Rust Tauriとは?最新バージョンに基づく特徴と実務での活用方法をわかりやすく解説

はじめに

Rustを用いてデスクトップアプリを開発すると聞くと、少し敷居が高いと感じる方もいるかもしれません。 しかし最近では、Tauri というフレームワークが注目されています。 Tauriは、ウェブ技術をベースとしたUIと、Rustで記述するバックエンド機能を組み合わせることで、コンパクトなデスクトップアプリを構築できるのが特徴です。 ウェブフロントエンドを持っている方々が、比較的スムーズにデスクトップアプリ開発へ移行できる点も魅力でしょう。 この記事では、Tauriの基本概念やメリット、実務での活用方法などを最新のバージョンに沿って解説していきます。

TauriとRustの基本概念

Tauri はElectronと似た構造をもちつつ、より軽量かつ省リソースで動作する点を目指して開発されているプロジェクトです。 ElectronはJavaScriptのバックエンドランタイムにNode.jsを使いますが、Tauriの主要部分はRustで書かれています。 そのため、Rustならではのメモリ管理や高速なパフォーマンスを得やすいという利点があります。

一方、UI部分はWebViewを活用します。 つまり、HTMLやCSS、JavaScriptなどのウェブ技術を用いて画面描画を行い、アプリ内でそれらを表示するイメージです。 Rustコード側は、アプリ内で必要になる機能を提供し、UIからのリクエストに応じて処理を実行していきます。

こういった構造のため、ウェブ領域の知識を持つ人がRustに入門しやすいという特徴があります。 また、TauriはWindows、macOS、Linuxといったさまざまなプラットフォームに対応しているので、配布の幅が広いのも魅力でしょう。

Tauriの主なメリット

Tauriを利用する主なメリットとして、まずパッケージサイズが小さくなりやすいことが挙げられます。 Electronで作成したアプリと比較すると、ビルド後のサイズがコンパクトになるケースが多いです。 これは、Rustで書かれている部分が小さなランタイムとしてまとまっていることや、不要なリソースを最小化しやすい構造により実現されています。

次に、メモリ使用量が比較的少ない点も魅力です。 ElectronはChromiumベースのエンジンをまるごと含むため、比較的メモリを消費する傾向があります。 しかしTauriは各OSが提供するWebViewを利用する仕組みですので、リソース使用量を抑えやすいといわれています。

また、Rustの厳格な所有権システムや型システムによって、低レベルなバグの混入を防ぎやすいこともメリットの一つです。 実行速度やセキュリティ面でもRustの恩恵を受けやすく、堅牢なアプリケーションを作りやすいでしょう。

実務での利用シーン

実務上では、フロントエンド開発を日々行っているチームが、デスクトップアプリも同じスタックで作りたい場合にTauriが選ばれることがあります。 たとえば、店舗の顧客管理ツールをデスクトップ上で動かしたいケースでは、ウェブ技術を使いながらレスポンスのよい実装を行いやすいでしょう。 さらに、オフライン環境でも動作させる必要があるアプリの場合、ローカルマシンでの処理をRustでしっかりと書きつつ、UIはWebViewでわかりやすく構築できるのが利点です。

もう一つのシーンとしては、既存のウェブサービスをデスクトップアプリ化するという場面です。 ウェブで提供している機能をより使いやすい形でパッケージングし、OS固有の機能と連携させることで、ユーザー体験を高めることができます。

また、システム連携が必要な業務ツールを作る場合にも、TauriとRustであればネイティブのファイルシステム操作やネットワーク操作などを低コストで扱いやすくなります。 このように、実務での応用範囲は意外と広いものです。

プロジェクトの基本構成

Tauriのプロジェクト構成は、一般的に以下のような形になります。 フロントエンドのディレクトリと、Rustで書かれたsrc-tauriディレクトリの2つが大きな柱になるイメージです。 ウェブアプリ部分はReactやVue、Svelteなど、好みのフレームワークで構築しても問題ありません。

my-tauri-app/
├─ dist/           # フロントエンドのビルド後ファイル(例:Reactならbuildなど)
├─ node_modules/   # JavaScript依存関係
├─ package.json
├─ src-tauri/
│   ├─ Cargo.toml
│   ├─ src/
│   │   └─ main.rs
│   └─ tauri.conf.json
└─ ...

