Gitの仕組みを初心者向けにわかりやすく解説

Web開発

はじめに

皆さんはGitという言葉を耳にしたことはあるでしょうか。

Gitはソフトウェアの開発現場でとてもよく使われているバージョン管理システムです。 複数人が同じファイルを編集しても、お互いの作業内容をちゃんと把握できるように管理する役割を担っています。

この記事では、Gitの仕組みや、どういった場面で役立つのかをできるだけ具体的に説明していきます。 プログラミングが初めての方でも理解しやすいように、専門用語はなるべくかみ砕いてお伝えします。

もし「Gitって何だろう?」と疑問を感じているなら、ここで一度おさらいをしてみませんか。

この記事を読むとわかること

  • Gitの基本的な役割とメリット
  • Gitの仕組みとデータの管理方法
  • 実務で想定されるGitの活用シーン
  • 主なコマンドの使い方とブランチ運用
  • Gitを使う上で気をつけたいポイント

これらを押さえることで、バージョン管理がなぜ便利なのかを一通り理解しやすくなるでしょう。

Gitとは何か

Gitは、ソースコードやファイルの変更履歴を追跡・管理できる仕組みを提供するバージョン管理システムです。 たとえば大人数で一つのプログラムを作る場合、誰かが修正した箇所がわからなくなったり、変更した結果としてバグが増えてしまうリスクがあります。

しかしGitを使うと、過去の変更履歴を簡単にたどることができ、プロジェクトを以前の状態に戻すことも可能です。 そのため、どこで不具合が発生したのかを確認しやすくなるのです。

Gitによるバージョン管理の全体像

Gitでは、作業履歴をコミット(記録)という単位で積み重ねていきます。 コミットごとに「この時点で何を変更したか」という情報が集約されるため、後から見返しても変更内容を把握しやすいのです。

たとえば、次のようなステップで少しずつファイルを更新した場合を考えてみてください。

  1. 最初のファイルを準備する
  2. 新しい機能を追加する
  3. 不具合の修正を行う

これらの段階をコミットとして残しておけば、それぞれの変更に紐づいたファイルの状態やコメントを後から確認できるわけです。

Gitが管理するのは「差分」ではなく「スナップショット」

Gitは変更の履歴管理をスナップショット方式で行っています。 ここでいうスナップショットとは、ある時点のディレクトリ(フォルダ)やファイルの状態を丸ごと撮影したようなイメージです。

ただし、実際の内部処理は不要な重複を避ける仕組みがあり、効率的に保存されるようになっています。 結果として、ファイルの一部だけを差分管理しているように見える場合もありますが、大きな考え方としては「ファイルの一枚写真を次々に撮り、その連続を残す」というイメージを持っておくとわかりやすいです。

Gitの仕組み

では、もう少し具体的にGitの仕組みを見ていきましょう。

ローカルリポジトリとリモートリポジトリ

Gitで管理するデータの集まりのことをリポジトリと言います。

  • ローカルリポジトリ:手元のパソコンで作業し、各自が変更をコミットして管理する場所
  • リモートリポジトリ:他のメンバーと共有するサーバー上のリポジトリ

一般的なフローは以下のようになります。

  1. 自分のローカルリポジトリでファイルを編集
  2. 編集したファイルをステージングエリアに追加
  3. コミットすることで変更を履歴として確定
  4. リモートリポジトリへプッシュして共有

この一連の流れを理解しておくと、複数人での開発でも混乱しにくくなります。

ステージングエリアとは

Gitでファイルをバージョン管理する際は、ステージングエリアという場所を経由してコミットに含めるファイルを選択します。

  1. 作業ディレクトリ:手元でファイルを作成・編集する場所
  2. ステージングエリア:次のコミットに含めたい変更を一時的に集める場所
  3. ローカルリポジトリ:コミット履歴が保存される場所

少し面倒に感じるかもしれませんが、ステージングエリアを挟むことで「今のコミットにはAファイルだけを含めたい」「Bファイルは別のコミットに分けたい」といった細かな制御が可能になります。

コミットで履歴を積み重ねる

編集したファイルをコミットすることで、Gitは「どのファイルを、どう変更したのか」というスナップショットをローカルリポジトリに残します。 コミットメッセージには、変更内容や意図を簡潔に書いておくと後から読み返すときに役立ちます。

たとえば次のように操作してみます。

# Gitリポジトリを初期化
git init

# ファイルの作成・編集
echo "Hello World!" > sample.txt

# ステージングエリアへ追加
git add sample.txt

# コミットを作成(メッセージ付き)
git commit -m "Add sample.txt with Hello World"

一連の流れはわかりやすい例ですが、ここで重要なのはステージングエリアを経由し、コミットとして変更を確定させている点です。

実務で想定される活用シーン

Gitはプログラミングでの利用が多い印象かもしれませんが、実はドキュメント管理などでも使えます。

コラボレーション

数名~数十名といった規模の開発を進めるときは、複数人が同じファイルを編集する場面があります。 それぞれが同時にファイルを書き換えても、Gitならきちんと合流(マージ)し、最終的な仕上がりを1本化することができるのです。

ブランチという機能を利用すれば、各自が別の枝(branch)を作って作業できるため、作業途中で発生するエラーや失敗の影響を最小限に抑えられます。

テスト的な開発やトライアル

新しい機能を試してみたいときに、既存の開発ラインに影響を与えたくないケースがあるでしょう。 その場合はブランチを切って試験的なコードを書き、動作を確認してから必要に応じてマージする流れがよく用いられます。

