを行う操作」 のことです。
通常、Gitではファイルに何らかの変更があったときに git commit
コマンドを使って履歴を残します。
しかし、オプションをつけることで、ファイルが変更されていなくてもコミットとして履歴を記録できるのです。
ここで疑問に思うかもしれません。
「そもそも、変更がないのにコミットを作る必要はあるのか?」と。
確かに、通常の流れではあまりない操作です。
しかし実際には、以下のようなケースで利用されることがあります。
- 新たなブランチを切った直後に、区切りとして履歴を残す
- 継続的インテグレーション(CI)や自動デプロイなどで、特定のフックやジョブを走らせるためのトリガーに使う
- チームでの開発において、意図的に重要なメッセージを残す(けれどコード上の変更はない)
空コミットを使うことで、変更がない状態でも履歴を残せるようになります。
結果的に、コミット履歴が一貫性を保ちながら情報を蓄積できるので、全体的なプロセス管理がしやすくなるでしょう。
空コミットが役立つ場面
空コミットが具体的にどんな場面で活躍するのかを、少し掘り下げてみましょう。
1. CIやCDなどを起動させたいとき
自動テストや自動デプロイの仕組みを導入している場合、コミットを契機としてパイプラインが動くように設定することがあります。
その際に、コードの変更がなくてもパイプラインを再実行したい場合に空コミットが有用です。
2. 開発段階の区切りをつけたいとき
新しい機能を実装する前や、作業途中で一旦手を止めて状態を明確にしておきたい場合があります。
わざわざファイルを変更しなくても、空コミットを入れるだけで「ここで区切りを入れた」という目印を履歴に残すことができます。
3. 重要なメッセージを伝えたいとき
たとえば「このタイミングで特定の手続きが完了した」「契約上の手続きが完了した」など、コードとは直接関係のない情報を開発履歴に残したい場合もあるでしょう。
空コミットでコミットメッセージだけを残すことで、チーム全体が見やすい履歴となる可能性があります。
4. Gitフックを手動でテストしたいとき
Gitにはコミット時やプッシュ時などに任意のスクリプトを実行できるフック機能があります。
しかし、何も変更を加えずにそのフックが正しく動くかどうかを確認したい場面では、空コミットがテスト用として有用です。
このように、空コミットは「とにかく履歴を残しておきたい」「変更なしでも何らかのトリガーを引きたい」というときに重宝します。
使いどころ次第では、チーム開発で役立つ場面が増えるはずです。
空コミットのメリット
空コミットにはいくつかのメリットがあります。
主だったものを挙げてみましょう。
コミット履歴の可視化
コードの変更がない状態でも、必要に応じてタイムスタンプ的な履歴を残すことができます。
これによりプロジェクトの流れを明確にしやすくなります。
特定のイベントやジョブを再実行できる
CI/CDなどのパイプラインを再度動かしたい場合、無理やりコードを変更しなくてもコミットを発生させられます。
コミットトリガーを活用する環境で、柔軟な運用が可能になります。
不要なダミーファイルを作らずに済む
もし空コミットがなければ、わざわざ空ファイルを追加するなどして無理やり変更を作るしかありません。
そうするとリポジトリが余計なファイルで汚れてしまう恐れがあります。
空コミットであれば、実際のコードに影響を与えずにコミットできる点が大きなメリットです。
空コミットを多用しすぎるとコミット数が増え、ログが把握しづらくなる可能性があります。必要性を見極めて使うことが大切です。
空コミットのデメリット
一方で、空コミットには以下のようなデメリットも存在します。
コミット履歴が増えすぎる
意味のないタイミングで乱用してしまうと、本来の変更履歴が埋もれがちになり、チーム内で混乱が生じることがあります。
手順の理解が難しくなる可能性
初心者にとっては「どうしてファイルを変更していないのにコミットがあるのか」を理解しづらくなるかもしれません。
その結果、リポジトリの歴史を追いにくくなる懸念もあります。
手動で削除が必要な場合がある
空コミットを誤って入れてしまった場合は、不要な履歴として扱われることもあります。
その場合、履歴を修正したり、リセットしたりする手間が増えることがあります。
要するに、開発を効率化するための便利な機能である一方で、過剰に使うとコミット履歴が複雑になり、かえって混乱を招く恐れがあるわけです。
空コミットを作る方法
空コミットを作る方法はいくつかありますが、一般的なのは --allow-empty
というオプションを使うやり方です。
基本的には以下のような流れで行います。
- リポジトリのディレクトリに移動する
- コミット対象が特になくても、そのままコミットコマンドを実行する
- オプションとして
--allow-empty
をつける
これだけで、ファイルに変更がない状態でもコミットメッセージを残すことができます。
実際のコマンド例をいくつか見てみましょう。
git commit --allow-empty の使い方
git commit --allow-empty -m "特定の作業が完了したので区切り用のコミット"
このコマンドを実行すると、Gitは変更点がなくてもコミットを受け付けます。
コミットメッセージには、履歴を残す理由を簡潔に書いておくと、あとから見返すときにわかりやすいです。
実運用で使うときは、コミットメッセージをわかりやすく残すことを意識しましょう。
amendを使った空コミット編集
もし「空コミットを作ったけれど、あとからメッセージを修正したい」と思った場合は、コミットの修正(amend)機能を利用できます。
通常、 git commit --amend
を使うと直前のコミットに変更を加えることができます。
ファイルの変更内容だけでなく、コミットメッセージの修正にも使われます。
空コミット後にコミットメッセージを変更したい場合は以下の手順です。
git commit --allow-empty -m "初回空コミット"
- 「やっぱりメッセージを変えたい」と感じたら、次に
git commit --amend
を実行する - コミットメッセージを編集し、上書き保存する
具体的なコマンド例としては次のようになります。
# 空コミットを作成 git commit --allow-empty -m "初回空コミット" # 直前のコミットを修正 git commit --amend -m "修正したコミットメッセージ"
amendは直前のコミットを上書きする操作なので、共同開発中にリモートへプッシュしたあとにやるとチームメンバーとの履歴が食い違う原因になることがあります。
個人での作業や、プッシュ前であることを確認したうえで使うのがよいでしょう。
まとめ
空コミットを使えば、実際のコードに変更がなくても履歴に区切りを入れたり、CI/CDパイプラインを手軽に再実行できたりします。
使いどころ次第では、開発効率を高めるための一つの方法となるでしょう。
一方で、空コミットの乱用はコミット履歴の可読性を下げるリスクがあります。
コミットメッセージの管理も含め、チームの合意と運用ルールを明確にしておくと、無駄なトラブルを避けられるでしょう。
初心者の皆さんは「空コミット」という存在を知っておくだけでも、Gitの操作の幅が広がるはずです。
いざというときの選択肢として、頭の片隅に置いてみてください。