フロントエンドをビルドした結果のファイルをTauri側の設定で読み込み、アプリとして起動する流れです。 tauri.conf.jsonという設定ファイルには、ウィンドウのサイズやアプリ名、フロントエンドファイルのパスなどが記述されます。

セットアップの流れ

まず、フロントエンド開発で利用するツールチェーンを用意します。 ReactやVueなど、お好きなフレームワークでプロジェクトを作成するのが一般的です。 次にTauriのCLIを導入し、プロジェクト内でtauri initなどを実行すると、src-tauriディレクトリが作成されます。

初期化の過程で、アプリケーション名やウィンドウ設定などを聞かれることがあります。 これらは後からtauri.conf.jsonで編集できるので、最初はデフォルト値でも問題ありません。 続いて、Rustツールチェーン(RustupやCargoなど)がインストールされていることが必要になります。 特に最新のTauriバージョンではRustの最新安定版を推奨しているため、環境はなるべく新しい状態に保ちましょう。

最後に、フロントエンド側でアプリをビルドした上で、Tauri CLIを介してデスクトップアプリのビルドを行います。 cargo tauri devのようなコマンドを使うと、デバッグモードのアプリが立ち上がり、UIを確認できるようになります。

フロントエンドとの連携方法

Tauriのフロントエンド部分は、通常のウェブページとほぼ同じように開発できます。 HTML、CSS、JavaScriptを使い、ReactやVue、Svelteなどのフレームワークを選択して進める場合が多いでしょう。 アプリ内でデータを更新するときは、JavaScript側からRust側へメッセージを送る仕組みを使います。

Tauriにはinvokeという仕組みが用意されており、JavaScriptからwindow.__TAURI__.invoke("pluginName", { /* パラメータ */ })のように呼び出せます。 Rust側では、対応する関数を定義しておき、そこへ受け取ったデータをもとに処理を行うイメージです。 フロントエンドから見ると、ネイティブの機能を呼び出す感覚でRustのロジックを使えるので、開発しやすいのではないでしょうか。

一方、UIの見た目や動作はあくまでもウェブ技術なので、通常のウェブ開発スキルを活かせる点がメリットです。 例えばSPA(シングルページアプリ)をそのままTauriに組み込み、ネイティブウィンドウで表示するといったパターンもよくあります。

Rustコードでのバックエンド処理

Rust側のコードでは、ファイルIOやネットワーク通信などを安全かつ高速に実装できます。 以下は簡単な例として、文字列を受け取り、Rust側で加工して返す関数を書いたmain.rsのイメージです。

#![cfg_attr(
    all(not(debug_assertions), target_os = "windows"),
    windows_subsystem = "windows"
)]

use tauri::command;

#[command]
fn process_message(input: String) -> String {
    let processed = format!("デスクトップアプリで受け取った: {}", input);
    processed
}

fn main() {
    tauri::Builder::default()
        .invoke_handler(tauri::generate_handler![process_message])
        .run(tauri::generate_context!())
        .expect("アプリの起動に失敗しました。");
}

ポイントとしては、Rustの関数に#[command]属性をつけておくと、Tauriが自動的にJavaScriptとのやり取りをサポートしてくれることです。 invoke_handlerでコマンドの一覧を登録しているため、フロントエンド側からprocess_messageを呼び出すことができます。 こうした形でネイティブの処理を気軽に利用できるのは、Tauriならではの設計といえます。

デバッグとビルド

開発中はcargo tauri devを利用すると、ホットリロードの状態で実行できる環境が用意されます。 フロントエンドで更新があればリロードされ、Rust側で更新があれば再ビルドされるので、比較的スムーズに作業を進められます。

本番ビルドを行う際はcargo tauri buildを実行します。 すると、対象のプラットフォームごとに実行ファイルが生成され、配布可能な形にパッケージングされます。 macOSなら.appフォルダ、Windowsなら.exeファイル、Linuxなら実行バイナリやdebパッケージなどが生成される場合があります。

