Git cloneのやり方を徹底解説
はじめに
Gitを使い始めるときに最初に覚える操作のひとつがGit cloneです。
リポジトリ(ソースコードの保管場所)を手元の環境にコピーするのが主な目的になります。
プログラミング学習を始めたばかりの方でも、この操作を理解しておくと他の人が書いたコードを調べたり、自分で開発を始めたりするときに大いに役立つでしょう。
いきなり難しそうに見えるかもしれませんが、流れさえわかれば決して難しいコマンドではありません。
ここでは、初心者の方でも理解できるように、シンプルな言葉で順を追って解説を進めます。
実務での活用を想定した具体例も紹介しながら、やり方だけでなく使いこなしのポイントや注意点も盛り込みます。
この記事を読むとわかること
- Git clone が何のためのコマンドなのか
- リポジトリを複製する手順と、よく使うオプションの解説
- 実務で役立つ具体的な運用例や管理方法のポイント
- 初心者がつまずきやすいエラーや注意点の対処法
- コマンドを応用するテクニックや、安全に扱うためのコツ
Git cloneの基本的な役割
Git cloneの目的は、リモートリポジトリにあるファイル一式をそっくり手元にコピーして開発を始められるようにすることです。
Gitではリモートとローカルの2つの保存場所を用意しながら並行して作業を行うことが多いため、この初期のダウンロードが欠かせません。
多くのプロジェクトでの流れは、次のようなイメージです。
- インターネット上にあるリモートリポジトリのURLを用意する
- ローカル環境上(自分のパソコンなど)で
git clone <リポジトリURL>
を実行して中身を取得する - ファイルが手元にダウンロードされ、編集や作成を行う
Git cloneを実行すると、新しいフォルダが作成され、その中にバージョン履歴(コミットの履歴)を含む全ファイルがダウンロードされます。
単に「ファイルをコピー」するわけではなく、プロジェクトの履歴やブランチなども含めてまるごと取得するのが特徴です。
よくあるリポジトリの例
実際には多くの方が、GitHubやGitLabなどのリモートリポジトリサービスを利用しています。
Git cloneをするときは、その各サービス上にあるリポジトリのURLを指定します。
コマンド自体は同じなので、たとえばURLが https://...
だったり git@...
だったりと異なる点だけ認識しておけば十分です。
実務における活用シーン
実務の現場では、新しく参画したプロジェクトのコードを最初に取得する際にGit cloneを使います。
また、既存のプロジェクトへ貢献するオープンソースプロジェクトでも、リポジトリを最初に手元へコピーするときにcloneが必要です。
開発を続ける間は git pull
やブランチ操作を使いますが、そもそものスタートはこのcloneから始まります。
Git cloneの基本的な使い方
ここでは、もっとも基本的な使い方である git clone <URL>
について解説します。
実際のコマンド例を見ながら、どのように実行するのかを理解していきましょう。
git clone https://example.com/your-repo.git
上記のコマンドを打つと、現在のディレクトリ上に your-repo
というフォルダが作られ、その中にリポジトリの内容がコピーされます。
もしフォルダ名を変えたい場合は、次のように末尾で指定ができます。
git clone https://example.com/your-repo.git my-project
このように、clone時に任意のフォルダ名を与えると、リポジトリの内容が my-project
フォルダにコピーされる仕組みです。
SSH接続でのクローン
SSH鍵を設定している場合は、リポジトリのURLが git@
から始まる形になります。
コマンドの書き方はほぼ同じなので、URL部分を変えるだけです。
git clone git@example.com:your-organization/your-repo.git
企業やチームによっては、SSH鍵の使用を推奨している場合もあります。
パスワード入力を繰り返さずにすむ点や、セキュリティ面での安心感があるからです。
クローン時に役立つオプション
Git cloneには、単純にダウンロードするだけでなく、役立つオプションがいくつかあります。
ここでは、初心者の方でも知っておくと便利な代表例を紹介します。
--branch オプション
特定のブランチだけを取得して、そのままチェックアウトしておきたい場合には --branch
オプション(短縮形 -b
)を利用できます。
たとえば、メインではないテスト用ブランチだけを取得したいときなどに便利です。
git clone --branch feature-xyz https://example.com/your-repo.git
このコマンドを実行すると、自動的に feature-xyz
ブランチをチェックアウトした状態でローカルに作成されます。
あとで git checkout <別ブランチ>
とする手間が省けるので、最初から特定ブランチで作業したいときに有用です。
