DoSとは?初心者でもわかりやすい基礎解説と対策のポイント

はじめに

皆さんはサーバーやネットワークが突然重くなってしまう現象を聞いたことがあるでしょうか。 その原因の一つに DoS (Denial of Service) 攻撃という手法があります。 これは特定のターゲットに向けて膨大なリクエストやパケットを送ることで、サービスを利用不可に追い込む攻撃手段です。 初心者の方でもイメージしやすいように、まずは基本的な概念と仕組みを見ていきませんか。 本記事では具体的な対策や実務での活用例も交えて、できるだけわかりやすく解説します。

DoS攻撃の基本概念

DoS攻撃とは、サーバーやネットワーク機器に過度な負荷を与えることで、正規のユーザーがサービスを利用できなくする攻撃です。 大量の通信量を送りつける手口だけでなく、脆弱性を狙ってサービスを停止させるアプローチも含みます。 被害規模は小さなサイトでも大手のサービスでも起こりうるため、誰にとっても無縁ではないでしょう。

DoSとDDoSの違い

**DoS は一つのホスト (もしくは少数) **から攻撃を行うのに対し、 DDoS (Distributed Denial of Service)は複数のホストを踏み台にして一斉に攻撃する点が異なります。 規模が大きくなるほど対処が難しくなるため、大規模サービスほどDDoSを警戒する必要があります。 ただし、基本的な仕組みや狙いはどちらも似ていて、どちらも大きなリスクを伴う攻撃手法です。

なぜDoS攻撃が問題になるのか

多くのウェブサービスは一定のリソース内で動作しています。 そこでDoS攻撃が行われると、サーバーのCPUやメモリ、ネットワーク帯域が圧迫されて応答が極端に遅くなるのです。 利用者が多い時間帯に攻撃を仕掛けられると、企業や組織にとって大きな信用低下につながるでしょう。

代表的なDoS攻撃の種類

DoS攻撃と一口に言っても、いくつかの手法があります。 ここでは代表的なものを見ていきましょう。

ICMP Flood

ICMPパケット(いわゆるping)を大量に送信して、ネットワークやサーバーに負荷をかける手法です。 シンプルですが、大量に実行すればターゲットが応答しきれなくなります。 古典的な手段ながら、未だに使われる場合があります。

SYN Flood

TCP接続を確立する前段階のSYNパケットを大量に送り、そのまま無視する手法です。 ターゲット側は応答しようとリソースを確保しますが、握手が完了しないままリソースだけを使われてしまいます。 結果として接続可能数が逼迫し、正規ユーザーがつながりにくくなるでしょう。

HTTP Flood

HTTPリクエストを大量に送り続ける方法で、ウェブアプリケーションそのものを狙う攻撃です。 特に動的ページの生成や重い処理が伴う部分を叩かれると、サーバーの処理能力が大幅に落ちることがあります。 単純なパケットレベルの対策では防ぎにくい攻撃として知られています。

Slowloris

少しずつデータを送ることで、サーバーの接続を占有してしまう攻撃手法です。 HTTPヘッダーを断続的に送信し続け、セッションを長引かせてサーバー資源を使い切らせる狙いがあります。 ネットワーク経路の帯域を埋めるのではなく、サーバー側の動作を阻害する点が特徴です。

実務での具体的影響

DoS攻撃はビジネスやサービス運営にどのような影響をもたらすのでしょうか。 ここでは主要なポイントを挙げてみます。

サービス停止リスク

サイトやアプリケーションへのアクセスが不可能になるため、売上や広告収益を失う可能性があります。 ECサイトの場合は顧客が離れ、ビジネスチャンスを逃すリスクが大きいでしょう。 数時間の停止でも損失は甚大です。

顧客信頼の低下

一度攻撃を受けたサイトは「脆弱」とみなされることがあります。 特に利用者が多いプラットフォームで長時間の停止が起こると、ユーザーの信頼は大きく損なわれるでしょう。 結果として競合他社に顧客を奪われる恐れがあります。

復旧コストや運用負荷の増大

攻撃を受けた後の調査や対策には大きなコストがかかります。 システム復旧のために追加のインフラを用意したり、スタッフが緊急対応を行うことで人的リソースも消耗します。 対策が甘いままだと、再度狙われる危険性もあるでしょう。

攻撃の仕組みを理解するための軽いシミュレーション

皆さんはあくまで学習目的で、攻撃側の動きを試してみたいと思うでしょうか。 本番環境では絶対に行わないでください。 適切な許可を得た閉じた検証環境で、負荷テストの一環として理解を深めるのは良いかもしれません。

pingの連打

もし自分のローカルネットワーク上にテスト用のサーバーがあると仮定します。 以下のように連続pingを行うだけでも、小規模な負荷を試すことが可能です。

ping -f 192.168.0.10

上記のコマンドは大量のICMPパケットを送ります。 ネットワークの状態によっては標的サーバーのCPU使用率やネットワーク帯域が一時的に上がり、応答が遅くなるでしょう。

実際に公衆ネットワークや他人のサーバーに対して行うと違法行為となる可能性があります。 必ず許可を得た環境のみで行いましょう。

DoS攻撃への対策

DoSを完全に防ぎきるのは困難ですが、適切な対策を講じることで被害を最小限に抑えることができます。 ここではネットワークレベルとアプリケーションレベルの対策を見てみましょう。

