IPS とは?初心者にもわかるIntrusion Prevention Systemの基本と活用シーン

皆さんは IPS とは何か聞いたことがありますか。

これはネットワークやシステムへの不正アクセスを検知し、リアルタイムで対策を行う仕組みを指します。

たとえば外部から怪しい通信があった場合、検出してブロックまで自動で行うのがIPSの特徴です。

同じように怪しいアクセスを探知する仕組みで、IDS(Intrusion Detection System)というものがあります。

IDSは不審なアクティビティを検知し、管理者に通知するところまでを行います。

一方でIPSは、通知にとどまらず、ブロックや隔離などの防御策も同時に実施します。

ネットワーク層やアプリケーション層など、さまざまなレイヤーに対してセキュリティ保護を行う場面が多いです。

IT業界への転職を考えている方やプログラミングを始めたばかりの方でも、ネットワークセキュリティは避けて通れない課題ではないでしょうか。

IPSを知っておくと、今後ネットワークやシステムを設計するときに選択肢が増えていきます。

IPSの基本概念

IPSとは、不正な挙動を事前に防ぎ、システムへの侵入リスクを減らすためのシステムです。

不正アクセスは日々多様化しており、従来のファイアウォールだけでは対処しきれない場合が多くなりました。

ファイアウォールはポートやIPアドレス単位で通信を制御しますが、高度化した攻撃はそれだけでは防げないかもしれません。

そこでパケットの中身を詳細に検査し、既知の攻撃パターンや振る舞いを検知する技術としてIPSが活躍します。

IDSでは検出後に人が対応する必要がありましたが、IPSは検出した時点で対策を行い、攻撃者がシステム内部に侵入するのを防ぐ仕組みを備えています。

初心者の方は、まずはネットワークトラフィックをしっかり観察し、怪しいパケットを判別するイメージを持つと理解しやすいです。

不正攻撃のシグネチャ(パターン)をデータベースとして持ち、マッチした場合に即座にブロックすると考えてください。

IPS機能は専用のハードウェアアプライアンスやソフトウェアとして提供されることが多いですが、クラウド環境でも利用できるものがあります。

IPSとIDSの違い

IDS(Intrusion Detection System)はあくまで検知を主目的とするシステムです。

そのため、攻撃が発生したときには管理者への通知やログ記録を行いますが、積極的にブロックはしません。

一方で IPS とは、検知したらブロックやセッションの切断まで行ってくれる仕組みです。

この違いは運用にも影響を与えます。

IDSのみの場合、通知を受けてから管理者が対応するまでに手間と時間がかかることがあります。

IPSであれば、管理者の手を煩わせる前に攻撃の通信を遮断できます。

ただし、誤検知(誤って通常の通信をブロックしてしまう)リスクや運用コストが増えるケースもあるので、導入前に十分なテストや設計が必要です。

ネットワークのトポロジーやシステムの要件を把握し、どこにIPSを配置するかを検討することが大事です。

IPSの実務での活用シーン

IPSは主に企業のネットワークの入り口や、クラウド環境の境界に配置されることが多いです。

インターネットからの不正アクセスを受け止める玄関口に置き、外部からの攻撃をブロックします。

たとえばWebサーバーやファイルサーバーを運用している場合、外部からの攻撃はすべてIPSを経由してやり取りされるようにしておくわけですね。

これは、新しくアプリケーションを開発する際にも考慮すべきポイントです。

アプリやサービスをインターネットに公開すると、多かれ少なかれ不正アクセスを受ける可能性はあります。

攻撃者は脆弱なプログラムを探していることも多いので、未経験の方でもセキュリティ対策の基本概念としてIPSを知っておくと便利です。

もし皆さんが将来的にクラウドサービスを使った開発を行う場合でも、各クラウドプロバイダが提供するセキュリティサービスでIPS相当の機能をオプションとして利用できることがあります。

こういったサービスを活用することで、自分で一からIPSを導入する負担を減らせるかもしれません。

IPSが必要とされる背景

近年では、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどの攻撃が増えています。

これらはWebアプリケーションの脆弱性を狙う攻撃手法です。

ファイアウォールだけでは防ぎきれない攻撃が増えたことで、アプリケーション層を監視できるIPSが注目されるようになりました。

また、ゼロデイ攻撃のように、未知の脆弱性を狙ってくるケースも問題になります。

IPSによって既知のパターンをブロックしつつ、振る舞いベースの検知手法を組み合わせて攻撃を遮断する仕組みも活用されています。

システムを守る手段として、IPSはファイアウォールやVPN、WAF(Web Application Firewall)などと一緒に導入されるケースが多いです。

こうすることで多層的にセキュリティを高め、もしも一つの防御が破られたとしても、別のレイヤーで食い止めることができます。

簡単なIPSルールの例

皆さんがIPSの動きを理解するために、一部のツールで設定する簡単なルールをイメージしてみましょう。

これはSnortやSuricataといったオープンソースのネットワーク侵入防止システムでよく見られる例です。

alert icmp any any -> any any (msg:"ICMP test"; sid:1000001; rev:1;)