--depth オプション
大規模プロジェクトでは、過去に大量の履歴があり、cloneに時間がかかることがあります。
履歴を浅いところだけ取得したい場合は --depth <数値>
を付けると、コミット履歴を指定した数までに制限できます。
git clone --depth 1 https://example.com/your-repo.git
これをシャロークローンとも呼びます。
履歴を全部取得しないので、ダウンロードが速くなる反面、古いコミットの参照や履歴の調査がしづらい点には注意が必要です。
--recurse-submodules オプション
リポジトリの中に別のGitリポジトリ(サブモジュール)が含まれている場合、通常のcloneではその中身はチェックアウトされないままです。
サブモジュールも同時に取得したいときは --recurse-submodules
を付けます。
git clone --recurse-submodules https://example.com/your-repo.git
サブモジュールを使った管理がされているプロジェクトでは、このオプションを付けておくと後からのセットアップ作業が楽になります。
クローン後の典型的な作業の流れ
リポジトリをクローンしたら、次に何をすればいいか具体的にイメージできると便利です。
ここでは、よくある流れを簡単に追ってみましょう。
1. クローンしたディレクトリへ移動
例: cd your-repo
2. ブランチの確認
例: git branch -a
どのブランチがあるのかを見て、作業ブランチを切り替えたりします。
3. 必要に応じて環境構築や依存ライブラリのインストール
プログラム言語やフレームワークごとに、パッケージのインストール方法が異なります。
Node.jsであれば npm install
や yarn
を実行し、Rubyであれば bundle install
などを行う場合が多いでしょう。
4. コードを編集し、コミットとプッシュ
例: git add . && git commit -m "初回編集" && git push origin main
初期の編集が済んだら、リモートに自分の変更を共有します。
実務では、この流れで初回のセットアップを済ませ、あとはブランチ運用やプルリクエストなどで開発が進行します。
ただし複数人で開発を行う場合は、チーム全体で運用ルールを合わせることも重要です。
よくあるクローン時のトラブルと対処法
Git cloneはシンプルなコマンドですが、実際に使ってみるとエラーやトラブルに遭遇することがあります。
ここでは、初心者の方がつまずきやすいケースをいくつか取り上げ、その対処法をまとめます。
認証エラーや権限エラー
「Permission denied」や「Could not read from remote repository」のようなメッセージが表示される場合があります。
これはリポジトリにアクセスする権限がない、あるいはSSH鍵やパスワードに問題があるときに起きやすいです。
まずはリポジトリがプライベートなのか、公開リポジトリなのかを確認し、権限設定が合っているかを調べましょう。
もしSSH方式でエラーが出るときは、鍵の登録が正しくできているか、また鍵ファイルのパーミッションが適切かを再度チェックすると解決することがあります。
URLの入力ミス
URLが間違っていると、当然クローンは失敗します。
HTTPSの場合はタイプミスをしやすく、SSHの場合はリポジトリのオーナー名やプロジェクト名を取り違えてエラーが出ることも。
たとえ1文字でも違うとcloneに失敗するため、URLはコピー&ペーストで入力するのが無難です。
ブランチ名の指定ミス
-b
オプションで指定したブランチ名が存在しない場合、クローンが中断してしまいます。
ブランチ名を間違えないようにするか、あらかじめリポジトリのブランチ一覧をウェブ上や git branch -r
などで確認すると安心です。
速度が遅い
大きなリポジトリやネットワークの状態によって、cloneにとても時間がかかることがあります。
その場合は --depth
オプションを検討するとよいでしょう。
もし履歴のすべてが必要なわけではないなら、シャロークローンでまず一部を取得し、後から必要になれば履歴を取得する方法もあります。
実務で使えるGit cloneの運用パターン
ここでは、実際の現場でよく見る運用パターンをいくつか挙げます。
チーム開発や個人プロジェクトでスムーズに始められるよう、要点を押さえておきましょう。
開発用と本番用リポジトリを分けるケース
運用によっては、開発用と本番用でリポジトリを2つに分けて管理することがあります。
例えば、開発用リポジトリは社内向けのアクセス権だけ設定して、外部には公開されないようにしておく形です。
新しくプロジェクトに参加したメンバーは、開発用のリポジトリのみ git clone
して、コードを変更します。
本番用リポジトリはデプロイツールなどがクローンするために用意している場合もあります。
サブモジュールでライブラリ管理
自社製ライブラリや共通モジュールをサブモジュールとして含めているプロジェクトも少なくありません。