生成されたファイルを配布すれば、ユーザーはインストールするだけでアプリを使えるようになります。 パッケージサイズが比較的コンパクトになりやすいのは、Tauriを選ぶ大きな理由となることが多いです。

セキュリティ面のポイント

ウェブ技術を利用しているとはいえ、Tauriはローカルで動作し、ネイティブAPIにアクセスする場合があります。 そのため、セキュリティ面では不要な権限を与えないように設定を行うことが大切です。 たとえば、tauri.conf.jsonで外部サイトへのアクセスを制限する、特定のAPIしか呼び出せないようにするなどの設定が考えられます。

Rustの堅牢な型システムや所有権システムも手伝って、メモリ管理のバグなどは比較的起こりにくいといわれています。 しかし、JavaScriptやCSSなどで外部リソースを読み込む場合は、通常のウェブアプリと同様に注意が必要です。 依存パッケージのバージョン管理を適切に行うことなども欠かせないでしょう。

デスクトップアプリだからといって、ウェブ技術のセキュリティリスクが完全になくなるわけではありません。 外部との通信部分や依存ライブラリの更新に対する注意は欠かさないようにしましょう。

マルチプラットフォーム対応の流れ

TauriはWindows、macOS、Linuxに対応しているので、開発環境にあわせてビルドするだけで複数のプラットフォームに向けたアプリを作れます。 ただし、OS固有の機能を使う場合は、その機能がほかのOSで利用できるかを調査する必要があります。 たとえば、Windowsのレジストリに直接アクセスしたいなら、macOSやLinuxでは代替手段が必要かもしれません。

とはいえ、基本的にはWebViewでUIを描画し、Rustで共通部分を処理する構成です。 多くの機能が各OSで共通して動作する場合が多く、OSSによるプラットフォーム差分への対応も活発に行われている印象です。 そのため、一度学習すればさまざまな環境に向けたデスクトップアプリを展開しやすいでしょう。

よくある疑問と対策

Tauriでよくある疑問として、まず「UIはJavaScriptフレームワークで自由に作れるのか?」というものがあります。 結論としては、ReactやVueなど好みのフレームワークをそのまま利用できます。 CSSフレームワークやビルドツールも一般的なウェブ開発と同じなので、すでにウェブの知識を持っていれば導入は比較的スムーズでしょう。

また、「Rustが初めてだけど大丈夫か?」という疑問もよく聞かれます。 Rustに馴染みがない段階でも、軽量なファイル操作や簡単なロジックから始めてみるとスムーズに慣れていけるかもしれません。 コンパイラのエラーメッセージは比較的わかりやすいので、試行錯誤しながらRust側のコードを追加してみると良いでしょう。

最後に、「デプロイやアップデートはどうやるのか?」という点も気になるかもしれません。 ビルド時に生成されたパッケージをバージョンごとに配信する運用が基本ですが、いわゆる自動アップデート機能などはプラグインや追加の設定で実現可能です。 自分たちのアプリケーション規模や運用スタイルに合わせ、機能を組み合わせて導入していくことになります。

フロントエンドで熟知している技術をそのまま活用できる点がTauriのわかりやすい特徴です。 Rustは初めてでも、まずは小さな機能を実装するところから始めてみると良いでしょう。

まとめ

ここまで、Tauri を使ってRustとウェブ技術を組み合わせるメリットや、実務での活用シーン、そして基本的な実装フローなどを解説してきました。 軽量なパッケージサイズやマルチプラットフォームへの容易な対応は、デスクトップアプリの開発や配布を効率化してくれるでしょう。

フロントエンドにはReactやVueなど、普段から慣れ親しんだ技術をそのまま利用できるので、ウェブエンジニアにとっては学習コストが比較的抑えられます。 Rustで実装するバックエンド処理は安全性とパフォーマンスに優れ、ネイティブ機能の呼び出しもスムーズに行えます。

もし今、ウェブ技術を活かしてデスクトップアプリを作る必要があるなら、Tauriは有力な選択肢ではないでしょうか。 ぜひRustとウェブフレームワークを組み合わせて、新たな開発の可能性を広げてみてください。

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