もし不具合が大きい場合、ブランチごと破棄すれば元の状態にすぐ戻せます。 この柔軟さは、Gitが採用している分散型バージョン管理ならではの強みです。

Gitの主なコマンドと使い方

ここでは、特によく使う代表的なコマンドを簡単に紹介します。 初心者の方がつまずきやすいのは、ファイルの追加やブランチ操作です。

git init

新たにGitリポジトリを作成するときに使うコマンドです。 指定したディレクトリ内に、Git管理のための隠しフォルダが作成されます。

cd my_project
git init

git add

作業ディレクトリの変更をステージングエリアに追加するときに使います。 全部まとめてステージングしたい場合は git add . のようにすると楽です。

git commit

ステージングエリアにある変更をコミットし、ローカルリポジトリに履歴として保存します。

git commit -m "Initial commit"

git branch

新しいブランチを作成したり、現在のブランチを確認するためのコマンドです。 例えば次のように使います。

# 新しいブランチを作成
git branch new-feature

# ブランチの一覧を表示
git branch

git checkout または git switch

ブランチを切り替えるときに使います。
git checkout ブランチ名 で移動したり、git switch ブランチ名 でも同様にブランチを切り替えられます。

git merge

他のブランチで作業した内容を、現在のブランチに統合するときに使います。

# mainブランチに切り替え
git checkout main

# new-featureブランチの変更を統合
git merge new-feature

git push

ローカルのコミットをリモートリポジトリに送信するコマンドです。 複数人で共有するときは、ここでプッシュした内容がチームの全員から見えるようになります。

git push origin main

git pull

リモートリポジトリから最新の変更を取得するコマンドです。 他のメンバーがプッシュした変更を自分のローカルリポジトリに反映させたいときに使用します。

git pull origin main

ブランチとマージの仕組み

Gitのブランチは、同じリポジトリ内で同時並行で開発を行うための枝分かれのようなものです。 大まかな流れは下記のとおり。

  1. 作業用のブランチを作成
  2. ブランチ内で機能開発や修正を行う
  3. 問題がなければメインブランチに取り込む(マージ)

メインブランチはプロジェクトの本線とも呼ばれ、安定した状態を保つのが基本的な考え方です。 各自が別のブランチを持ち、それらを都度マージすることで、複数人が同時に働いても衝突を最小限に抑えることができます。

マージコンフリクト

ブランチをマージするときに、同じファイルの同じ行を別の方法で変更していた場合などは「コンフリクト」が発生します。 コンフリクトが起きたら、ファイルを手動で修正して整合性を取ります。

コンフリクトは一見面倒ですが、どこが衝突しているのかをGitが教えてくれるので、気づかずに上書きしてしまうリスクを避けられます。

リモートリポジトリの利用

チーム開発では、GitHubやGitLabなどのホスティングサービスをリモートリポジトリとして使うことが一般的です。 ローカルで作業した変更をプッシュすると、リモートリポジトリにあるファイルも更新されます。

また、リモートリポジトリを使うメリットは、万が一ローカル環境が壊れたりパソコンを紛失してしまっても、リモートに最新の状態が残っていればやり直せることです。 バックアップとしても有効な活用方法と言えます。

コミットメッセージを適当に書いてしまうと、後から履歴を振り返るときに何を変更したのかがわかりにくくなることがあります。
プロジェクトが大きくなるほど困りやすいので、メッセージはわかりやすくまとめる習慣をつけましょう。

Gitを使う上で気をつけたいポイント

Gitを運用する際に、初心者の方がつまづきがちなポイントをいくつかご紹介します。

こまめなコミット

どこまで変更したらコミットすべきか、明確なルールはありません。 ただし、コミットの粒度(どのくらいの変更単位でコミットするか)はなるべく小さくした方が、後々トラブルシューティングがしやすくなります。

大きな変更をまとめて一度にコミットすると、後で不具合が出た際に変更箇所を特定するのが難しくなるからです。

必要に応じてブランチを整理する

作業ごとにブランチを作るのは便利ですが、放置しているとブランチが大量に増えて把握が難しくなります。 不要になったブランチは削除して、なるべくリポジトリの構造を整理しておくと良いでしょう。

PullしてからPush

リモートリポジトリで他の人が変更を加えている可能性があるときは、自分がPushする前にPullで最新の変更を取り込むようにすると、コンフリクトを減らすことができます。

トラブルシューティング

Gitの運用で起こりがちなトラブルとその対処例です。

間違ったブランチで作業してしまった

別のブランチで作業するはずが、うっかりメインブランチに直接コミットしてしまうことがあります。 こういった場合は、変更内容を新しいブランチに移動させてから、メインブランチではコミットを打ち消すなどの対処が必要です。

直前のコミットを修正したい

コミットメッセージやちょっとした変更漏れを修正したい場合、git commit --amend を使うことで直前のコミットを更新できます。 ただし、リモートリポジトリに既にPush済みの場合は、履歴がズレる可能性があるので注意しましょう。

マージコンフリクトの解消がわからない

コンフリクトが起きると、該当箇所が <<<<<<< HEAD のような印で区切られます。 手動で重複部分をまとめてファイルを保存し、再度コミットすれば解決可能です。

難しく感じるかもしれませんが、コマンドやワークフローに慣れればGitは大変便利なツールです。
一歩ずつ試しながら覚えてみてください。

まとめ

ここまでGitの仕組みと、実際の使い方や注意点について紹介しました。

Gitは複数人での開発やデータのバックアップに役立ちますが、ブランチの使い方やコミットメッセージの管理方法など、ルールを明確にしておくとさらにスムーズになります。 また、スナップショット方式によっていつでも過去の状態を再現できるという点は、とても心強い機能です。

実際に数回使ってみると、学ぶことも多く感じられるかもしれません。 まずはローカルリポジトリで少しずつコミットを重ねながら、ブランチの切り替えやマージを試してみましょう。
そうするうちに、Gitがいかに便利な仕組みを提供しているかが実感できるはずです。

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