このように書くと、ICMPパケットを検知したときにログを残すなどの動作をする例になります。

さらにIPSとして機能させる場合は、検知したタイミングでパケットをブロックしたり、アラートを出したりするルールを追加していきます。

ただし実際の運用ではもっと複雑なルールやシグネチャを使い、SQLインジェクション対策や不正ログイン対策などを細かく設定することが多いです。

IPS導入時の注意点

IPSを導入する際、最初に直面するのが誤検知をどう防ぐかという問題です。

不正アクセスと判断してブロックしてしまったら、業務に支障が出る可能性があります。

そのため、導入初期はモニタリングモード(検知のみを行い、ブロックはしない設定)で稼働させ、どんな通信が引っかかるかを調べる方法がよくとられています。

誤検知が多い場合は、シグネチャの精度を高めたり、例外ルールを設定して正しい通信を許可したりする調整を行います。

また、導入後も定期的に運用ルールを見直し、シグネチャの更新やログ解析を継続することが大切です。

IPSは導入して終わりではなく、常に変化する脅威に対応し続ける運用体制が求められると考えてください。

IPSは無敵のシステムではありません。

何でも防げるわけではないので、常に新しい攻撃手法の情報をキャッチアップする必要があります。

ネットワーク構成例とIPSの配置

では、具体的にIPSをどこに配置すれば良いのでしょうか。

多くの場合、ルーターとファイアウォールの間、あるいはファイアウォールの後ろにIPSが設置されます。

ファイアウォールで大まかなアクセス制御を行い、残った通信を細かく検査してブロックするイメージです。

企業内ネットワークの構成例としては、インターネットに接続するDMZ領域にWebサーバーが配置されていて、その手前にファイアウォールとIPSを並べる形になります。

クラウド環境を利用する場合は、クラウドプロバイダ側のネットワークセキュリティサービスを活用するパターンもあります。

具体的には、仮想のファイアウォールやIPSエンジンを含むセキュリティサービスが提供されているので、それらを有効化して使う方法も多いです。

IPS導入の手順とポイント

IPSを導入する流れを簡単に挙げると、次のようになります。

  • ネットワーク構成の洗い出し
  • IPS製品やソリューションの選定
  • テスト環境での導入・モニタリング
  • 誤検知やパフォーマンスの調整
  • 本番環境への適用と継続的な運用

最初にネットワーク全体の流れやシステムの要件を把握することが大切です。

その上で、ハードウェアアプライアンス型か、ソフトウェア型か、クラウドサービスかを選びます。

特に高い負荷がかかる環境では、ハードウェア性能やスループットを考慮した上でアプライアンス型を選ぶケースが多いです。

一方で、小規模や仮想環境メインの場合、ソフトウェア型のIPSやクラウドベースのIPSが便利な場合があります。

導入時にはネットワーク遅延や処理負荷も考慮しましょう。

IPSはパケットを検査するので、ネットワーク速度に影響が出る可能性があります。

アプリケーション視点で考えるIPSの役割

プログラミング初心者の方は「アプリ開発とIPSにどんな関係があるのか」と疑問に思うかもしれません。

しかしサーバーサイドの開発を行う場合、セキュリティを考慮した設計が欠かせません。

SQLインジェクションやOSコマンドインジェクションなど、アプリケーションの脆弱性を狙う攻撃は発生しやすいです。

IPSはこういった攻撃を検知し、未然に防ぐための仕組みとして有効です。

また、Webアプリケーション単体では防ぎきれない脅威を網羅的にカバーできる点もIPSのメリットといえます。

アプリケーション開発を学んでいくと、フレームワーク側でCSRFトークンを導入したり、フォーム入力をバリデーションしたりと、いろいろな対策を実装する場面が増えます。

それらの対策をしっかり行った上で、さらに外部からのアクセスを総合的に防御するレイヤーとしてIPSが導入されるイメージです。

まとめ

ここまで IPS とは何なのか、その概要や導入時のポイントを紹介してきました。

IPSは攻撃を検知しただけでなく、ブロックまで行うシステムです。

実務ではファイアウォールやWAFなど、ほかのセキュリティソリューションと組み合わせて多層防御を行うケースが多いです。

特にネットワークを利用したサービスを作る方々にとって、IPSの仕組みを知っておくことは大切だといえます。

これからIT業界で働きたい方や、プログラミングを学び始めた皆さんにも役に立つ知識ではないでしょうか。

セキュリティ分野は日々進化しており、新しい攻撃手法も次々と登場しています。

その中でIPSは、システムを守るための重要な要素として今後も使われていきます。

皆さんがシステム開発やネットワーク設計をする際の選択肢の一つとして、IPSの導入を検討してみるのもよいかもしれません。

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