こうした構成にしておくと、メインのプロジェクトから参照しているライブラリの特定バージョンだけを固定化することが容易です。
しかし普通にcloneするだけだとサブモジュールの中身はダウンロードされないので、--recurse-submodules
を忘れないようにすることがポイントです。
大規模プロジェクトでのシャロークローン
過去の履歴が膨大な大企業やオープンソースプロジェクトの場合、クローンだけで何十分もかかることがあります。
日常的に何度もリポジトリをクローンするわけではありませんが、新人が初めて環境を構築するときに時間がかかりすぎると作業が止まってしまいます。
そんなときに --depth 1
で最低限のファイルだけ取得し、作業をスタートしてしまう方法がよく使われます。
クローン時にフォルダ構成を整理するコツ
初心者の方が意外と戸惑うのが、「どのフォルダで git clone
すればよいのか」という問題です。
同じ場所に何度もクローンするとフォルダが乱立してしまい、何が何だかわからなくなることがあります。
プロジェクトごとにフォルダを分ける
プロジェクトごとに専用のフォルダを用意してからクローンするのが定番です。
自分の作業領域となるフォルダを先に作っておき、その中で git clone
すれば、複数プロジェクトを並行して管理しやすくなります。
フォルダ名を調整する
クローンするときに任意のフォルダ名をつけると、あとから見返したときも「これは何のプロジェクトか」すぐに把握できます。
リポジトリ名が英語の場合でも、手元ではわかりやすい名前をつけてしまってかまいません。
OSごとの注意点
Windowsではパスの長さ制限やファイル名に使えない文字の問題が時々発生します。
プロジェクト名がとても長いと、さらに奥深いディレクトリへ移動したときにパスが長くなりすぎるケースもあるので注意が必要です。
対策としては、深いディレクトリ階層を作らない、フォルダ名を短めにするなどが挙げられます。
Git clone後にブランチを切り替える方法
すでに紹介したように、クローン時に -b
オプションを付けることで特定のブランチを取得できます。
しかし、クローン後に別のブランチに切り替えたい場面もよくあります。
手順は難しくなく、次のようにすればOKです。
- クローンしたディレクトリへ移動
git fetch
でリモートのブランチ情報を更新git checkout <ブランチ名>
で切り替え
これだけでブランチを移動できます。
ローカルにまだ存在しないブランチの場合は、git checkout -b <新しいブランチ名> origin/<新しいブランチ名>
のように書くことで作成からチェックアウトをまとめてできます。
他のバージョン管理ツールとの違い
すでにGit以外のバージョン管理システムに慣れていると、「clone」という言い方に違和感を覚えるかもしれません。
たとえば、Subversion(SVN)などでは「チェックアウト」という言い方をしますが、Gitでは「clone」が近い操作になります。
ただし、Gitは「分散型」の管理システムで、手元にリポジトリの完全な履歴が丸ごと複製されるのが大きな特徴です。
SVNなどの「集中型」では、サーバー上にある履歴を少しずつしか取得しませんが、Gitでは手元が完全なリポジトリのコピーになります。
チーム開発での注意点
チームでコードを共有している場合、git cloneは個人のローカル環境を作るための最初の段階ですが、それ以降のフローも重要です。
自由にコミットしない
プロジェクトによってはブランチ運用やコミットルールが決まっていることも多いです。
勝手にmainブランチへ直接コミットするのではなく、新しいブランチを作成して作業するといった規則がある場合もあります。
設定ファイルの扱い
チーム開発では、環境変数や認証情報などをリポジトリに含めない運用が一般的です。
クローンした後に、機密情報を別途設定する手順が必要となることがあります。
そういった設定は.gitignore
で除外される場合が多いので、リポジトリに含まれていないファイルは自分で用意しましょう。
cloneするだけですべての設定が完了するとは限りません。
プロジェクトのドキュメントなどを読み、環境変数や認証設定が必要かどうか確認するとスムーズです。
Git cloneを安全に行うためのポイント
バージョン管理は、プロジェクトの大切なコードを守る重要な役割があります。
誤ったクローンや不要なコミットで混乱が生じないように、安全にcloneを行うために気をつけたいポイントを挙げておきます。
用途不明のリポジトリはむやみにクローンしない
インターネット上にはさまざまなリポジトリが公開されています。
見知らぬリポジトリをクローンして実行する場合、マルウェアが仕込まれているリスクはゼロではありません。
初学者のうちは特に、ソースコードをよく確認し、信用できるソースから入手するようにしましょう。
プロキシやVPN環境での通信
会社のネットワークやVPNを使っているときにcloneがうまく動かない場合は、プロキシ設定が原因のことがあります。
git config --global http.proxy ...
