Swagger とは?初心者にもわかりやすいAPIドキュメントの基本
はじめに
プログラミングに興味を持ち始めた皆さんは、実務でAPIを扱うことがどのような作業なのかイメージがつきにくいかもしれません。
特にAPIドキュメントの作成は、開発者同士の意思疎通をスムーズにする大切な工程です。
ここで登場するのが Swagger と呼ばれるツールです。
今回はSwaggerとは何かを、実際の開発シーンをイメージしながらシンプルに説明していきます。
文章の途中ではOpenAPIという言葉も登場しますが、これらの関係性を理解することで、APIドキュメントの扱いがずっと楽になるはずです。
初めての方にもわかりやすいよう、専門用語はなるべくやさしく解説します。
Swaggerの概要
Swaggerは、REST APIの仕様を記述して管理するための一連のツール群として知られています。
ほとんどの場合、OpenAPIという仕様と同じ文脈で語られることが多く、SwaggerはOpenAPI仕様の実装を実現するためのツールセットを指しています。
実際の開発現場では、APIを提供するチームと利用するチームが異なることがよくあります。
そのためAPI仕様が曖昧だと、実装段階で大きな齟齬が生まれてしまいます。
Swaggerを使うと、APIの仕様を可視化しながら誰でも確認しやすいドキュメントを生成できます。
そうすることで、開発チームやステークホルダー同士のコミュニケーションがスムーズになります。
SwaggerとOpenAPIの関係
SwaggerとOpenAPIは混同されがちですが、実は微妙に役割が異なります。
- OpenAPI: REST APIの仕様を定義するためのフォーマット
- Swagger: OpenAPI仕様を活用して、ドキュメント生成やテストなどを行うツールセット
最新のOpenAPIは3.1がリリースされており、より柔軟なスキーマ定義などが可能になっています。
一方でSwaggerとしては、Swagger EditorやSwagger UI、Swagger CodegenといったツールがOpenAPIフォーマットを扱えるようにアップデートされています。
これにより、ブラウザで簡単にAPIを試せるUIを提供したり、コードの雛形を生成したりできます。
なぜSwaggerが便利なのか
Swaggerを利用すると、ドキュメント作成と同時にAPIのテストや設計ができます。
それまでドキュメントはWordやExcelなどで管理していたケースもありますが、APIの仕様変更があるたびに更新するのは大変です。
Swaggerでは、コードのようにAPI仕様を一元管理できるため、変更点があれば素早く反映できます。
さらに自動生成されるドキュメントはブラウザ上で確認できるため、デザイナーやビジネス側の担当者にも視覚的にわかりやすい形で共有できます。
主な利用シーン
実務でSwaggerを活用する場面は多岐にわたります。
たとえば複数の開発チームが1つの大規模プロジェクトを動かしている場合、APIに関する誤解を減らすためにSwaggerのドキュメントを参照することがあります。
また、外部サービスと連携するときにもSwaggerのドキュメントが用意されていれば、すぐに仕様を把握して開発を進めやすくなります。
このように、APIが存在するあらゆる場面で、仕様の明確化とコミュニケーションの効率化が期待できます。
チーム間連携
後から新しい機能を追加したいとき、APIに新しいエンドポイントを増やすことは珍しくありません。
そういったときもSwaggerファイル(OpenAPIファイルとも呼ばれます)を更新すれば、全員が最新の情報を共有できます。
チーム内で共有するだけでなく、クライアントや他社のパートナーと共同開発をする場合にも、仕様を誤解なくやり取りできます。
学習やデモの場面
新しいメンバーがプロジェクトに参加するときにも、Swaggerがあると助かる場面が多いです。
APIドキュメントをブラウザ上ですぐ確認しながら試せるので、どのエンドポイントが何をするのかが一目でわかるためです。
特に初心者がREST APIの呼び出し方を学ぶ際にも、Swagger UIを使って実行結果を確認しやすいのが便利ですね。
Swaggerが解決する課題
APIドキュメントが存在しない、または古い情報のまま放置されていると、プロジェクトの進行に影響が出ます。
開発者同士で手戻りが増えたり、使われていないエンドポイントがいつまでも残ってしまったりすることもあります。
Swaggerを使ってドキュメントを管理すると、次のような課題が解消されやすくなります。
- 変更点が漏れずにドキュメントへ反映される
- 誤ったAPI呼び出しによるバグや手戻りが減る
- ドキュメントをもとに自動テストを導入しやすくなる
こうした流れは、より品質の高いサービスを作るためにも重要です。
開発スピードを保ちながら、仕様を正確にキープし続けることができます。
Swaggerの代表的なツール
Swaggerにはいくつかの代表的なツールがあります。
どれもOpenAPI仕様を中心に動作するため、使いたい機能によって選ぶイメージです。
たとえば、Swagger EditorでAPI定義ファイルを書いて、Swagger UIで表示し、Swagger Codegenで各種プログラミング言語のコードを生成するといった使い方が一般的です。
Swagger Editor
ブラウザ上でOpenAPIの定義を入力し、リアルタイムにドキュメントとして確認できるエディタです。
日本語環境でも比較的扱いやすく、インストールせずに提供されているホスティング版を利用することもできます。
Swagger UI
OpenAPI仕様からAPIドキュメントを生成して、ブラウザで閲覧できるようにするツールです。
エンドポイントごとにパラメータやレスポンス例が整理され、APIを試しに呼び出してみることもできます。
Swagger Codegen
OpenAPIの定義に基づいて、サーバー側やクライアント側のコードを自動生成します。
プロジェクトで使う言語やフレームワークを指定すると、API呼び出しの雛形やデータモデルなどを出力してくれる点が特徴です。
SwaggerとOpenAPI 3.1のポイント
OpenAPI 3.1で注目されるのは、JSON Schemaとの互換性がより強化された点です。
