Yarn とは?npm の代わりに使えるパッケージマネージャーをわかりやすく解説
はじめに
Yarn とは npm の代わりに使えるパッケージマネージャーとして広く活用されています。
JavaScriptのプロジェクトでは、外部ライブラリやフレームワークを導入する際にパッケージマネージャーを用いることがほとんどです。
今までnpmを使ってきた人でも、Yarnを利用することでインストール速度や操作の快適さに魅力を感じるかもしれません。
とはいえ、パッケージマネージャーという言葉自体に馴染みが薄い方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、パッケージマネージャーの基礎からYarnの特徴、npmとの違い、具体的な使い方までを丁寧に解説します。
この記事を読むとわかること
- パッケージマネージャーとは何か、どんな役割があるのか
- npmとYarnの違いと、Yarnが注目されている理由
- 実務での具体的な活用シーン
- Yarnのインストール方法と代表的なコマンドの使い方
- 初心者がつまずきやすいポイントと対処法
Yarnとパッケージマネージャーの基礎
プログラミングを学び始めると、ほぼ必ず登場するのがパッケージマネージャーです。
ここでは、パッケージマネージャーの基本とともに、Yarnがなぜnpmの代わりとして使われるのか、その背景を整理します。
パッケージマネージャーとは何か
パッケージマネージャーは、外部のライブラリやツールをまとめて管理する仕組みです。
JavaScriptの世界では、ReactやVue.js、各種UIコンポーネントなど、多様な外部ライブラリがあります。
大規模なプロジェクトほど、これらライブラリの管理は一筋縄ではいきません。
手作業でファイルをダウンロードして配置する方法だと、ライブラリ同士のバージョン依存関係や更新時期を自分で把握する必要があり、手間がかかります。
パッケージマネージャーを使えば、設定ファイル(package.json)に依存関係を記述し、自動的に必要なファイルがそろうようになります。
npmとYarnの違い
JavaScriptのパッケージマネージャーとしてはnpmが最も有名ですが、Yarnはnpmの代わりに使える別のパッケージマネージャーです。
npmに比べて、ダウンロードの高速化や、同じ依存関係を効率的に扱うための仕組みが充実しているといわれています。
また、操作コマンドがnpmと似ている部分が多く、npmからの移行が容易である点も特徴です。
Yarnが生まれた背景
Yarnは、FacebookやGoogleなどの大規模プロジェクトを抱える企業によって開発されました。
多くのライブラリが複雑に組み合わさる環境で、動作の安定性と速度が求められた結果、npmよりも効率的な方法を実現しようとしたのがきっかけです。
個人開発はもちろん、企業の大きなプロジェクトにも向いているという評判から、利用が広まっています。
Yarnのメリットとnpmからの移行事例
ここでは、初心者が気になる「実際にどう便利になるのか」に焦点を当て、Yarnを利用するとどのような恩恵があるのかを具体的に説明します。
インストール速度の向上
Yarnはパッケージを並行してダウンロードするため、npmに比べて体感的に速いケースがあります。
JavaScriptのプロジェクトでは、依存ライブラリが数百個にも及ぶことが珍しくありません。
高速化によって、開発環境のセットアップ時間を短縮できるのは大きなメリットです。
作業を開始するまでの待ち時間が減るため、開発効率が高まると感じる人が少なくありません。
キャッシュ機能による快適さ
Yarnは一度インストールしたパッケージをキャッシュするので、再インストールや他のプロジェクトで同じパッケージを利用する際にも時間を節約できます。
これにより、複数のプロジェクトを行き来しながら開発する際のストレスが軽減されます。
インターネット接続が不安定な状況でも、キャッシュのおかげで動作がサクサク感じられるかもしれません。
一貫性の維持とロックファイル
Yarnにはyarn.lockというファイルが自動生成されます。
依存関係を特定のバージョンに固定し、開発環境の再現性を高める役割を持ちます。
チーム開発やCI/CDパイプラインなどで、全員が同じ環境を保つことは重要です。
ロックファイルのおかげで、npmと比べてもバージョンの不一致によるエラーが起きにくいと感じる人もいます。
npmからの移行
npmからYarnに移行する場合、基本的にはnpmで管理していた依存関係をそのままYarnコマンドで扱えます。
特別な設定を必要としないケースも多く、初心者でもスムーズに移行しやすいと言えるでしょう。
移行時は、package.jsonの内容やlockファイル周りで注意が必要ですが、Yarn自体のコマンドがnpmと類似しているので、それほど大きなハードルはありません。
実務での活用シーン
単なるパッケージのインストールだけでなく、実務に役立つ使い方があります。
大規模開発やプロジェクト管理の観点から、Yarnを導入することでどのような利点があるのかを見ていきましょう。
大規模プロジェクトでの利用