や git config --global https.proxy ...
などを使って正しく設定する必要があるかもしれません。
環境ごとのポリシーや制限もあるので、指示に従って設定しておきましょう。
個人PCと会社PCの鍵を混同しない
SSH鍵を複数所持している場合、どの鍵で認証するかをわかりやすいように整理しておくとトラブルを減らせます。
.ssh/config
などで接続先ごとに鍵ファイルを指定しておくと便利です。
応用: 別のリモートを追加するケース
クローンした後に、他のリモートリポジトリを追加で登録するケースもあります。
たとえば、オリジナルのリポジトリと自分のフォークしたリポジトリを同時に扱う場合です。
git remote add upstream https://example.com/original-repo.git git remote -v
こうして upstream
というリモート名を追加すると、git pull upstream main
のように、オリジナルの内容を取得できるようになります。
チーム開発やオープンソース活動では定番の運用なので、clone後の一歩進んだ使い方として覚えておくとよいでしょう。
cloneした後の履歴同期と衝突を防ぐには
clone直後はローカルとリモートの差分がありませんが、チームが活発に開発している場合、数時間後には他の開発者がどんどんコミットを追加している可能性があります。
自分が作業を進める前に、最新の状態を反映しておくのが理想です。
定期的にpullやfetchをする
作業を開始する前と、コミットを行う前に git pull
や git fetch
を実行すると衝突を最小限に抑えられます。
特に初心者の方は、いつpullをするべきか迷うことが多いですが、こまめに同期しておくに越したことはありません。
リベースやマージ戦略
チームで決めた運用ルールにもよりますが、ブランチの変更を取り込むときにリベースを使うか、マージを使うかを統一しておくと履歴がわかりやすくなります。
これはcloneというよりは、その後の開発フローに関わる話ですが、最初から意識しておくと混乱を避けやすいです。
まとめ
Git cloneは、リモートリポジトリの中身を手元に複製するスタート地点の操作です。
初心者の方にとっては「コマンドラインで何かを操作する」というだけで少し敷居が高く感じられるかもしれませんが、実際にやってみると単純な流れであることがわかります。
クローン時に使える各種オプションや、実務でよくある運用例、エラーへの対処法などを知っておくと、プロジェクトの規模に応じて最適な形で開発を始められます。
自分だけでなくチームメンバー全員が同じステップを問題なく踏めるように、環境構築におけるドキュメント化を進めておくことも大切でしょう。
Git cloneは本格的なチーム開発の第一歩です。
より深くGitを使いこなすにはブランチ戦略や差分管理など覚えることはたくさんありますが、まずはリポジトリをクローンして手元でコードを動かす、という体験がとても大事です。
これから開発を始める方も、すでにチーム開発に参加している方も、ぜひここで紹介した手順や注意点を参考にしてみてください。
繰り返し使ううちに自分のものになっていき、複雑そうに思えたGit cloneが、日常の当たり前の作業として身につくはずです。