ネットワークレベルでの対策

ネットワーク機器やOSの設定で、怪しいトラフィックを早期に遮断する方法があります。 ファイアウォールや侵入検知システム(IDS/IPS)を導入し、不審なパケットをブロックするのが代表的でしょう。 また、ISP側でのトラフィックフィルタリングを利用するのも有効です。

SYN Cookies

SYN Flood攻撃に有用な技術で、SYNパケットを受信した際にCookieを用いた検証を行うことでリソースの浪費を防ぎます。 TCPの接続確立プロセスを改変するイメージで、攻撃用パケットに対しては正規のリソースを消費しにくくする仕組みです。 SYN Cookiesは多くのOSで標準機能として有効化できます。

アプリケーションレベルでの対策

ウェブアプリケーションに対するHTTP Floodなどには、 WAF (Web Application Firewall) やレートリミットを設定するのが有効です。 特にレートリミットは、特定IPからのリクエスト頻度を制限することで無意味に大量のアクセスをブロックできます。 ここでは簡単なNode.jsの例を紹介します。

const express = require("express");
const rateLimit = require("express-rate-limit");

const app = express();

// 一定時間内のリクエスト回数を制限
const limiter = rateLimit({
  windowMs: 60 * 1000,  // 1分
  max: 100,            // 1分あたりの最大リクエスト数
  message: "リクエスト数が多すぎます。しばらく待ってから再度アクセスしてください。"
});

app.use(limiter);

app.get("/", (req, res) => {
  res.send("DoS対策としてレートリミットを設定しています。");
});

app.listen(3000, () => {
  console.log("サーバーが起動しました。");
});

上記の例では、1分間に100回以上アクセスするクライアントからのリクエストを自動的に制限します。 実際にはWAFとの併用やIP単位のブラックリスト化などを組み合わせるとさらに効果的でしょう。

キャッシュやCDNの利用

静的ファイルをCDNに載せたり、ページ全体をキャッシュすることでサーバー負荷を軽減できます。 特に大きな画像や動画を扱う場合は、直接サーバーが配信するよりCDNを利用するほうがDoS耐性を高めやすいでしょう。 リソースを分散させることで一極集中を防ぐ仕組みです。

実務への導入ポイント

対策技術だけを知っていても、実際の環境に落とし込むにはいくつかのハードルがあります。 そのため、導入時に考慮すべきポイントを押さえておきましょう。

ログの活用とアラート設定

DoS攻撃の兆候をいち早くキャッチするにはログ分析が欠かせません。 異常なアクセス数や帯域使用量を検知できるよう、ツールやスクリプトでリアルタイム監視すると安心です。 アラート機能を設定して、しきい値を超えた場合に担当者へ通知する運用フローを作りましょう。

テスト環境でのシナリオ検証

本番に導入する前に、ステージングや専用のテスト環境でDoS対策を検証することをおすすめします。 負荷ツールを使い、ある程度の高トラフィックを再現して問題なく動作するかを確かめるのは重要です。 ただし、テストでも外部に影響しないようネットワーク設定は十分に注意してください。

クラウドサービスの利用

大規模なDoS攻撃に対しては、クラウド事業者が提供するDDoS防御サービスを活用するのも有力です。 自社で専門的な対策を行うより、クラウドベンダーが持つインフラやノウハウを活用したほうがスピードとコストで優位になる場合があります。 ただし、サービスの選定には費用対効果や運用の可否を慎重に考える必要があるでしょう。

具体的な注意点

DoS対策を進める際には、いくつか気をつけたい落とし穴があります。 ここでは主な注意点を挙げてみます。

正常なユーザーまで弾いてしまうリスク

レートリミットやIPブロックを設定すると、攻撃者だけでなく正規ユーザーも制限にかかる可能性があります。 特に負荷の高い時間帯には、大量アクセスが正規の利用か攻撃か判断しにくい状況に陥りやすいです。 ログ分析やアクセスパターンをよく把握し、適切な閾値を設定することが大切です。

ネットワーク環境の複雑化

多層防御を行うほどネットワーク構成が複雑になり、誤設定や管理ミスが増えるリスクもあります。 防御策の入れすぎでシステム全体が遅くなってしまうこともあるでしょう。 各対策同士の相性や影響範囲を確認しながら導入することが重要です。

対策を講じるだけでなく、定期的なメンテナンスや構成レビューが欠かせません。 一度設定して終わりにしない運用体制を整えると安心です。

継続的なモニタリングとアップデート

攻撃手法は日々変化し、対策も常に進化していきます。 そのため、OSやミドルウェアのアップデートを怠ると新たな脆弱性を突かれる危険があります。 セキュリティ情報をチェックしながら、防御システムのバージョンを最新に保つようにしましょう。

まとめ

今回はDoS攻撃の基本から主な種類、そして対策方法や実務での導入ポイントまでを概観しました。 ネットワーク機器やアプリケーション側に多層的な防御を施し、異常を早期検知する体制が大切です。 ビジネスを守るためにも、日頃からログの分析や設定の見直しを継続することがポイントではないでしょうか。

DoS攻撃は初心者の皆さんでも理解しやすい概念から成り立っている反面、一歩間違えば大きな損害をもたらします。 対策を知っていると知らないでは運用時の安心感が大きく違います。 ぜひ本記事の内容を参考に、セキュリティを強化していってください。

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