企業レベルのプロジェクトでは、フロントエンドとバックエンドが分業されていることも多いです。
複数のプロジェクトが同時並行で進む中、依存関係をまとめて管理できるのはパッケージマネージャーの強みです。
Yarnはキャッシュやロックファイルでの安定性が評価されており、大規模プロジェクトで採用される事例も増えています。
CI/CDパイプラインでの安定運用
自動テストや継続的デリバリーを行うためのCI/CD環境では、特定のバージョンを固定してテストを行う必要があります。
ロックファイルを使った依存関係の固定や、キャッシュを活用したビルド時間の短縮は、テスト速度や安定性に関わる重要なポイントです。
Yarnを導入すると、ビルドの再現性が高まり、エラーの発生リスクが抑えられる可能性があります。
共同開発やOSSプロジェクト
オープンソースソフトウェア(OSS)の開発では、さまざまな環境でコードが動くことを想定する必要があります。
Yarnを使うことで、初めてクローンした人でも同じ依存関係をすぐにインストールできるため、コントリビューターが開発を始めやすくなります。
初心者でもPull Requestを出しやすい環境が整うのは大きなメリットでしょう。
Yarnのインストール方法
ここからは実際にYarnを導入する手順を紹介します。
npmを使ってYarnをインストールする方法が一般的なので、例を挙げてみます。
インストールコマンド
Yarnはnpm経由でもインストール可能です。
以下のコマンドを実行すると、Yarnをグローバルに導入できます。
npm install -g yarn
コマンドが完了すると、ターミナルで yarn --version
のように入力して、Yarnが使えるようになったかを確認できます。
グローバルインストールを避ける場合は、プロジェクトごとにローカルインストールする方法もあります。
Node.jsのバージョン互換性
Yarnを使うためにはNode.jsが必要です。
基本的には、npmが動作する環境であればYarnも問題なく動作します。
Node.jsがインストールされていない場合や古すぎる場合は、適切なバージョンに更新しておくとスムーズです。
パッケージマネージャーだけでなく、JavaScriptの最新機能を使うためにもNode.jsの更新は重要です。
macOSやLinux環境での導入
macOSではHomebrewを利用したインストールも可能です。
たとえば、Homebrewがインストールされていれば、以下のコマンドでも導入できます。
brew install yarn
Linuxディストリビューションによっては、パッケージリポジトリからインストールできる場合もありますが、npmかHomebrew(Linuxbrew)を使うのが一番わかりやすいでしょう。
基本コマンドと日常的な使い方
Yarnを導入したら、次はよく使うコマンドを知っておくと便利です。
ここでは、初心者が最初に覚えておくと役立つ主要コマンドを紹介します。
yarn init
新しいプロジェクトを作成するときに使うコマンドです。
yarn init
を実行すると、対話形式でpackage.jsonの設定を行い、プロジェクトを初期化できます。
npmの npm init
と同じような役割を持ちます。
yarn add
ライブラリを追加するときに使います。
たとえばReactを導入したい場合は次のコマンドです。
yarn add react
オプションで -D
(あるいは --dev
)を付けると開発用(devDependencies)としてパッケージを追加できます。
複数のパッケージを一度に追加することも可能です。
yarn remove
不要になったパッケージを削除する場合は、以下のようにします。
yarn remove パッケージ名
これにより、package.jsonやyarn.lockからも自動的に情報が削除されます。
npmの npm uninstall
に相当します。
yarn install
すでにpackage.jsonやyarn.lockが存在するプロジェクトで、依存関係を一括してインストールします。
npmの npm install
と同じ機能ですが、Yarnではより高速に行われることがあります。
チーム開発や共同作業では、プロジェクトを取得して真っ先に実行するコマンドとして覚えておくとよいでしょう。
その他の便利コマンド
- yarn upgrade: パッケージの更新に利用
- yarn list: インストールされているパッケージの一覧を表示
- yarn cache: キャッシュを管理
これらを活用すると、環境のメンテナンスが楽になります。
初心者がつまずきやすいポイント
Yarnを使い始めたばかりのときに、ありがちな戸惑いをいくつか挙げておきます。
対処法を知っておけば、トラブルが起きても落ち着いて対応できるでしょう。
npmと混在して使ってしまう
npmコマンドとYarnコマンドを同じプロジェクトで使うと、依存関係やロックファイルが衝突してしまう場合があります。
原則として、プロジェクトごとに使うパッケージマネージャーは1つに統一するのがおすすめです。