これにより、APIのパラメータやレスポンスの構造を厳密に定義しやすくなりました。
この仕様に従った定義を書いていくと、Swagger UIやその他ツールでのドキュメント表示もさらに正確になります。
また、セキュリティ面の記述や拡張性も高まっており、大規模なAPIを扱うプロジェクトにおいても役立ちます。
簡単な実装例 (Node.js + swagger-ui-express)
ここからは、Node.jsとExpressを使った簡単なAPIの例を挙げます。
Swagger UIを使ってAPIドキュメントを確認するための流れを見てみましょう。
以下はパッケージのインストールや設定を簡略化した例です。
// index.js const express = require("express"); const app = express(); const port = 3000; // Swagger UI関連のモジュール const swaggerUi = require("swagger-ui-express"); const swaggerDocument = require("./swagger.json"); // JSONでのリクエストを扱う設定 app.use(express.json()); // Swagger UIをルート "/api-docs" で公開する設定 app.use("/api-docs", swaggerUi.serve, swaggerUi.setup(swaggerDocument)); // サンプルのエンドポイント app.get("/users", (req, res) => { res.json([ { id: 1, name: "Alice" }, { id: 2, name: "Bob" }, ]); }); app.listen(port, () => { console.log(`Server is running on http://localhost:${port}`); });
このコードでは、swagger.json
というOpenAPI仕様のファイルを読み込んでSwagger UIを表示しています。
/api-docs
にアクセスすると、定義したAPIがブラウザ上で一覧表示されるわけですね。
swagger.jsonの例
一方で、swagger.json
はこんなイメージで作成します。
以下では最低限の定義のみを書いていますが、実際のプロジェクトではもう少し詳しく書くことになります。
{ "openapi": "3.1.0", "info": { "title": "Sample API", "version": "1.0.0" }, "paths": { "/users": { "get": { "summary": "ユーザーリストを取得する", "responses": { "200": { "description": "ユーザーリストの取得に成功", "content": { "application/json": { "schema": { "type": "array", "items": { "$ref": "#/components/schemas/User" } } } } } } } } }, "components": { "schemas": { "User": { "type": "object", "properties": { "id": { "type": "integer" }, "name": { "type": "string" } } } } } }
このファイルの情報に基づいて、Swagger UIはユーザーがアクセスしやすいグラフィカルなドキュメントを自動生成してくれます。
実務での活用ポイント
Swaggerを実務で使いこなすポイントはいくつかあります。
- OpenAPIファイルの管理をGitなどでバージョン管理する
- 仕様変更を検討する段階でOpenAPIファイルを先に更新する
- 開発フレームワークごとのテンプレートを活用する
- チーム全体でツールの使い方を共有する
こうした運用を続けることで、後から仕様が分からなくなる状況を防ぎやすくなります。
APIを利用するユーザーや他チームとも常に連携しやすいのがメリットですね。
OpenAPIファイルはプロジェクトの仕様書として大切な役割を担います。 ドキュメントと実際のコードが乖離しないように、常に同期させておくことが大切です。
Swagger導入における注意点
Swaggerは便利ですが、導入時に意識しておきたいこともあります。
ツールが自動生成してくれるコードやドキュメントはあくまで雛形です。
複雑なビジネスロジックやセキュリティ要件などは、別途検討が必要になります。
ドキュメントの冗長化
APIが増えすぎると、OpenAPIファイルが膨大になり、管理が大変になることがあります。
そのためディレクトリを分割してファイルを整理したり、共通定義を使って重複を減らすなどの工夫が重要です。
ツールのバージョンとの互換性
OpenAPIのバージョンが3.0から3.1に変わると、ツールによっては互換性の問題が起こる場合があります。
Swaggerツールの更新状況を確認しながら利用する必要があります。
Swagger以外の選択肢
APIドキュメンテーションの分野には、Swagger以外にもいくつかのツールやフレームワークがあります。
たとえば、Redocというドキュメンテーション生成ツールや、GraphQLを扱うApolloなども知られています。
ただ、REST APIを管理する上では、依然としてSwaggerの利用が主流です。
コミュニティやドキュメントの充実度を考えると、初心者にとっても扱いやすい選択肢と言えるでしょう。
まとめ
今回は Swaggerとは何か、そしてなぜ実務で多くのチームがSwaggerやOpenAPI仕様を活用しているのかを解説しました。
APIドキュメントはプロジェクトの“言語”とも言える重要な部分です。
Swaggerを導入すると、ドキュメントの自動生成や仕様の一元管理が行いやすくなり、チーム連携がスムーズになります。
初心者の皆さんも、実務でAPIを扱うときのイメージを持っていただけたのではないでしょうか。
もしREST APIを開発する機会があれば、Swaggerを使うメリットを念頭に置きながら、実際にツールを触ってみるのも良いかもしれません。