もし混乱してしまった場合は、node_modulesやlockファイルを削除して、改めてYarnのみでインストールし直すとすっきりします。
バージョンの整合性が取れない
他のメンバーがnpmを使っていたり、別のバージョンのYarnでロックファイルを更新していたりすると、動作に差が生じるかもしれません。
チーム内で**「Yarnを採用する」と決めたら全員が同じパッケージマネージャーを使う**、というルールを共有することが大切です。
権限エラーやパスの問題
グローバルインストール時、権限エラーが出る場合があります。
管理者権限で再実行するか、Node Version Manager(nvm)などを使う方法もあります。
パスが通っていないせいで、コマンドが見つからないといったエラーが起きることもあるので、環境変数が正しく設定されているかを確認しましょう。
Yarnやnpmで権限エラーが頻出する場合は、nvmなどを使いユーザーレベルでNode.js環境を構築するのがおすすめです。
不要な管理者権限を使わずに済むので、安全かつトラブルが少なくなります。
トラブルシューティングとメンテナンス
Yarnを使い続ける中で、思わぬ不具合に遭遇することもあります。
ここでは、よくある問題とメンテナンスのコツを紹介します。
キャッシュのクリア
Yarnはパッケージをキャッシュしているため、一度ダウンロードしたものを使いまわします。
ただし、キャッシュが原因で不整合が起きるときは、キャッシュをクリアするのも手段の一つです。
yarn cache clean
クリア後に再度 yarn install
を実行すれば、新しい依存関係を正しく取得できます。
ロックファイルの取り扱い
yarn.lockには、インストール時点のパッケージバージョン情報が記録されています。
誤って手動で編集したり、Git管理下に含めるのを忘れたりすると、環境の再現性が崩れます。
チームで作業するときは、yarn.lockを含めてコミットするのを忘れないようにしましょう。
ファイルを直接編集するのは基本的に避け、コマンドを通してパッケージを追加・削除するようにしてください。
Node_modulesが肥大化
node_modulesフォルダには、たくさんの依存ライブラリが格納されます。
プロジェクトによっては、数千~数万のファイルが入ってしまうこともあるでしょう。
定期的に不要なパッケージを削除し、プロジェクトを整理することでディスク容量やビルド速度を維持できます。
不要なパッケージがないかどうかをリスト表示などで確認し、適宜「yarn remove」でクリーンアップするとよいでしょう。
Yarnを使う上での注意点
Yarnはnpmの代わりとして使えるパッケージマネージャーですが、それぞれに独自の進化があり、完全に同じではない部分もあります。
利用する前に注意すべき点をいくつかピックアップします。
コマンドが微妙に違う場合がある
npmには存在するけど、Yarnでは存在しないコマンド、あるいはその逆もあります。
一般的な操作(add、remove、installなど)はnpmと類似していますが、細かい差異を知っておくとトラブルを回避しやすいでしょう。
特にスクリプト実行関連のコマンドは、npmでは npm run script名
と書きますが、Yarnでは yarn script名
と実行するケースが多いです。
バージョンアップによる仕様変更
Yarnは継続的に開発が進められています。
場合によっては、メジャーバージョンが変わった際に仕様やファイル構成が大幅に変わることもあります。
プロジェクトの規模が大きい場合、安定を重視して特定のバージョンで運用することを決めるチームも存在します。
チーム開発では、安易にバージョンを引き上げるのではなく、互換性や移行コストをよく確認すると安心です。
他ツールとの相性
LinterやFormatter、ビルドツールなど、さまざまな開発ツールと組み合わせる機会が多いのがJavaScriptの世界です。
ほとんどの場合、npm向けの手順をYarnに置き換えても動作しますが、ドキュメントによってはnpmのみを前提に書かれていることがあります。
その際は、Yarnに置き換えたときのコマンドに差異がないかを確認する必要があります。
プロジェクトのドキュメントやチュートリアルがnpmのコマンドを例示している場合、Yarn用に読み替える必要があるかもしれません。
初心者のうちは慌てずに、npmコマンドとYarnコマンドの違いを確かめながら進めるのが大事です。
まとめ
Yarn とは npm の代わりに使えるパッケージマネージャーとして、数多くのプロジェクトで採用されています。
インストールの高速化や安定したバージョン管理が魅力で、チーム開発でも個人開発でもメリットを感じる場面があるでしょう。
とはいえ、npmとの混在やロックファイルの扱いには注意が必要です。
開発環境は一度整えてしまえば、あとは快適に開発を続けることができます。
もしパッケージ管理に不安を感じているなら、一度Yarnを試してみるのもよい選択肢ではないでしょうか。
初心者の方でも、コマンド自体はnpmと近いため、少し勉強すればすぐに活用できるはずです。
これを機にYarnの便利さを体験してみてください。